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あの人との出会いが今につながった

本日はSansan株式会社さんのお題企画「#ビジネスの出会い」に乗っかって、私が翻訳者になるきっかけとなった、ある人との出会いについてお話ししたいと思います。仕事のチャンスの掴み方、ビジネスを発展させるコツ、職場での人間関係がうまく行くヒントなどが詰まった投稿だと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

不採用から一転、採用へ

当時29歳の私は、歌手になる夢を追いかけて5年前に渡米し、ニューヨークのマンハッタンで暮らしていました。そろそろ歌手を諦めて、もう1つの夢であった翻訳者になろうと思い、翻訳会社に面接を受けに行きました。その時に出会ったのが、のちに私の人生に大きな影響を与えることとなった、上司のMさんです。

Mさんのデスクの壁には「You can quit anytime you want. (辞めたくなったらいつでも辞めれる)」と書いてありました。私は「この人辞めたいのかな?」と思いながら、彼女の面接を受けていました(笑)。

面接の後、翻訳テスト(業界用語で「トライアル」と言います)を受けて帰宅。手応えはあったので、私は受かる気満々でした。採点後、Mさんから結果通知の電話がかかってきました。

開口一番、彼女はこう言いました。

「がっかりしました」

そう、「残念ながら、今回は採用を見送らせていただきます」ではないのです。私はショックで返す言葉が見つからず、呆然と電話を握っていました。彼女はこう続けました。「あなたの翻訳は全然使えません。例えば・・・」そうしてダメ出しが始まりました。

一通りダメ出しが終わった後、彼女はようやく不採用の旨を伝えました。失意の中、私は声を振り絞るように言いました。

「これから一生懸命勉強しますので、お願いします!!」

特別その会社に思い入れがあったわけでも、この上司の元で働きたいと思ったわけでもありません。ただ、負けたくなかった。諦めたくなかった。その言葉を聞いて、彼女は私の採用を決めました。「私はそういう人が欲しかった」と。

3ヵ月の試用期間の最初の1ヵ月は、厳しい修行の日々でした。歯に衣着せぬMさんのダメ出しを受けながら、翻訳者として少しずつ成長していきました。そんなある日、Mさんの私への信頼がぐっと高まる出来事が起こりました。

上司からの信頼を高めた出来事

Mさんはその日、いつにも増してイライラした様子で、パソコンの画面に向かってブツブツ文句を言っていました。聞いてみると、翻訳ソフトのエラーでファイルが固まって、壊れてしまったというのです。そのエラーは昔から頻繁に起こっていて、何年もの間、それに悩まされてきたとのことでした。

偶然にも私は、その翻訳ソフトのマニュアルを読み込んでいたので、解決方法を知っていました。そして、彼女の目の前でわずか数秒で解決してみせたのです✨

いつもは私に偉そうな態度を取るMさんも、このときばかりは私を見直したようで、大げさなほど驚いて喜んでくれました。その日から、Mさんは私を信頼してくれるようになり、翻訳の腕が上がったわけではないのに、翻訳者としても認めてくれたような気がします。私への接し方も変わりました。

試用期間が終わる頃には、彼女は私をかわいがってくれるようになり、社長に掛け合ってくれて正社員登用が決まり、少しでも条件が良くなるよう給与交渉までしてくれました。

フリーランス転向、そして法人設立へ

入社して1年経った頃、私は結婚してハワイへ移住することになりました。Mさんに伝えると、祝福しながらもとても残念がってくれました。そして、社長に再び掛け合って、「ゆみが辞めるなら私も辞める!!」と半ば脅すようにハワイからのリモートワークを認めさせました。

2005年当時は、正社員のリモートワークが認められておらず、そのタイミングで私はフリーランスに転向することになりました。その後、どんどん大きな仕事を任せてもらえるようになり、7年後、私は翻訳会社を設立し、会社は現在第11期に突入しています。

成功の裏には、常に彼女の支えがありました。新しいクライアントの案件が入ってくると、「ゆみにやらせて!彼女にやらせないなら、私はプロジェクトを降りる!」と、彼女らしい口調で私のことを強く推してくれたり、他のオフィスが日本語の翻訳者を探していると聞くと、私のことを勧めてくれていたそうです。

あのとき彼女に出会わなければ、私は今頃この仕事をしていないかもしれないし、経営者にもなっていないかもしれません。

あのとき彼女に出会って、不採用でも諦めずに頼み込んで、ダメ出しがキツくても食らいついて、彼女の悩みを解決したことで信頼を獲得して、その信頼に応えようとしてきたことが、今につながっていると思います。



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