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つづく、アイデンティティのデザイン

2021年9月19日に行われた、Designship 2021のプレイベント「Open Session」で「アイデンティティのデザイン」についてお話させていただきました。

このイベントではゆめみのリブランディングについてお話をさせていただいたのですが、この場で印象的であったのは一緒に登壇したモリサワの富田さんの「モリサワのアイデンティティは書体」という言葉でした。

例えばですが、モリサワのアイデンティティは書体であるのならば、JINSであればメガネです。
JINS MEMEはそのアイデンティティを持っているからこそ生まれたプロダクトではないかと思っています。
こういったモノをつくり続けている企業では、そのモノがアイデンティティであるということはわかりやすく、それが故にとても強力です。
逆にそういったモノや自社サービス/プロダクトを持たない企業のアイデンティティはどのようにつくっていけばよいか、それについて考えてみたいと思います。

企業のらしさを伝えるコーポレートアイデンティティ

ゆめみのリブランディングはコーポレートアイデンティティ(CI)リニューアルから始まっています。
企業活動のあらゆる側面に一貫性をもたせて、ブランドを向上させていくために必要なのがコーポレートアイデンティティ(CI)です。
CIは企業理念やロゴを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、正確に言うと、企業理念やロゴはその一部となります。
CIは以下の3つの要素により構成されます。

・MI:マインドアイデンティティ(理念)
・BI:ビヘイビアアイデンティティ(行動)
・VI:ビジュアルアイデンティティ(視覚)

マインドアイデンティティ(MI)とは「企業の存在意義と在り方を言語化したもの」であり、ビジュアルアイデンティティ(VI)は言語化されたマインドアイデンティティの可視化であり、ビヘイビアアイデンティティ(BI)とは、社員がマインドアイデンティティに基づいて、その企業らしい行動を日々の仕事においてあらゆるところで行い続けることで生まれる行動のアイデンティティです。

このCIを策定する理由はいくつかありますが、主立ったものとしては以下が挙げられます。

1. どこから見られても、企業の見え方に一貫性が生まれる
2. 企業のらしさが蓄積され、強固なブランドになっていく
3. 企業価値の安定供給、および企業の長寿化
4. 社員の共有の行き先が生まれ、企業の進化が生まれる
5. その企業のファンが生まれる

そして、CIはつくって終わりではなく、社内外のあらゆる企業活動に落とし込んでいくことで、その効果を発揮します。

アイデンティティはどのようにつくられるのか

CIのつくりかたのセオリーとしては、マインドアイデンティティからつくり始めることがベストとされます。
心の部分となる、ミッション・ビジョン・バリューをつくる。よく見聞きする言葉だと思われますし、セオリーとしては間違っていないと思いますが、これは組織構造や組織文化によって変わってくるとも考えられます。
ゆめみの場合はブランドプロミスである「GROW with YUMEMI」があったのですが、ミッション・ビジョン・バリューは2020年当時はそこまで浸透していませんでした。
初期はマインドアイデンティティから始めることも検討したのですが、ゆめみの組織文化的に、それがフィットしないのでは?という問いが生まれ、そこでメンバーの声を集めるという言葉集めからCIリニューアルのプロセスを始めました。メンバーから言葉を集め、それをもとに言語化し、そこからビジュアルアイデンティティをつくりあげました。
その背景についてはnoteに記事がありますので、こちらをご覧になっていただければと思います。

ただ、前述しましたように、ロゴリニューアルはCIの一部でしかないため、ゆめみのリブランディングは継続しています。
そのリブランディングの一つとして、Designship 2021でゆめみのCMを作成して公開しました。


ブランディングはつづく

このnoteで使っている画像は2019〜2020年に東京都現代美術館で展示された「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」の会場で撮った写真です。
この写真と「つづく」という言葉を用いたのは、ブランディングは終わりがあるものではなく、つづくものである。

皆川がミナ ペルホネンの前身となる「ミナ」を立ち上げたのは1995年。「せめて100年つづくブランドに」という思いでファッションからスタートした活動は、その後、インテリアや食器など次第に生活全般へと広がり、現在ではデザインの領域を超えてホスピタリティを基盤にした分野へと拡張しています。そのたゆまぬ歩みは、2020年に25周年となります。
本展覧会の「つづく」というタイトルは、文字通りブランドの時間的な継続性を示すものですが、それだけでなく、つながる・連なる・手を組む・循環するなど、モノや人が連鎖し何かを生み出していく生成のエネルギーを想起させる言葉でもあります。

アイデンティティのデザインも、つながる・連なる・手を組む・循環するなど、連鎖していくものであり、自分(たち)に向き合っていくことで、その姿が見えてくるものであると考えています。
その姿を見えるようにして、解像度を高めつつ、社内外のたくさんの人に伝えていくのがブランディングであり、モノや自社サービス/プロダクトを持たない企業のアイデンティティをデザインしていくことです。


コーヒーを飲みながら書いていることが多いので、サポートいただけたらコーヒー代として使わせていただきます!