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無印良品ノクティプラザ溝の口店店長に聞く、無印良品とサステナブルの関係

これまでの取り組みの間口を広げることが無印良品の使命

2030年までに店舗への再生可能エネルギー導入100%、自社の店舗設備での太陽光パネル設置100%を目指すことを提言した無印良品は、企業全体としてだけでなく、各店舗で展開するオリジナルの企画も充実しています。そこで、無印良品のサステナブルな取り組みについて、ノクティプラザ溝の口店の店長・安田克久さんにお話を伺いました。

——無印良品といえば、サステナブルな商品を取り扱っているイメージが以前よりありましたが、環境へ配慮した取り組みを、より具体的に示されたそうですね。(※1)

取り組みとしましては、繊維製品の回収、回収をして染め直した衣服の販売、プラスチックボトルの回収、給水機の設置、フードドライブの収集などがあり、「良品計画」のホームページでは数字でご確認いただけます。

店頭で一番分かりやすいのは、紙を中心としたパッケージへの見直しですね。無印良品のものづくりには“素材の選択”“工程の点検”“包装の簡略化”の「3つのわけ」といった考え方がありまして、パッケージの見直しは、その内のひとつになります。

多くの方にご指示いただいているレトルトカレーは、箱のパッケージを使用せずにレトルトパウチ自体に成分表示を記載して包装を簡略化していますし、布製品などのファブリックスは、紐でくくってタグを付けただけのシンプルな包装でゴミの削減に繋げています。

脱プラスチックで言いますと、レジ袋はプラスチック製のものは全て廃止して紙製にし、マイバッグに代わるアイテムとして“シェアバッグ”というものもスタートさせました。シェアバッグは、デポジット(預かり金)として150円いただき、お客様がそのバッグが不要になった段階で店舗にお持ちいただくと150円が返金されるという仕組みです。そういった“お客様にとって不便のないサステナブルな取り組み”が、個人的にとても良いなと思っています。

——ノクティプラザ溝の口店として独自の取り組みはありますか?

溝の口は、脱炭素に向けた取り組みを川崎市の中でも特に力を入れて行っている地域でもあるので、環境をテーマにしたイベントに参画させていただくなど、お隣のマルイさんも含めて館全体で環境問題を意識しています。

今年(2022年)は、環境チャレンジシートを作る「夏休み子ども環境ワークショップ」や、裾上げで出た切れ端を使ったリース作りのワークショップを「脱炭素アクションみぞのくち広場」というイベントで開催しました。

そして、ご家庭などに余っている食品を回収するフードドライブ活動や、地元野菜の販売も行っています。フードドライブに関しては、ご寄付いただいた食品をフードバンクかわさきへお渡しし、必要とされている方のところに届けていただています。

家庭や事務所で余っている食品を回収するフードドライブ活動。回収された食品は「フードバンクかわさき」を通じて必要な人へ届けられる。

地元野菜の販売は、宮前区の横山農園さんが作った旬の無農薬野菜を店頭に並べているのですが、生産者の顔が見える安心安全な野菜が食べられるということで、入荷を楽しみにご来店されるお客様もいらっしゃいます。

地産地消を促す野菜販売のコーナーも。地元の野菜を食べることは、物流の意味で二酸化炭素排出削減の助けにもなる。

組織全体だけでなく、店舗として行っている取り組みを地域の方に知っていただくことで、お客様とのコミュニケーションも生まれますし、より地域に根差した取り組みが行えます。そういった意味でも、各店舗がどういった取り組みをしているのか、お客様に知っていただくことが大切になってきますね。

高津区の土砂災害ハザードマップや、かわさき防災アプリを紹介するチラシなど、防災関連の情報を集約したラックを設置しているのも、こちらの店舗の特徴。

——では、店舗として意識していることは何でしょうか?

ワークショップは、“親子で楽しめる”ことをキーワードにしています。今のお子さんは学校で環境について学ぶ機会が増えた反面、深くは分からないという子も多いと思うんです。ワークショップがきっかけで自分も家族と一緒に何かしてみようという良い循環が生まれることを目指して、必ずお子さんと親御さんの組み合わせで行えるワークショップを企画しています。

そして、無印良品のアプリ「MUJI passport」では、店舗のイベント情報やスタッフのおすすめ商品を紹介するコラムも発信していまして、取り組みの裾野を広げるというとおこがましいかもしれませんが、無印良品のことをもっと知っていただき、地元のお客様と繋がっていきたいという想いで情報を発信しています。

——より多くの方に取り組みを知ってもらうというのは、とても大切なことですね。

そう思います。例えば、冷水筒のパッキンや、化粧水や乳液の詰め替えなど、新品を買わなくてもパーツだけ欲しい方にピッタリのサステナブルな商品は、もっとお客様に知っていただきたいですから。

大切にしているのは、必要なものを必要なだけという意識

——ペットボトル削減の意味でスタートした給水機の設置も、インパクトのある取り組みですよね。

お客様が自由にご利用いただける給水機は、簡単に飲み水が手に入る給水ポイントとして2020年に登場しました。以前、新宿の店舗に勤務していたことがありまして、新宿のような都会の街中に無料でお水が飲める給水機があるなんて、すごいなと思ったのを覚えています。散歩やショッピングの途中に立ち寄ってお水が汲めるという意味で、生活の中に無印良品が溶け込む、そんな形もあるのだなという驚きがありました。

フードドライブ活動も、自分自身はこれまで意識したことがなかった取り組みなので、自分が当たり前だと思っていたことも、人によっては当たり前ではないのだという気付きがありましたし、自分の生活を見直すきっかけにもなりました。

1日1本でも空のペットボトルを減らすことをテーマにスタートした「自分で詰める水」。無印良品で販売されているボトルやマグだけでなく、自身のマイボトルに水を詰めてもOKなのが嬉しい。

——では、安田さんが個人的に取り組んでいる環境への配慮があれば教えていただけますか?

そこまで大きなことはしていないのですが、エアコンの設定温度を意識したり、室内にいる時は季節に合った服を着て体温を調整したりですかね。あと、買い物の時はマイバッグを使いますし、必要でなければ割り箸をもらわないようにしています。特別なことをしているわけではなくて、必要なものを必要なだけ、という意識が強いです。

——その想いは、無印良品に並んでいる商品にも通じますね。シンプルだけれど、自分の気持ち次第で価値のあるものに変化するという。

本当にその通りだと思います。小さなことでも良いから続けることがサステナブルな取り組みには必要だと思いますし、新しいことを生み出すだけでなく、これまでやってきたことの間口を広げることが、無印良品の使命なのかなと僕は思っています。

※1 株式会社良品計画 気候変動への対応:https://www.ryohin-keikaku.jp/sustainability/environment/climate-change/

大きな組織ながら、地域社会との繋がりを意識し、店舗によってオリジナルの企画を提案し続けている無印良品。その多様性の尊重こそが、長い間、無印良品が支持し続けられる理由のひとつなのだと感じました。脱炭素経営に向けたアクションの実現のために、粛々と、しかし確実に取り組みを進める姿勢は、この先も話題を呼びそうです。

SHOP INFORMATION
無印良品ノクティプラザ溝の口
営業時間:10:30〜20:30
住所:川崎市高津区溝口1-3-1 ノクティプラザ1 6F
電話番号:044-814-7540


書いた人・佐藤季子
編集プロダクションを経て、音楽誌や演劇誌などエンタメ系の雑誌でライターとして活動。地元・川崎市では、麻生区の地域情報サイト「ロコっち新百合ヶ丘」、小中学生で結成された「麻生区SDGs推進隊(一般社団法人サステナブルマップ )」の運営メンバーとして活動中。