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【読書感想文】一穂ミチ『ツミデミック』

6つの哀しい短編から成る
人生を考えさせられる一冊でした。
おそらくパンデミックを文字って
ツミデミック。
罪と罰のツミなのか
人生詰んでるのそれなのか…。
コロナ禍に巻き込まれる人達や
何をやっても上手くいかなくなる人達を
容易く想像出来て
そう言えば自分もそうだったと…。
2回転職して
どちらからも必要とされてない気がして
空回って、焦って。
足りないピースを探し回って
失った場所に無理矢理
違うピースを埋め込もうと
踠けば踠くほど
悪い方に転がるっていう…。
人生って何なんだって叫びたくもなるさ。

『違う羽の鳥』

自分が今会ってる人が分からない。
生きているのか死んでいるのか
本人なのか他人なのかというミステリー

生と死、自分と他人
死を受け入れられなかったり
距離感が分からなくなる感じ
に共感。


『ロマンス☆』

狂気と正気の狭間
満たされなくて
何かに嵌まって行く様子が
理解出来るし、怖いし。
こんな事も当然あるだろうと
思っちゃうのはやっぱりコロナ禍
を経験したから。


『憐光』

ホラーです。
幽霊なんだから。
自分が死んでるって
分かってないんだから。
これがまた哀しい。
「私、こうなって死んじゃったんだ」って
紐解かれていく恐怖。
最後に光に向かって「行ってきまーす』って
私なら言えないかも。

『特別縁故者』

ここはちょっとほっこり。
寂しかった子供時代に埋められなかった
親父への憧れ。
一期一会の縁で
おっかないけど求めていた親父みたいな
お爺さんとの出会い。
再生を期待出来る物語。

物語はあと二つあるんだけど
ここでこちらの著者の他の作品を
思い出しちゃったので
脱線。

金沢支局で働く新聞記者が
能登半島の「けあらし」の記事を
書いた場面。
『能登半島から望む厳寒の日本海。
すごみのある青黒い海の向こうから
白い使いがやってくる』
       (off you go「新聞社シリーズ」)
このけあらしと
輪島の朝市、7月のキリコ。
これがどうしてもいつか見たかった。

今回の能登半島の大地震
被災の様子がニュースで流れる度
私同様、それ以上に心痛めておられる
だろう著者を思う。

被災された皆様がどうか
孤独になりません様
生きる希望を失いません様
願わずにはいられません。

コロナ禍を経験してきた私達は
沢山の気持ちを共有できるように
なりました。
人は簡単に裏切るし
転がり出せば悪い方に落ちる
一方だし。
足りないピースは足りないままで
いつまでも満たされない。

それでも生きて行く
生きて行くしかない。
少ししか見えない光を求めて。

という事であとの二つの感想は
また次回。


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