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無職男と時給870円女子の起業物語【第6話:飛び道具の開発方法】

あらすじ:六本木俳優座ビル908号室にIbiza Waxを夫婦で開業。なんとか軌道に乗せるも他店からは嫌がらせ。起業から7ヶ月目にその他店の真ん前に出店すると資金繰りがショート。


好調な滑り出しの新宿店。しかし月末に迫った支払いには約50万、翌月のスタッフへの給料に関しては全く足りないことが判明した。夫婦で無休、無給で何ヶ月も頑張った挙句に金が足りない悲しさは筆舌しがたい。
銀行融資はとっくに断られている。念の為、近くにある消費者金融の審査条件を聞きにいった。

しかし残り1週間、ここで【時の利】に助けられることになる。
鮮明に覚えているのだが2015年のGWは大型連休だった。4/27,28、4/30,5/1、5/7,8のどれかを休めばそれなりの連休、なんならそれらをくっつけて2週間以上の長期休暇が取れる!なんてニュースで賑わっていた。

お陰で六本木店、開店したての新宿店の予約はお断りを出すほどパンパンに。
僕らはスタッフにピンチを悟られないよう、カード支払い用の端末が不調なのでお会計は現金で頂くよう伝えた。
そして4月30日の昼に集金しなんとか月末の支払いを済ませ、スタッフの給料日は翌月8日だったので7日の夜に集金しギリギリ間に合わせた。

今回の問題が起きた原因は新宿の出店費用以外にもあった。進めていた新規事業にお金がかかっていたのだ。

脱毛サロンの運営をして気がついたことがあった。
これは足し算ビジネスだと。売上を伸ばすためにはベッド数を増やす(比例して人も雇う)だけなのだ。営業の総時間と施術人数を増やす以外に策がない。

そして、もう一つ重大な事に気がついた。

麻美は毎日現場に立ち13時間労働で稼ぐも、僕は店内に入れないので毎日サロン付近をウロウロ。妻に負担を掛けないよう家事全般とお店のタオルを洗う日々。
あれ?こ、これは立派なヒモへの道やないか!ヒモ前科のある僕はピンと来た。(参照:ヒモ男がホームレスになり旅して起業したら小金持ちになった話

ヒモ男の成れの果ては百も承知だ。若ければやり直しも効くが、37歳のおっさんがチョキンと切られた日には悲惨この上なし。

僕も稼がなければ!そんな時、麻美との会話でヒントが転がってきた。

「脱毛後に、あそこの黒ずみを気にする人が多いんだよね」
と麻美。

「まじで?麻美も自分の色とか気にしたことある?」

「初めてVIO脱毛した時はびっくりした!」

下品な会話をする夫婦だなって感想は一旦横に置いてください。
なんとなく引っかかった僕は、取り急ぎ男友達に連絡をした。

「いままで彼女とかにアソコ黒いよって言ったことある?」

全員が

「ないない。というか気になったことない。」という。

続けて仲の良い女友達数人に調査する。

「今まで誰かにアソコ黒いって言われたことある?」

「無いわ!」

謎である。現場で何も問題は起きてない。誰も火をつけていない。
それなのに女子は消火したがっているではないか。

僕は検証のため取り急ぎ美白パックのPOPを作り店内に貼ることにした。

すると多くのお客様が興味を持ち、注文がすごい。

デリケートゾーン用のケア商品を検索するとニオイ対策はいくつもあるが、黒ずみ対策は見当たらない。

これはもしかしたらおウチでできる顔の美白パックのようなものをデリケートゾーン用に作れば売れるのでは?

すぐに麻美の下着や生理用品を取り出しVI部分に定規を当て寸法を図り、丁寧にパソコンで実寸大に描いて印刷した。それを型としマスク等に使う不織布に合わせ、自作の試作品を何枚も作った。麻美にも見せると、これ凄い良いね!と。

当時僕がPCで作ったVI用美白パック設計図。本気である

仕事だ、これこそが俺の仕事だ!
僕は顔パック(フェイスマスクシート)を作っている会社を見つけ出しては連絡をしまくった。
しかし成分問題、使用箇所の問題、できたての会社という信用ゼロ問題。門前払いが続いた。ニヤけた顔で断ってきた奴もいた。
僕らが見つけたアイデアは実現が無理なのかもしれない。
殆ど諦めた時、ある一社から「わかりました。デリケートゾーン用パックのお問合せは初めてで、型代は別途かかりますが一定の生産枚数をご発注いただければ作りましょう」と快諾の返事を頂いた。

本当ですか!?やっと具現化できる!しかもデリケートゾーン用なんて初めての問い合わせらしい!日本初か?いや世界初かもしれない!ま、まさか世紀の大発明をしたのでは?!

アドレナリンがドバドバ出た。発明家カツオ・ダ・ヴィンチ誕生の瞬間だ。

すぐに自作の試作品を恩人経営者のもとに持っていった。サロンの現場で見つけたニーズ、類似商品がない事、麻美のパンツをもとに作ったVIパックの設計図面を見せながらTEDトークのように熱く語った。

すると
「お前、、なかなかやるな、、この設計図も自分で?」

「はい。困難でしたが、なんとか大量生産できる工場も見つけました」

僕がそう答えると、感心する恩人経営者。
そして「どれどれ」と、おもむろにテーブルの上に寝転がり僕の作った試作品のVIパックを股間付近に置いて目をつぶりだした。

「ほおほお。なるほど。。んんん?!お、お前、こ、これって!
パンツ下ろして寝たままじゃねーと使えねぇじゃん!??顔パックは着けながら他のことが出来るから良いけど!これ風呂上がりとかに下半身丸出しで上向きに寝ながらアソコをパックするんだろ?!」

「は、はい、そうです」

恩人経営者は、おーい!と他のスタッフを呼び出し

「カツオがまた変なもん作ってきたぞ!股間パックだ!」

僕はすかさず、この発明品はVIパックという名前であり、美(VI)パックとも読めてネーミングにもセンスがあることを伝えた。

しかし股間パックのインパクトは強く、皆んなからは失笑が。

ニーズがあるのは理解してくれたが、1度は試しに買っても続けて使うのはハードルが高いとの意見であった。

言われてみると確かにその通りだ。閃いた時は興奮してユーザーの使用している姿を全くイメージできなかった。

「ボディクリームみたいに塗る系だったら良いですかね?」

「それはワンチャン良いかもね!でもオレはむしろ毛があるほうがいいし、黒くてもいいけどね!」

あんたの趣味は聞いてないと思ったが口には出さず、発明品の股間パックをゴミ箱に捨てた。

危なかった。あのまま突っ走っていたら在庫の山、つまり股間パックの山に埋もれて死んでいただろう。まさに運命の分かれ道。しかも右か左じゃなくて。上に登れるか地下に埋まるかの道だったのだ。

この日を境にデリケートゾーン用美白化粧品を作ることに方向転換した。
またゼロからオリジナル化粧品を作ってくれる多くの会社に問合せ、苦労してなんとか最低ロット1000本で我々の望む商品を作ってくれるところを見つけた。

打ち合わせに参加する麻美。ヘソは出していないが派手。

納期は3ヶ月後。全額前金。信用もない会社だ。当然だろう。
1円でもコストを下げるために箱無し、チューブ容器の印刷も1色にした。バーコードはどうするか?と聞かれたが黒は1色追加料金(3万円程度)が必要になるとのことで諦めた。

Ibiza Wax店舗でも売る予定だったが、ヒモ対策も兼ねて僕がEC事業を立ち上げることにした。
サイト制作が必要となり、色々な制作会社に連絡するも高くて全く手が出せない。

まずは手数料無料でECサイトが作れるBASEにアカウントを作り商品を販売することにした。
化粧品はイメージが大切だ。僕はイラストなど描けないので、様々な仕事を500円から外注できるココナラというサイトを駆使し格安で発注することにした。

しかし値段相応というべきか。納品されてくるものは震えるものばかり。

VIOクリームを塗るイメージ
脇の黒ずみイメージ
バストトップイメージ


時間の無駄だ。やっぱり金を出してプロに任せるしかない。

腹を決めてご縁で知り合ったI社を訪れると、単品リピート通販という売り方を教えてくれた。今で言うサブスクD2Cのことだ。

自分のイメージしていた販売方法とは違うが、その手法だと通販のテンプレートがそれなりにあるので立ち上がりが早いという。

制作予算を聞くとやはり手が出ない。すると分割支払いと1年間のレベニューシェアを提案してくれた。僕自身、単品リピート通販の知識もなかったし1年間伴走してくるとのことだったので有り難くお願いすることにした。

化粧品とサイト制作一部の支払いを済ませた。ここで文章冒頭の資金繰りの話になっていく。

実はそんな金策に走っている最中に、大きな事件が起きていた。

んんん?!!えええ!!待て待て!!
念の為、違うものも買ってきてテストする。

麻美が妊娠した。

起業して7ヶ月。資金繰りも大変な時だ。起業以来、僕も麻美も給料は1円も出ていない。
やっと新宿店も動き出し、ここからが頑張りどころだ。そんな最中での突然の出来事だった。

林先生の「今でしょ!」が流行語大賞を取るほどの時代だったけど、
「絶対に今じゃない!!」それが、検査結果をみた瞬間の正直な気持ちだった。

一番の働き手である麻美が出産育児で現場に出れなければ、売上は減る。なんとしてでも今回の飛び道具であるEC事業を軌道に乗せなければ、、、切れそうなほどの重みがヒモにのし掛かった。

次回は妻の妊娠、渋谷店の出店、自宅を六本木へ引っ越し、通販のマーケティングについて書いていく。


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無職男と時給870円女子の起業物語
【第1話:火傷しない商売のルール】
【第2話:スパイ大作戦と砦の確認】
【第3話:半径1mの資金調達】
【第4話:六本木No.1戦略】
【第5話:洗面器に顔を突っ込む】
【第6話:飛び道具の開発方法】
【第7話:無鉄砲な当てずっぽう】
【第8話:順調は不調の始まり】
【第9話:1億円を燃やして得た教訓】
【最終話:最高のマーケティング、そして売却へ】

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