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【かつらのお話:鉄輪金】

前々回までの女形の鬘は地金が頭を覆う鉢金でしたが、中剃りの鬘は鬢の左右が地金です。

その鬢の地金を頭に固定しズレ難くするために、

【鉄輪金:てつわがね】

で安定させます。

こんにちは。京都時代劇かつらです。

今回は中剃りの鬘の特徴でもある、【鉄輪金】のお話です。


黒い部品が【鉄輪金】

鉄輪金はアルミや銅と違いその名の通り鉄でできています。

バネ屋さんに特注し、仕入れた鉄輪金を焼鈍しして槌でかしめて強度と粘りを出します。それにより適度なバネ感がでて頭にフィットするようになります。


あらかじめ開いている穴に鋲で止めていく

映像の鬘はバネ感と締まりをギリギリまで少く緩くかしめ、舞台の鬘はバネ感と締まりを強めにしていきます。

中剃りの鬘はこの【鉄輪金】のかしめ具合が掛け心地の良し悪しを左右するので、とても重要な部品になります。

私が仕事し始めの丁稚の頃は、焼鈍しとかしめを上手くできなかったりして出来上がった鉄輪金を、【緊箍児】(きんこじ)みたいなどと言われました。
【緊箍児】(きんこじ)とは西遊記の孫悟空の頭にはまっている輪っかのことです。


ぐるりと頭の鉢を固定する

不出来な鉄輪金の鬘を掛けているとどんどんと鬘が締まり、頭がカチ割れんばかりに痛くなります。

その様がまさに孫悟空の頭の輪っか【緊箍児】(きんこじ)みたいだと言うわけです。

かしめを間違えると頭が締まる。まさに【緊箍児】

言い当て妙、うまいこと言わはるなあと思いますが、そんな鬘を掛けられた役者さんはたまったものではないですね。

丁稚の頃の不出来、役者さんには申し訳ないことをしました。

さて、次回は下貼りのお話です。

どうぞお楽しみに。


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