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「独学の地図」から考える”学び”について

勝田です。
4月1日に開催しました「マスターコースセミナー」にご参加頂いた方、ありがとうございました。

今回運営に携わり、私自身マスターコース受講経験のない中、選び方のポイントについて資料の作成・スピーカー・当日の運営をさせて頂く中で、診断士としてどのようなスキルが求められているのかを改めて考えるきっかけになりました。座談会で受講経験者の皆さんが非常に活き活きとされていて、充実したものなんだろうなと感じました。
また、お話しさせて頂くにあたって、必要な準備や当日の進め方など勉強になりました。

とはいえやってみた結果、沢山改善の余地があったので、また機会があれば挑戦して改善していきたいです。

さて今回、改めて「学ぶ」ということについて考えるきっかけを頂いたので、いま読んでいる荒木博行さんの「独学の地図」の内容(主に前半部分)から考えたことを書きたいと思います。

「独学」の定義と試験勉強との関連

中小企業診断士試験受験生の間で(他の資格試験もそうかもしれませんが)「独学」といえば、「受験予備校や通信講座を受講せず、参考書などのみで自力で勉強すること」というイメージだと思います。
(私も二次試験は参考書のみだったので「独学」と名乗っていました)
一方、荒木さんは独学についてこのよう定義づけています。

もちろん、誰かと机を横に並べて学んでいることもあるでしょう。誰かに直接教えを乞うこともある。その行為は一般的には独学とは言わないかもしれない。しかし、教室でみんなと一緒に学んでいようが、その内容を自分の世界の中に取り込み、内省して、学びへと転換していくのは他ならぬ「自分独り」である以上、全ては「独学」なのです。
荒木博行「独学の地図」 序文より抜粋

この部分から、中小企業診断士の試験勉強において、勉強方法(通学・通信・参考書のみ等)に関わらず、学んだ内容をそのまま鵜吞みにせず、自分の中で咀嚼(内省)して、自分なりの解答パターンや型に落とし込む(転換する)、「独学」を行うことが合格に近づく方法なのかも、と想起しました。
現在進行形の仕事の関係で合格体験記をたくさん読む機会があり、いろんなタイプの合格者の方がいますが、共通していると感じることは、様々な情報(インプット)の中から、自分なりのスタイルを確立し、勉強方法・解法(アウトプット)に繋げているところだと感じていたので、この「独学」的プロセスは必要なのだと思います。

その学びに「問い」はあるか?

と、試験勉強について頭を巡らせていると早速第1章からひっくり返されました。

 資格やテスト対策としての勉強には明確な目的があります。それは、一定以上の得点を取る、もしくは単位を取る、ということ。この文脈で語られる勉強は、「他者が定めた要件を満たすための手段」として位置づけられます。
 しかし学びには、忘れてはならない根源的な役割があります。(中略)あなたが今何かを学んでいるとして、その出発地点には答えを出したい「問い」があるでしょうか。その「問い」は他者が定義したものではなく、自分の内側から出たものでしょうか。
荒木博行「独学の地図」第1章より抜粋

「中小企業診断士試験に合格する」ということはまさに「他者が定めた要件を満たす」ことであり、その出発地点に答えを出したい「問い」があったかについて頭がグルグルと回っていきました。

(こんな感じで)
なぜ診断士になろうと思ったか
→地方の中小企業が持っているポテンシャルを最大限引き出して儲かってほしい
→なんで地方の中小企業が儲かってほしいのか
→地方の中小企業(+実家の家業)と一緒に仕事をする機会が多く、かかわってきた企業の方々が、それぞれ付加価値や強みを持っていて、その地域・企業にとってなくてはならない存在で、かつ楽しく仕事をすることができ、この人たちの役に立ちたいと思った
→なぜ、・・・

この後の部分では「自ら問いを立てる」学びについて「自由研究」(対照として試験勉強は非自由研究型)に喩えられています。
まさに診断士については資格を取るまでは「非自由研究型」で、取った後は「自由研究型」の極みですね。
特に決まった業務はなく、それぞれの専門性や関心に合わせて自らテーマを決めて学びを深め、学んだことを経営支援に活かし、更に領域を広げていくことができる「自由研究」的な面白さがあると感じています。
(逆にそこが「取っただけでは食えない」と言われる部分でもありますが、、、)
診断士の方、勉強中の方にもそれぞれの「問い」を聞いてみたいですね。

「経験の前後の差分」を削り出す

次に、「学び」の本質について、荒木さんは「経験の前後の差分(=経験する前の自分と、その後の自分との差)」と表現しています。
そしてこの当たり前とに思える定義に沿って本当に実践できているか、と疑問を投げかけてくれています。
例に挙げられている社内研修での話のように、学んだと思っていることは「それっぽい一般論(コミュニケーションには自己開示が大事、成功するためには努力が必要、等)」で終わってしまっていないか。
インプットした内容を「自分だけの具体論(自分の経験に基づいた具体的なイメージ)」に変換するところまで行って初めて差分が削り出される、というのは理解はできますが、実行するためには日ごろから意識して取り組む必要がある。それこそが「学び」を深めるプロセスであるということです。

このブロックの文末にある、研修アンケートのコメントの例(「登壇者へ一言」→「とても勉強になりました!」「刺激を受けました!」)はまさに使ってしまっていたなと反省しました。
折角診断士になって学びの機会が多くいただけているので、1つ1つの研修を通じて自分が何を学んだか、を丁寧に削り出していきたいと思います。

「何を学ぶべきか」から「今何を学んでいるか」へ

本書ではこの後、
・どのように学びを深めていくか(日々の学びをアウトプットする場を先に作る)
・独学の為に必要な能力(五つの筋肉:自己批判筋・保留筋・抽象化筋・具体化筋・表現筋)とその鍛え方
・独学の土台としての「ラーニングパレット」=学んできたことを構造化して整理し、組み合わせられるようにしておくこと
・これから学ぶ内容を決める方法
について書かれています。どれも自分の学びについて振り返る機会になったので、機会があればぜひ本書を手に取って読んで頂きたいです。
そして、「おわりに」では最後の問いを投げかけられます。

「あなたは今、何を学んでいますか?」
荒木博行「独学の地図」”おわりに”より抜粋

本書では何度も「学び」は何か改まって教室に通ったり参考書を読んだりして行うものではなく、日常の中から学ぶことができるということが強調されています。
日常から学びを得るためにも、常に自分の中に解決したい「問い」を頭の片隅に置いて、一つ一つの出来事や会話からでも「学び」に気が付けるようになれればよいのかな、と思います。

今回紹介した「独学の地図」の著者である荒木博行さんは「学び」の楽しさを広げることをミッションに活動されていて、音声プラットフォームの「Voicy」で「book cafe」という本の紹介や著者との対談などを毎日配信されています。
私も毎日聞いて気づきと刺激を受けているので、是非一度聞いてみてください。(検索機能で気になる本の紹介や対談から入られるのがよいと思います。)


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