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アメリカで国も文化も違う若手から学んだこと

僕はアメリカのボストンにある製薬会社で働く研究者。57歳になった僕の周りは、ほとんど自分よりずっと年下の若手ばかりだ。生まれた国も育った文化も全く異なる若手からいつも刺激を受ける。現在の僕のワークスタイルは、ほとんどの日は自宅からリモートで働き、自分にとって重要な会議などがある時だけオフィスに出社するハイブリッドワーカーだ。平均すると週に1回程度しか出社しない。ただ、出社する時は、周りにいる若手を捕まえて、ランチやコーヒーブレイクに誘ったり、1:1ミーティングをやって若手からフレッシュな刺激を受けるのがひとつの楽しみになっている。

周りにはめちゃ将来が有望な若手がいっぱいいるので、そこからポジティブエネルギーのエキスを吸っている。

3人の有望な若手から学んだこと

イギリス人のデビッドから学んだ自分の感情を伝えること

イギリス出身のデビッド(仮名)は、僕とタッグを組んで、新薬候補のトキシコロジーの研究を進める重要なパートナーだ。彼は、4年制の大学で生物学の学士(Bachelor)をとった後に製薬会社の研究の仕事に入った。超学歴社会で博士号(PhD)を持っていないとなかなか出世できないアメリカでは、ハンディキャップだ。ただ、それにも物怖じせずに、持ち前の素直さと明るさで、今の仕事での地位を確立した。僕より15際以上若いが、とても仲が良い。素直に彼を応援したくなる。

僕が彼の普段の言動スタイルから学び、とても新鮮だったことが、コミュニケーションの時に、ただ仕事の経過・結果を報告するだけでなく、自分の感情も入れて伝えてくれることだ。仕事の場では、できるだけ個人的感情を入れるべきではないと思って仕事をしてきた日本人の僕には、とても新鮮だった。

「今日はプロジェクトAでは、当局から満点の回答を受け取り、とても幸せだった。それなのにプロジェクトBでは、進んでいると思っていた検査が、まだ手つかずで放置されていることを知り、一気に心が沈んでしまった。」 本人は意識しているつもりはなく、自然にそのようなコミュニケーションをしているのだろう。でも、僕にとっては、デビッドがどんな気持ちで仕事をしているのか?どんな気持ちでその結果を受け取ったのか?がよくわかって、とても親近感を持ちやすい。日本では仕事に個人的感情を持ち込むな!と教えられてきたが、所詮、仕事とは言え、人がやること。仕事のその時々で、自分の感情がどうだったかを仲間に伝えることは、チームワークを円滑に進めるには、とても有効なことだと教えられた。


インド人のニーラから学んだ何でも聞くこと

半年ほど前に入社したインド人のニーラ(仮名)は、好奇心の塊だ。僕と同じように大手の製薬会社から総社員250名足らずの小さな会社に移った彼女は、たくさんの責任ある仕事に携われるようになり、生き生きとしている。彼女と一緒にプロジェクトを行い、1対1のミーティングで内容を説明をしようものなら、質問の嵐に会う。たくさんの質問に対応しなければならないので疲れるが、それだけ好奇心を持ってプロジェクトにのめり込んでくれるのは、同じチームメンバーとしてめちゃ嬉しい。

彼女を始め、インド人の質問力、積極性にはとても感心してしまう。ミーティングでもセミナーでも、日本人だったら「こんな質問するべきじゃないかな?」と躊躇してしまいがちなことも、ぜんぜん物怖じせずに質問する。きっと子供の頃からそのような教育を受けてきたんだろうなと思う。

自分が説明する立場なら、何も聞いてこない人よりも、少々うっとうしくても何でも聞いてくる積極性を見せてくれる人に、説明するやり甲斐を感じるし、一緒に仕事をしたいと思うだろう。だから、彼女からは、何でも聞くこと、積極性を見せることの重要さをいつも学んでいる。


中国人のユンから学んだ知らない世界に飛び込み、自分を試すこと

中国人のユンは、数ヶ月前に大学院のポスドクから、初めて製薬業界に飛び込んだばかりの超若手だ。大学院での専門は、モデルシミュレーション。バイオロジーの知識はほとんどない。まして製薬業界のことは全く知らない。ただ、自分のモデルシミュレーションの専門知識が、製薬業界でどう活かせるか、自分を試したくて入ってきた。

僕なりには、日本からアメリカに渡り、日本人の殆どいないアメリカの会社に入ったと言った自分の安全領域を超えた挑戦をしてきたつもりだったが、大学から社会人になって30年以上に渡り、ずっと、生物学・医薬の世界の中だけで生きてきた。ユンの挑戦は、そのスケールをずっと超えているようで見ていてとても頼もしい。

ニーラと一緒でユンも好奇心の塊だ。オフィスに行くと、僕を見つけて何でも聞いてくる。吸収力もすごくて、見ていて成長するのが頼もしい。僕もランチに連れ出したり、ad hoc 1:1ミーティングをやって、製薬研究のことを教えたり、逆に彼が何を考えているかを聞いたりするのはめちゃ楽しい。

ユンを見ていると、これからも自分の知らない世界に飛び込み、自分を試すことにワクワクしたいと勇気をもらえる。


有望な若手に共通する点

デビッド、ニーラ、ユンの3人を紹介したが、その他にも僕が見ていて頼もしいなぁと思える若手たちには共通する点がある。

1.声がデカい

1対1で話す時も、ミーティングの時も、元気な若手は声がデカい。間違っていてもお構いなしで堂々と発言ができる。特に、オンライン会議が多くなった今、音声の重要度が高まっていると思う。大きな声で分かりやすく堂々とゆっくり話すだけで、聞く側には発言に自信が感じられるだろう。

2.好奇心旺盛

とにかく何でも聞いてくる。自分だったら「今、このレベルの質問をするのは、場に合わない」「質問する前に、自分で調べるべきだよな」と思うようなことも躊躇なく質問してくる。

3.物怖じしない

自分が若手の頃、上司や先輩と話す時は、とても緊張した。もちろん、口調は、同期の仲間と話すのとは、ぜんぜん違った。今の会社で、若手と話していると、彼らはとてもフランクに話してくれる。年をとっても僕に威厳がないからかもしれないが、若手が友達のようにとてもフランクに話してくれることは僕にはとても心地よく嬉しいことだ。

知識・経験は限られているので、最初に若手が立てた計画案はとんでもなくお粗末なことはある。ただ、その後、コメントやアドバイスを受けると、その後の対応力が素晴らしい!


上記の有望な若手に共通する点は、何も若手だけが重要視することではなく、年を食った僕にも重要にすべき点だと、若手から学んだことだ。

ランチに連れ出したり、ミーティングをしたりして、僕は偉そうに若手を育てているつもりになっているが、実は一番育ててもらっているのは、自分かもしれない。。。


#COMEMO #若手から学んだこと

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