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岩手県・鳥越竹細工の魅力が詰まった本『かごを編む』 

世田谷美術館の企画展「民藝 MINGEI」を見て岩手県・鳥越の竹細工に興味を持ったわたしは、さっそく『かごを編む』(文:堀惠栄子、写真:在本彌生)を買って読んでみました。柴田恵さんという現地の職人をクローズアップして鳥越竹細工を紹介した本です。

岩手県一戸町の鳥越竹細工は作り手の高齢化が進んでいる上、材料であるスズタケの減少という危機に瀕しているそうです。なんでも120年周期で起きる大量枯死現象の可能性があるとのことですが、詳しい原因は分からないそうです。

柴田さんは自分で山に入ってスズタケを採取します。厚みが均等な「ひご」に加工し、かごに編む。この本ではその過程を詳細に紹介しています。鳥越観音への信仰など、技術の継承の背景にある地域の習慣や文化にも詳しく触れています。

歴史の記述も興味深い。近くの縄文遺跡で出土した土器に付いている網目を分析すると、当時からかなり緻密な竹細工を作っていた可能性があることが分かるそうです。

鳥越竹細工は思想家の柳宗悦が昭和17年に雑誌『工藝』で紹介したことでも知られています。本書『かごを編む』は、柳が『工藝』で紹介した内容と実際の鳥越竹細工に食い違いがあることも指摘しています。『工藝』に掲載された竹細工の弁当箱の写真は、編み方を見ると鳥越のものではないそうです。九州のものの可能性がある。なぜ別物とみられる竹細工の写真が載ったのか…。結論は出ないものの、本書は興味深い考察をしています。読んでみてのお楽しみです。

それとこの本、かごや鳥越の現地の写真がとても良いんです。
竹細工の幾何学的な模様って、眺めているだけで時間がたつ。本来は使ってなんぼのものなのですが、家に置いてるだけでも楽しいんですよねえ。

ちなみに世田谷美術館の企画展「民藝 MINGEI」についても川端堂のnoteで書きましたので、以下のリンクでご覧ください。展示は2024年6月30日(日)までで、その後は富山、名古屋、福岡へ巡回するそうです。


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