見出し画像

「デザイン経営」をテーマにオンラインで対話の場をつくりました

2020年4月8日に「【オンライン】「デザイン経営と社会の関わり方」を考えてみよう」という対話イベントを開催しました。
このイベントは経産省から出された「デザイン経営ハンドブック」「デザイン経営の課題と解決事例」を読んで、これらを読んだ人たちはどのように思い、考えているのかを聞いてみたいなと思ったところが、企画のきっかけでした。

「デザイン経営」という言葉を見聞きする機会は増えたものの、それが実際どのように受け止められて、どのように実践されているのか。またあらためて「デザイン経営」について考える機会になればと思ったこともあります。
今回は「デザイン経営」について複数のイベントで登壇されているILY,代表の辻原さんと一緒に場をつくりました。

イベント内容についてはご参加いただいた方にすでにレビューいただいているので、こちらをご確認いただくとわかりやすいです。(感謝!)

そして、今回はこのオンラインの対話の場をどのようにデザインしたか、について書いてみようと思います。

今回のイベントプログラムで意図したこと

今回は以下のようなプログラムとしました。それぞれの項目について解説してみたいと思います。

1. イントロダクション
2. チェックイン
3. ファシリテーターからの話題提供
4. テーマディスカッション
5. グラフィックレコードをみんなで見る
6. グループディスカッション
7. 今日の場をふりかえる

当初、前半で私と辻原さんがそれぞれの観点からデザイン経営について話題提供を行うことを想定していましたが、それは辻原さんにおまかせし、私はモデレーター的な位置づけで参加することにしました。
今回重視したのは「参加者がより深い対話を行うこと」であったので、そのために必要なプロセスは以下であると考えました。

0. 事前課題/事前アンケート
イベント前に、事前課題として「デザイン経営ハンドブック」「デザイン経営の課題と解決事例」を読んできてもらうことと、事前アンケートとして「デザイン経営について聞きたいこと、話したいこと」を回答してもらうことをお願いしました。
これはイベントに参加する前に今回のイベントについてそれぞれで参加する準備を整えてもらいたいと考えたためです。

1. イントロダクション
今回のイベントの主旨と目的を伝えた上で、使うツールの解説とスライドの事前共有を行いました。
冒頭に使用するツールの説明と練習する時間を取ることで、参加者の不安感を薄めることでき、その後の参加がしやすくなります。
オンラインの場合は、参加者の通信回線や環境の問題があるので、なるべくスライドは事前共有しておいた方が各自で手元で確認することができるので推奨します。

2. チェックイン
オンラインで使うハンドサインやジェスチャーをみんなでやってみました。
その後にZoomのブレイクアウトルーム機能を使って、4-5人のグループに分かれて自己紹介の時間を取りました。
今回は少し長めに時間を取り、チェックインの時間を「全員で→グループで」という段階を踏んだのですが、これは参加しやすくすることを目的としたためです。
その際に自己紹介のために紙とペンを用意してもらってそれを使ったりと、敢えてアナログ的な要素も含めてみました。

3. ファシリテーターからの話題提供
辻原さんから「デザイン経営ハンドブック」「デザイン経営の課題と解決事例」の解説。それについて私も含めてのディスカッション、そして辻原さんから「パブリックリレーションとデザイン」、「「システム」としてのデザイン」、「ビジネス“の”デザイン」「ビジネス“と”デザイン」について話をしてもらいました。
これは参加者の思考を広げること、途中で私が参加したのは一人の視点が話し続けるのではなく別の解釈を入れることで内容を深めることができればと考えたためです。

4. テーマディスカッション
ここでは事前に参加者からもらっていた質問から以下をピックアップさせてもらって私と辻原さんでディスカッションさせてもらいました。

デザイン経営と企業の規模 - 企業の大きさによって違いはあるか?
優先するのは、会社の成長?社会的インパクト? - どちらを重視すべきなんだろう?

この二つをテーマにして参加者の皆さんと対話してみたいなとも思いました。(それはまた別の機会に)
そしてこれは後半のグループディスカッションにつなげるための布石でもありました。

5. グラフィックレコードをみんなで見る
ここまでの内容を参加者みんなでふりかえるためにグラフィッカーとして参加してもらっていたはらだひろこさんに描いてもらったグラフィックレコードをタイムラプス再生し、はらださんの解説と合わせてみんなで見る時間を取りました。

みんなでふりかえりする際にグラフィックレコードを見る、グラフィッカー視点からのコメントを聞く時間を取ることはとても効果的です。
そしてそのグラフィックレコーディングのプロセスをタイムラプスで見ることでその効果はさらに増します。

6. グループディスカッション
Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って4-5人に分かれて以下の2つのテーマについて対話する時間としました。

スクリーンショット 2020-04-12 11.53.08

スクリーンショット 2020-04-12 11.53.18

ここで用意したのは「問い」とそれを考える上でのキーワードのみ。
あとはグループごとに委ねることにしました。
答えを出すことが目的ではなく、普段接することのない人たちが「デザイン経営」というワードから何を思っているのか、考えているのか、それを共有しながら対話する機会にふれることを目的としたため、今回はこのかたちとしました。

7. 今日の場をふりかえる
2回のグループディスカッション後、全員で「今日の場で思ったこと」をZoomのテキストチャットに書いてもらう時間を取りました。
グループごとに話されたことを共有する時間を取ることも考えたのですが、それはGoogleスライドに書きだしてもらっていたので、イベント後に各自で確認することもできるかなと考え、ここではその場で感じたことや思ったことをそれぞれふりかえってもらうようにしました。

オンラインで「対話」するために留意したポイント

オフラインでも同様ではあるのですが、「対話」が深めるかどうかはそこに至るまでのプロセス次第です。
とくにオンラインという場において留意したのは以下の点になります。

使うツールは学習コストが低いものに限定する
当初はZoomとmiroを使う想定でしたが、限られた時間の中での配分を考えた際に「ツールを使うこと」に意識と時間を費やさないようにと考え直し、利用するツールは学習コストが低いと考える、ZoomとGoogleスライドとしました。
その代わりに参加者各自で「紙とペン」を用意してもらって、必要に応じてそれらも使ってもらうようにしました。
Googleスライドを使ったのは、以下の目的からです。

・参加者各自があとでふりかえることができるように
・他のグループで話されたことを知ることができるように
・運営側が参加者が話したことを知ることができるように

このスライドはイベント全体で使っているものなので、全体をふりかえる時にも使いやすいと考えています。

参加者の迎え入れからのチェックイン
皆さんがオンラインの場に参加する際に、ログインした瞬間やイベントが始まるまでの時間が手持ち無沙汰ではないでしょうか?
(これはオフラインの場でも同様ですが)
そこで今回は以下のように対応してみました。

・イベントが始まるまでBGMを流しておく
・参加者がログインしたら一人ずつ声をかけて名前変更やビデオオンについて確認する
・手元に飲み物や食べ物があることを確認する
・Zoomのテキストチャットで実況中継していること、気軽に書き込んでほしいことを伝える

そしてイベント冒頭で、ビデオオンにすることが難しい方に確認を取ったり、みんなでテキストチャットに書き込んでみたりする時間を取りました。
こうしなければならない!とは思いませんが、その場に合った場の整え方はあると思います。

オンライングラフィックレコーディングを組み込む
今回のグラフィックレコーディングは参加者の対話を深めるためにプログラムに組み込みました。
私はグラフィックレコーディングはたんなる記録ではないと考えていますので、描き手の解釈を含めることをお願いしています。そのうえで参加者と一緒にグラフィックレコードを見る、その際にはグラフィッカーのコメントも合わせて伝えてもらうようにしています。

スクリーンショット 2020-04-12 12.21.15

スクリーンショット 2020-04-12 12.21.25

リフレクションに組み込んだ工夫

これは完全にイレギュラーというか想定外であったのですが、イベントページを公開した後に、グラフィックレコーディングを担当してもらった、はらだひろこさん宛てに連絡があり、「デザイン経営ハンドブック」「デザイン経営の課題と解決事例」をつくられた、一般社団法人 行政情報システム研究所の増田さんがイベントに参加いただけることになったので、ここで増田さんから作り手からの意図やコメントをいただくことにしました。
これまでは受け手として参加者の皆さんと話をしてきたのですが、作り手からのコメントをいただくことで、参加者各自のリフレクションに大きく作用するのではないかと考えました。
(増田さん、ありがとうございました!)

イベント終了後までのプロセスをデザインする

イベント自体はほぼ予定した通りの時間に終了することになったのですが、その後に、残ることができる人はみんなで話をしませんか?という声がけをさせてもらいました。
ある意味、イベント後の時間こそが深まる時間でもありますので、まだ話したいと思う人たちが話せる場を余白としてプログラムには含めていました。
参加者ごとに気になる点や話したいことは様々であると思いますし、グループが別で話せなかった人がいたり、イベント中に聞くことができなかったけど実は・・・ということもあったりすると思いますので、この時間の必要性を感じています。
オンラインイベントでは、参加者同士のイベント後のつながりをつくることが難しいと聞いていますので、そういった機会になればとも考えています。

デザイン経営についての場は今後も継続していきたいと考えていますので、今回ご参加が難しかった方々とも次の機会でお会いできればと思います!

コーヒーを飲みながら書いていることが多いので、サポートいただけたらコーヒー代として使わせていただきます!