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敗北の代償は、混乱と危険であり人類文明そのものの危機

引き起こされた大規模戦争の責任は完全にロシアにあり、ウクライナが誘発したわけではない。ロシアは1990年代から長い間、ウクライナへの武力侵攻を準備していた。この戦争での民主主義の敗北の代償は、混乱と危険であり人類文明そのものの危機です。 戦争を終結させ、平和を確立し、国家間関係における国際法の優位性を回復させる必要があります。ロシアとの貿易は侵略者の潜在力を支援するものであるため、制裁要件を遵守し続け、ロシアとの経済関係を可能な限り制限することが重要である。


Шевченко Сергій ВолодимировичSerhii Shevchenko
ライター・ジャーナリスト・編集者。キエフ国立大学ジャーナリズム学部卒業。ウクライナ大統領によって授与されたウクライナ名誉ジャーナリスト。ウクライナ全国ジャーナリスト連合(NSJU)、ウクライナ全国ライター連合(NSPU)、ウクライナ民族学者全国連合(NSKU)の会員である。https://www.mediafond.com.ua/


ロシアは1990年代から長い間、ウクライナへの武力侵攻を準備していた。

Irpin after Russian invasion.

ソビエト連邦の共産主義政権崩壊後、クレムリン(ロシア国政の中枢部)は、モスクワから独立した国々に対する影響力をあらゆる手段で回復、強化しようと努めている。

ロシアは、ウクライナ国民を「自国民」と呼び、かつてのソビエト連邦、あるいわロシア帝国の一部であった領域を自国の領土とみなしたいと考えている。それゆえ、クレムリンは近隣諸国に対して常にハイブリッド戦争を仕掛けており、近隣諸国をモスクワに依存させようとしている。モルドバやコーカサス地域で行われているように、ロシアは挑発し「凍結した紛争/Frozen Conflict」を生み出している。ウクライナとの関係においても、対ウクライナ戦争の激しい段階としての武力侵攻は時間の問題であった。

ソビエト連邦の後継者を自称するロシアは、「連邦」の在り方として常に侵略、侵略戦争、絶え間ない「土地の収集」と領土の拡大を企てている。現在の独裁者プーチン大統領は、あらゆる方法で自らの権威主義的(本質的にはファシスト的)権力を維持し、強化しようとしている。 腐敗したクレムリン政権はロシアを過度に軍事化し、NATO(北大西洋条約機構)と西側諸国を悪者扱いし、近隣諸国と争い、ヨーロッパを脅迫し、民主主義の世界に対して前例のない情報戦争を行っている。

ロシア政府は、ウクライナのEU(欧州連合)とNATOへの加盟を阻止するために、ウクライナに親ロシア的な指導力を押しつける試みを継続している。2013年~2014年にかけて、ウクライナ国民が文明的な選択をし、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領の政策に反乱を起こしたとき、ヤヌコーヴィチ氏はロシアに逃亡した。その後、ロシアはウクライナ政府の弱みにつけ込み「ロシア人保護」という偽りのスローガンのもと、クリミア自治共和国を占領しようとし、ロシア黒海艦隊の軍事基地は今もクリミアで活動している。ウクライナの領土であるクリミアとルハンシクおよびドネツク地域などの一部をロシアが併合する試みは武力侵略の始まりであった。

引き起こされた大規模戦争の責任は完全にロシアにあり、ウクライナが誘発したわけではない。

現在、ロシアが行なっている大量虐殺は、私たちの国にとって歴史上初めてのことではない。1932年~1933年にクレムリンは、ホロドモール(人為的に引き起こされた大飢饉:ジェノサイド)を行い何百万人ものウクライナ人の命を奪った。また1937年~1938年に大規模な政治弾圧である恐怖政治(Great Terror)。そして第二次世界大戦後、モスクワはウクライナの民族解放運動を残酷に弾圧しました。

この戦争での民主主義の敗北の代償は、混乱と危険であり人類文明そのものの危機です。

21世紀に入りロシアは、武力でウクライナの南部と東部の領土を奪取しようとしている。これは最初に2014年の春からクリミアとドンバスの一部の地域で行われました。そして2022年2月24日、ウクライナへの大規模攻撃が北部、東部、南部の3方向から同時に開始された。

大規模攻撃は、キエフ、ハリコフ、その他の大都市へのロケット弾による攻撃と爆撃、インフラの破壊、民間人に対するテロなどが行われた。広い戦線と大軍勢を率いて進軍してきた侵略者は、ウクライナ首都キエフから北に110キロの位置にあるチェルノブイリ原子力発電所を占領し、ブチャ、イルピン、ボロディアンカなどの都市で、民間人に対して恐ろしい犯罪を犯しました。

その後、「2、3日以内にウクライナの首都に入る」ことを計画していた占領軍をウクライナが撃退、一連の敗北を喫した 占領軍はキエフ、スームィ、ハリコフ地域の一時支配地域から撤退。 その後、ロシアは、ヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所を占拠、核脅迫を行う。また、南部のカホフカ水力発電所のダムを破壊し、大規模な環境災害を引き起こした。

武力侵攻を企てたロシアは、この戦争で物的・人的両面で莫大な損失が発生しているにもかかわらず侵攻を継続。被害者を恐怖に陥れ続けている。(*2024年1月 時点で36万5千人以上のロシア兵が死亡。)

世界の民主主義主要諸国の連帯による軍事支援、財政援助にウクライナ国民の頑強に抵抗する行動が加わり、侵略者からの攻撃を2年間阻止することができている。

ロシア政府は、ロシアに対して導入された経済制裁やその他の制裁を回避しようとしている。 そして当惑し、怯え、貧困に陥っているロシア自国民にクレムリンのプロパガンダを浴びせかけ、「ウクライナ・ナチス」からロシア人を守るという神話上の必要性を主張している。 この従順で忍耐強い人々は今の独裁政権に抵抗することができません。そのため、帝国主義的野望を持つロシアが現在の形で続くとすれば、残念ながらこの戦争は長期化する可能性があります。

ロシアは北朝鮮とイランの権威主義政権間に同盟関係を見出しており、中国共産党からのさらなる支援を望んでいる。ロシアは武器や弾薬の自国生産を拡大し、ミサイルや無人航空機などの武器を海外から購入し、それらを使ってウクライナを攻撃している。

私たちは皆、全体主義と権威主義がどのように国家を征服しようとしているかをはっきりと理解しています。 激化する戦争はもはや 2 つの国家の国境に限定されず、この戦争での民主主義の敗北の代償は、混乱と危険であり、そして人類文明そのものの危機です。これはいかなる場合でも許されることではありません。

今のところ、ウクライナは立場を堅持し、数ではなく技術で戦っている。

ウクライナ国防軍の主な任務の 1 つは、敵軍の兵站、装備、人員を破壊することです。 現在の前線の状況は、ウクライナがロシアの攻撃を阻止し続ける用意があることを示している。しかし、勝利するには、より効果的で強力な国際支援が必要です。特に制空権確保のための支援が必要です。

このような支援は、民主主義世界のリーダー、主に米国、EU諸国、その他のパートナーによって提供される可能性があります。侵略者を大人しくさせることが、この世の悪意に立ち向かうすべての人たちの利益になることは明らかです。

自由と民主主義を選んだ人々の団結、精神の強さ、そして正義の闘いに対する不可欠な世界の支援、これらは敵によって課された消耗戦で失われることはできないものです。ロシアの敗北と犯罪者の適切な処罰、そして歴史的・政治的、全世界にとって危険で攻撃的な勢力の解体のみが、この惨事を止め第三の危険を回避する方法である。

戦争を終結させ、平和を確立し、国家間関係における国際法の優位性を回復させる必要がある。

ロシアとの貿易は侵略者の潜在力を支援するものであり、ロシアとの経済関係を可能な限り制限することが重要である。

侵略を受けた私たちは、ウクライナが今もっとも必要としているハイテク兵器の援助に対して同盟国やパートナーに非常に感謝している。 武器がなければ戦場で守ることも勝つこともできません。 また軍事専門家の訓練と継続的な人道支援にも感謝している。

ウクライナ国民は、我が国の領土保全と主権を支持するG7諸国の原則的な立場、侵略者を裁くための一貫した協力に感謝している。

侵略によって引き起こされた損害の記録と補償によって犯罪者は、自らの処罰が避けられないことを認識しなければなりません。主な手段は、国際司法裁判所の調査です。ウクライナに対する侵略犯罪特別法廷、ハーグのウクライナに対する侵略犯罪訴追国際センター、損害の記録。

ウクライナ国民は、非致死的軍事援助の提供、ウクライナ避難民の受け入れ、破壊されたインフラの再建プロジェクトへの多大な貢献という前例のない決定を行った日本に特に感謝している。 財政、技術援助、人道支援物資は政府機関だけでなく、民間企業や公的機関からも提供されました。

ロシアとの貿易は侵略者の潜在力を支援するものであるため、制裁要件を遵守し続け、ロシアとの経済関係を可能な限り制限することが重要である。 ウクライナはまた、破壊された経済を回復するために外国パートナーの支援を非常に必要としている。日本政府は、日本・ウクライナ経済再建プロジェクトを今年(2024年)2月に開始すると約束している。 第二次世界大戦後、日本が何度も経験した自然災害からの復興の歴史的経験を活かして頂けること期待しています。

日本の多くの人々の気遣い、連帯、支援に感謝し、2024年の新年が皆様の幸せを祈っています。

Шевченко Сергій Володимирович

With respect and gratitude
Serhii

https://www.mediafond.com.ua/
e-mail: fond.vbf@gmail.com

[英語原文/English original text]
[ウクライナ語原文/Український оригінал]


翻訳:丸田克彦 https://katsuhikomaruta.com/

初めてウクライナに撮影に行ったのは2014年でした。何度かウクライナに行かせてもらい訪れた場所が、友好のある方々が戦争に巻き込まれている事実がとても悲しい。

来日した際にインタビューを撮らせて頂いたことのあるウクライナの名誉ジャーナリストのシェフチェンコさんに直接ウクライナ戦争について話を伺ったので記載します。

より正確な内容を確認したい場合は、英語原文かウクライナ語原文をご確認ください。

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