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日本人の苦手な鳥の目を養う習慣

物事を多角的に見るために「虫の目、鳥の目、魚の目」が必要と言われるが、日本人は「虫の目」に長けていると思う。アメリカに住んでいると、日本の商品やサービスのクォリティの高さをつくづく感じる。利用者のことを考え尽くして開発された商品。顧客の希望に徹底的に配慮した細部まで行き届いたサービス。久しぶりに日本へ帰国すると、いつもこの快適な日本を満喫できる。細部にまでこだわり、徹底的に磨き上げ、一流の商品やサービスを作り上げる日本人は虫の目に長けている。ただ、この虫の目に長けていることが災いすることもある。日本が一つの商品・サービスに徹底的に磨きをかけている間に、アメリカを始めとする世界は、商品・サービスの根本となるプラットフォーム自体を変えてしまう。虫の目に長けているが故に、世界から置いてきぼりを食ってしまうことがある。

僕自身、日本人の得意とする虫の目を一番の武器として、アメリカで生きてきた。アメリカの製薬会社で新薬の研究・開発に携わっている僕は、研究データを細部にまでこだわって解析し、そこから導き出されることを、理路整然と論理的なストーリーにまとめ上げることが得意だし、大好きだ。周りからもその部分で評価を受けることが多かった。でも、同時に、鳥の目、魚の目が疎かになり、虫の目だけに偏ってしまう自分も自覚している。一つの物事の細部ばかりを虫の目で見ているのではなく、いったん、細部から離れて、大空高くに飛び、鳥の目で全体像を見る。川の中に飛び込み、魚の目で川の流れのように時代の流れを感じながら、全体像を見る。日本人の僕が苦手とする鳥の目・魚の目を養うために習慣としていることがある。

金曜日にリフレクションと次週のプランニングを行う

Wordファイルに自分が関わっているプロジェクトの要点をまとめている。
それぞれのプロジェクトについて、
そのプロジェクトは会社全体でどのような位置づけか?
プロジェクトはどのようなステータスにあるか? 
その中で自分はどんな仕事をしているか? 
自分の仕事はどんなインパクトを与えるか?
それぞれの仕事をいつまでに完了させるか? 
自分の仕事に影響を及ぼす周囲の状況は何か?
などなど短いフレーズで、箇条書きにまとめている。
鳥の目を養うため、全体像から、細部までを、箇条書きのレベルを段階的に変えて書いている。

毎週金曜日に、それをアップデートする。
最初に行うことはその週のリフレクション(振り返り)。その週に起こった変化や達成した事項を赤字にする。さらに会社全体・プロジェクト全体にインパクトのあったものは、太字で強調する。金曜日にやることが味噌だ。赤字や赤字+太字を見れば、その週の自分の達成度・成長度がすぐ分かる。

次にそれをコピペして、次週のプランニングを行う。全体像を俯瞰して、次週にやるべきことを赤字、インパクトのあることを赤字の太字に強調する。この予定には、会社全体・プロジェクト全体に関わる大きなことから、自分が直接関わる詳細なアクションアイテムまで段階的にレベルを変えて箇条書きになっているので、虫の目に偏りすぎて、大切なことを見落としていないかがすぐ分かる。鳥の目で優先順位がつけられるのだ。

しかも、毎週アップデートするので、過去と現在のものを眺めれば、魚の目で時の流れも確認できる。

金曜日に次週のプランニングを終えてしまえば、モヤモヤなく、爽快に週末を過ごすことができる。しかも、月曜日に何の準備もなく、速攻スタートが切れる。それだけでなく、現状と次週の予定がきちんとまとめられて自分の潜在意識の中に組み込まれているので、週末などでリラックスしている時に、ふっと良いアイデアが浮かぶことがある。いわゆる、意識して考え込んでいる時には出るはずもない画期的なアイディアが、ボーッとしている時にふっと湧いてくるデフォルト・モード・ネットワークっていうやつだ。

早朝ロケットスタート

超朝型の僕は3~4時に起きて、誰にも邪魔されないこの貴重な時間に、上記の予定に赤字+太字で強調して書かれたインパクトのある事項に取り組む。

この先々に進むこと。金曜日に次週のプランニングを行ってしまうこと。早朝誰にも邪魔されない時間に、自分にとっての最重要項目にロケットスタートをきること。すなわち、何でも先先に進むことが、鳥の目を養うために最も重要なことだ。先先に進み、余裕ができることで、大空高くに飛び上がり、鳥の目で全体像を俯瞰できる。全てが後々になり、時間に追われて目先にある仕事をとにかくこなさなければならない状況になれば、大空高くに飛び上がり、鳥の目で全体像を見る余裕などなくなる。

ロケットスタートを切って、自分の最重要項目を早朝に完了してしまうと、会社全体・プロジェクト全体の効率もバク上がりする。部下やチームメンバーが仕事を開始する8時、9時には、自分の重要な仕事が終わっている。後は、全体像を俯瞰して、彼らに指示や気づきを与えれば、彼らが素晴らしい仕事をやってくれる。

ロケットスタートを切る分、昼からの僕はほとんど使い物にならない。ひとりで、仕事をしても効率も上がらないので、優秀な若手を捕まえて、話を聞いて、新しい知識を習得させてもらう時間としている。

周りにギブして、フィードバックをもらう

アメリカだからといって、誰でも鳥の目・魚の目にも長けている訳ではない。やっぱり経験の少ない若手は、目の前の仕事に没頭し、全体像が見えなくなりがちだ。それぞれの専門知識では優秀な若手には全く敵わないから、僕は学ばせてもらう一方だ。でも、会社・プロジェクトの全体像やその中での彼らの仕事の意味は、彼らにギブし、気づかせてやることができる。優秀な若手は、僕の鳥の目・魚の目の養い方をうまく盗み、さらに自分なりの磨きをかけている。そして、そのさらに磨きをかけた方法を、僕に教えてくれる。僕にとっては、超貴重なフィードバックだ。

上記のWordにまとめたプロジェクトの週ごとのリフレクション・プランニングは、そのまま会社幹部・上司への報告や、部下やチームメンバーへのコミュニケーションにも使える。その中でいただける貴重なフィードバックで、更にプロジェクトのまとめは磨きが加わる。


虫の目、鳥の目、魚の目を自由に操り、物事をいつも多角的に見るなんて、至難の業だ。まだまだ修行中で、一生終わらないチャレンジだろう。でも、虫の目で物事の細部だけを見てしまいがちな日本人の自分が、先先に進むことと、周りにギブしてフィードバックをもらうことで、少しずつ鳥の目・魚の目を養っているつもりになっている。


#わたしの習慣

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