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「問いかけの作法」から組織運営を考える

今回は、組織コンサルティングと研究をメインとする株式会社MIMIGURIのCo-CEO安齋勇樹さんの著書である、「問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術」をもとに、特に管理者・経営者が考えるべき組織運営について書いていきます。

本書の内容(ざっくりと)

チームメンバーがポテンシャルを発揮し、成果を生み出すために「問いかけ」の質を高めることが重要であり、具体的に「見立てる」「組み立てる」「投げかける」の3つのサイクルと4つの基本定石によって良い問いかけを増やす方法について書かれています。
詳細はぜひ本書を読んでいただければと思いますが、ポイントはこんなところです。

相手の意見を引き出す問いかけの4つの基本定石
①相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
②適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくる
③遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
④凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

見立てる
チームの状況を観察してメンバーがどのような状態にあるか仮説を立てる
「ガイドラインとしての問い」(何かにとらわれていないか、こだわりがどこにあるか、ずれていないか、何かを我慢していないか)を持ち、「観察する着眼点」(何かを評価する発言、未定義の頻出キーワード)を絞る
「三角形モデル」(見たい光景・場の目的・現在の様子)を使って、見立ての精度を高める
・目の前の状態を観察しながら、チームや組織を俯瞰する視点を持つ

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

組み立てる
2つの前提(①チームにおける自分の立場や役職を考慮する②もともとの自分のキャラクターや芸風に合わせる)を押さえつつ、基本定石を守って問いかけを設計する
3つの手順(①未知数を定める<目指す方向、未定義キーワード>②方向性を調整する<主語×時間=歴史・経験・ビジョン・願望>③制約を掛ける<トピック限定、形容詞追加、範囲指定、答え方指定>)に従い組み立てる
「フカボリモード」(素人質問・ルーツ発掘・真善美)「ユサブリモード」(パラフレイズ・仮定法・バイアス破壊)の2つを状況に合わせて組み合わせてミーティングを組み立てる

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

投げかける
・ミーティングの冒頭で相手の注意を惹く4つのアプローチ(予告・共感・扇動・余白)を行う
・質問を引き立たせるためにレトリックを活用する
・意見が出ない場合、本音で語られていない場合など、初期反応に基づきアフターフォロー(前提捕捉・ハードルを下げる・組み立て直すいなど)を行う

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

本書を通じて、仕事だけでなく家族内での問いかけについても振り返るきっかけになりました。

実体験を通じた組織課題のあるある(?)

本書の前提のところで、「チームの問題がなぜ起きるのか」についても語られています。
安齋さんは、問題の要因は、従前の日本企業に多い「ファクトリー型」から、「ワークショップ型」に移行する過渡期の現代において、ファクトリー型に適応した会社が陥る「4つの現代病」がワークショップ型への移行を阻害していると述べています。

ファクトリー型組織
・トップダウン式で、経営層が定義した「問題」を実務層が「解決策」を磨き続けることで運営する組織
・効率・継続・技術革新が尊重される
・中間層は管理者として実務層をマネジメント
ワークショップ型
・ボトムアップ式で、経営層が探求した「理念」を基に、実務層が「問題」の発見と「解決策」の探求を自律的に行う
・対話・変化・創造性が尊重される
・中間層はファシリテーターとしてマネジメント

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

ワークショップ型への移行を阻害する「4つの現代病」
①認識の固定化:暗黙に形成された固定観念により、発想が凝り固まる
②衝動の枯渇:内発的な同期に蓋がされ、主体的行動や発想が抑圧される
③関係性の固定化:お互いを分かり合っていないまま、関係性が凝り固まる
④目的の形骸化:作業が自己目的化し、仕事の意義が見失われる

安齋勇樹「問いかけの作法」より抜粋

この内容から、よく関わっている(意味もなくぼやかしますが)会社においてモヤっていたことが頭に浮かんできました。
(皆さんのお勤めの会社でもこういうことある!と思っていただけると信じて、、、)
まさにファクトリー型の会社で、そもそも本書で語られているような「ミーティング」の機会がほぼない状況でした。
その代わりにあるのは「報告会」「説明会」で、この場から何か生み出されるものではない場です。
参加者のモチベーションも「この説明がつつがなく終わってほしい」「説明に対して何も意見が出てくれるな」という気持ちでしょう。
特にコロナ禍でオンラインミーティングが主流になってからその傾向が顕著になったと感じます。(処理能力の関係でカメラOff前提なことも一因と推察)
その結果なのか、組織への貢献感や帰属意識が薄れ、社員のモチベーションも下がり、離職率が増えているように感じます。
※こう書くとテレワーク・オンライン会議否定派のようですが、個人的には工夫次第で改善できる部分も多いと思いますし、柔軟に働けることは組織への愛着にもつながるので基盤を整備するのが良いと考えています。

このようなモヤりを感じている方は少なくないのではと思います。組織風土や意思決定体制など個人の力では変革が難しいようにも感じますが、少しでも好転させるためにできることはあると、本書の内容をヒントに考えました。
(経営者・経営層・組織トップの方は、自社・自組織がこのような状態に陥っていないか、今一度フラットな目で点検してみるとよいでしょう。)

組織の一員として出来ることは何か

人によって立場や環境が異なるとは思いますが、例えば中間管理職として組織を運営する立場の人や、会議をファシリテートすることができる人は、「三角形モデル」の”見たい光景”メンバーがどのような状態になっていることが望ましいか、自社・自組織の存在意義や目的・目標を明確にすることがスタートではないかと思います。(その逆が、目の前の仕事ありきで、この仕事をどうするかという考えで対応していくことでしょうか)
まずは自分の中で明文化し、それをチームに共有することで、まずは自分の半径5mのところから意識を変えていくことが大事ではないでしょうか。
そして、チームメンバーが最大のパフォーマンスを発揮して、チームで成果を出す好循環を創るために、まずは(報告・発表ではなく)「問いかけ」がある会議をつくるところから始める必要がある組織も多いと思います。
ぜひ自分の身の回りのチームからでもやっていけるといいですね。
(私も育休復帰後はチャレンジしたいと思います!)

それではまた。

かつけー/勝田慶


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