川端堂

神保町の共同書店「SOLIDA」に小さな棚主として出店しています。 https://p…

川端堂

神保町の共同書店「SOLIDA」に小さな棚主として出店しています。 https://passage.allreviews.jp/store/R3U2ZPC3PMU7XQ5IA4HPN5VE

最近の記事

【岩手県盛岡】竹細工を体験して「民藝」を身近に感じる。しかも気軽に

岩手県の「盛岡手づくり村」で、伝統工芸の「すず竹細工」を体験してきました。まったくの素人でも気軽にできるので、かなりおすすめです。今年6月に見た「民藝 MINGEI」展で興味を持った「すず竹細工」が、一気に身近なものとして感じられました。 まずこのペン立てをご覧ください。 どうなんでしょう。やっぱり素人が作ったって分かりますかね。全体的にゆがんでます。隙間も多いです。私が作りました。わずか1時間半で! ちゃんとペン立てとして使っております。 小岩井農場の近くにある「盛岡

    • テレマークスキー文学の最高峰『魔の山』

      トーマス・マンの『魔の山』。このあまりにも有名な小説を、私は「テレマークスキー文学の最高峰」と勝手に認定しております!(ただしこの文章の最後に注意事項あり) テレマークスキーとは、クロスカントリースキーのように、かかとが外れているスキーです。雪山を歩いたり登ったり滑ったりする山スキーに適しています。斜面を滑り降りるときは、両脚に前後差をつけたテレマークターンという独特な技術を用います。日本にも少数ながら根強い愛好家がいる。私もそのひとりです。 『魔の山』の後半、第六章には

      • 凝りまくった造本がすごい 武井武雄展

        先日、目黒区美術館で開かれている武井武雄展に行ってきました。造本や装幀に興味がある人は必見かもしれないと思いました。素晴らしい展示です。 武井武雄は子供向けの絵本などの挿絵を芸術的なレベルに高めた「童画」の作家として有名です。 一方で小型の「刊本」作品など、凝りに凝った造本でも知られているそうです。 今回の展覧会は童画や版画など武井の作品が盛りだくさんで展示されていますが、わたしは特に、武井が造ったたくさんの本に目を奪われました 小型の「刊本」以外に大型の豪華本もあります

        • 【猛暑の青森で雪見】鴻池朋子や小島一郎の展覧会で涼む

          7月下旬に青森に行ってきました。予想外に暑い。地元のタクシーの運転手さんもびっくりしていました。でも青森県立美術館で開かれている企画展では東北地方の「雪」を堪能することができましたよ。 ひとつは「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」です。(2024年9月29日まで) もうひとつは青森の写真家・小島一郎の展覧会。(2024年9月29日まで) まずは鴻池さんの展覧会です。いろんな展示の中で、特に「物語るテーブルランナー」というプロジェクトが面白かった。鴻池さんが秋田県・阿仁合

        【岩手県盛岡】竹細工を体験して「民藝」を身近に感じる。しかも気軽に

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        • 川端堂おすすめの書籍
          13本

        記事

          キラキラしたジュエリーに癒されるはずが、ちょっと胸焼け(良い意味で) 上野のカルティエ展

          たまにはキラキラしたものを見て癒されたい…そんな気持ちに駆られ、上野の東京国立博物館で開かれている「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」に行ってきました。 カルティエのジュエリー、しかも一生触れないような逸品を理屈抜きで楽しもうという気持ちで行ったのですが、よい意味で裏切られました。ジュエリーだけではなく、現代アートもしっかり楽しめる展覧会。思わず展示を2周しましたよ。たっぷり時間を取って、胸焼けするぐらいじっくり見ることをおす

          キラキラしたジュエリーに癒されるはずが、ちょっと胸焼け(良い意味で) 上野のカルティエ展

          カヤックの経験はないけどこの本は面白い 『海旅入門』

          きょうは『海旅入門』(著:川﨑航洋、イラスト:川﨑あっこ)というシーカヤックの入門書をご紹介します。 わたしはシーカヤックをやったことがなく、正直言って近々やる予定もないのですが、この本は面白い。海旅への憧れをかき立ててくれました。 本書の後半に収められている実際の海旅の記録を読むと、陸の旅とは別の世界があることが分かります。例えば島根半島の周囲を漕ぐ海旅。著者は夫婦で稲佐の浜から日本海岸を東へ漕ぎ、途中2泊のキャンプを経て境港まで回り込んでいます。舟でしか行けない入江もあ

          カヤックの経験はないけどこの本は面白い 『海旅入門』

          恵比寿で「時間旅行」 東京都写真美術館

          宮沢賢治が詩集『春と修羅』を出版してから今年でちょうど100年だそうです。この節目と絡めて100年を振り返る写真展「TOPコレクション 時間旅行」が、恵比寿の東京都写真美術館で開かれています。先日見てきました。 『春と修羅』はあくまでも「手掛かり」との位置付けで、展示内容は宮沢賢治に縛られず多様です。見る人の興味によっていろいろな楽しみ方ができる展覧会だと思いました。 まず大好きな桑原甲子雄の写真がたくさん見られたのが良かったです。戦前・戦中の東京の街並みを写した作品が良

          恵比寿で「時間旅行」 東京都写真美術館

          岩手県・鳥越竹細工の魅力が詰まった本『かごを編む』 

          世田谷美術館の企画展「民藝 MINGEI」を見て岩手県・鳥越の竹細工に興味を持ったわたしは、さっそく『かごを編む』(文:堀惠栄子、写真:在本彌生)を買って読んでみました。柴田恵さんという現地の職人をクローズアップして鳥越竹細工を紹介した本です。 岩手県一戸町の鳥越竹細工は作り手の高齢化が進んでいる上、材料であるスズタケの減少という危機に瀕しているそうです。なんでも120年周期で起きる大量枯死現象の可能性があるとのことですが、詳しい原因は分からないそうです。 柴田さんは自分

          岩手県・鳥越竹細工の魅力が詰まった本『かごを編む』 

          見応えあり、世田谷美術館「民藝 MINGEI」展

          世田谷美術館で開かれている企画展「民藝 MINGEI」を見てきました。 身の回りにこんな家具や食器、置き物や服があればいいなあと想像しながら見るのが楽しい。実際には、まず家を片付けましょう、というのが現実だけど。 一部エリア以外は撮影禁止だったので、いろいろ目に焼き付けてきました。紅型(びんがた)と呼ばれる沖縄の模様染の着物がかわいかった。青地に花や蝶の模様があしらわれている。沖縄なのに雪輪のデザインも入っている。本土のデザインの影響を受けたそうです。素材が木綿なので夏で

          見応えあり、世田谷美術館「民藝 MINGEI」展

          【書籍紹介】『手仕事をめぐる大人旅ノート』(著:堀川波)

          工芸作家・イラストレーターとして活躍する著者が3週間にわたりロンドン、バルト三国などを巡った旅の記録です。12年ぶりに再取得したパスポート、新調したスーツケース、息子に借りたリュックサック…。海外旅行には不慣れで英語も苦手という著者が、Google翻訳を駆使して歩き回ります。 インスタで知り合ったロンドンの毛糸店に依頼されてワークショップを開き、ラトビアの「森の民芸市」で白樺細工を買い込む。アクティブな旅の様子と現地の手工芸品を、ほんわかした挿絵で紹介しています。 それに

          【書籍紹介】『手仕事をめぐる大人旅ノート』(著:堀川波)

          100年前の痛快な温泉ガイド 田山花袋『温泉めぐり』

          田山花袋の『温泉めぐり』は、そのありきたりなタイトルからは想像できない、痛快な旅行ガイド本です。大正時代に出版され、読みやすい表記で岩波文庫に入っています。 まず情報量がすごい。北海道から九州まで、各地の温泉を訪ねています。温泉宿や接客の様子、泉質、周辺の町や村の様子、風景などを細かく記しています。当時の有名な温泉地はだいたい網羅しているのではないでしょうか。 そして温泉に対する評価が率直です。「伊香保は東京附近では、箱根についで、好い温泉場だ」という感じで勝手にランキン

          100年前の痛快な温泉ガイド 田山花袋『温泉めぐり』

          大阪・淀川とブッシュ大統領

          2005年11月、米国のブッシュ大統領が来日しました。外交のことはよく知らないですが、このときのことは忘れられません。 小泉首相との会談場所は京都でした。大統領は専用機で大阪の伊丹空港に到着。京都との間はヘリコプターで移動したそうです。 私は当時、大阪に住んでいたのですが、上空を物々しいヘリコプターの編隊が飛んでいったのでびっくりしました。 テレビをつけると地元の放送局が興奮状態で実況中継をしています。特別番組でしょうか。中継の担当者が「いま、大統領を乗せたとみられるヘ

          大阪・淀川とブッシュ大統領

          カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

          私たち「川端堂」の最近のおすすめ本は『旅をひとさじ』(文・写真:松本智秋)です。 この本は写真が多くて、いっそ「写真集」と言ってもいいと思うんですが、被写体の人たちがしっかりこちらを見ているのが素晴らしいです。 内容はというと、ユーラシア大陸各地のイスラム系の街を訪ねた一人旅の記録なんですね。 コロナ前の数年間に中国、中央アジア、イラン、レバノン、シリア、ブルガリア、ロシアなどを巡っています。政情不安な地域も多いので、いまでは行きづらい場所も。 現地を散歩し、現地の人と会話

          カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

          岩手・気仙川 増水したらあえて簡単に流されるのが特徴の小さな橋

          岩手県南部の清流・気仙川に、住民の人たちが手作業で架けた木製の橋があります。大雨などで増水すると、いさぎよく流されるように作られています。 住田町にある松日橋(まつびばし)という橋です。2023年夏にドライブしたついでに寄りました。 質素な橋です。付近の住民の生活用の橋として使われているようです。いったん流されても、部材がワイヤーで岸につながれているのでなくならず、水が引いたらたぐり寄せて再利用するそうです。江戸時代からあるんですって。 地元の新聞によると、今年3月に、3

          岩手・気仙川 増水したらあえて簡単に流されるのが特徴の小さな橋

          丸山太郎に出会った旅 長野県・松本

          先日、長野県松本へ1泊2日の旅をしてきました。 下調べ不足で突然思い立って行きましたが、収穫の多い楽しい旅でした。 みなさん、丸山太郎って知ってますか? わたしは全然知らなかったのですよ。 まず松本に着いてすぐに散歩してみて驚いたんですが、街中に水路が張り巡らされているんですね。井戸もあちこちにあって、水がどばどば出ている。飲んでみると美味しい。とにかく水が豊か。 子どもを抱っこして一生懸命に水路を見せている女性がいたので近付くと「ニジマスがいるんですよ。あの角を曲がった

          丸山太郎に出会った旅 長野県・松本

          盛岡・中津川の今昔を比べてみました (薗部澄の写真集『北上川』より)

          岩手県盛岡市の真ん中を流れる中津川は、地元市民にも観光客にも愛される美しい川です。川沿いに遊歩道があり、周辺には小さな喫茶店やギャラリー、書店や雑貨屋なども多く、散歩にはちょうどいいです。 東京の古書店でだいぶ前に手に入れた『北上川』(平凡社)という写真集に、1950年代の中津川らしき風景が載っていました(中津川は北上川の支流です)。さすがにビルも少なく、お馬さんが歩いてたりしてのどかです。たぶん「上の橋」のあたりから写したものではないでしょうか。 左上に見えるのは東北電

          盛岡・中津川の今昔を比べてみました (薗部澄の写真集『北上川』より)