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【中途採用】募集要項とオーバースペックについて考える

久しぶりに採用に関するお話を。

特に中途採用に関してなのですが、
採用するか、別の候補者を探すかといった採用判断をするときの議論に上がることとして、下記があります。

「何を必須とするか、何を諦めるか」

募集要件に下記のような6つの項目があったとします。

・30人規模のチームマネジメント経験(3年以上)
・ビジネスレベルの英語力(TOEIC 800点以上)
・5年以上のEC業界での経験
・プログラミング経験
・決算書の作成経験
・カルチャーフィットすること

ちょっと適当に作りましたが、パッと見で全てを満たす候補者が転職市場にあまりいなさそうなことは分かる。

例えば、
プログラミングの経験がある人(≒エンジニア)と、決算書の作成経験がある人(≒ファイナンス)を並べると、職域が違いすぎるため、両方の経験を持つ人は、創業間もないようなベンチャー企業で、経営陣が兼務でやってるようなイメージになる。

これだけなら、まだ上記のようなところにあたりを付けて、サーチすれば見つかる可能性もあるが、さらに「30人規模のチームマネジメント(3年以上)という要素がハードルを上げる。

そもそもエンジニアで且つマネジメント経験がある人という組み合わせも難しいし、ファイナンスも同様だ。


実際に採用活動を行う時には、
こんな「あれも欲しい、これも欲しい」というワガママな募集要件にならないように採用担当が調整するものだけれど、それでも現場のマネージャーからは
「一応、載せるだけ載せておいてよ」なんて押し切られてしまうこともある。

たとえ、”一応”だとしても、情報として載せてしまうことで、候補者側がしり込みしてしまうリスクが高いため、要らない要件は全てバッサリ落とした方が採用の成功率は向上すると個人的には考えている。

というわけで、
世の中の求人票に乗っている募集要件には、程度の差はあれど、【全て必須】と書かれていたとしても、実際には検討の余地が含まれている。


そんな状況なので、
全ての要件を完璧に満たさない候補者が、最終選考のステージに上がることなど頻繁にある。


結果、
候補者の採否を判断するときになって、どこを妥協点とするのか、すなわち募集要件と掲げたものの中から、どれを落とすのか の議論をすることとなる。

余談だけれど、
採否判断のタイミングで、募集要件の優先順位を再整理してしまうと、母集団形成からやり直しになってしまうこともあるため、出来れば避けた方が採用コスト(費用×時間)は低く抑えられる。

極端なやり方かもしれないけれど、
部門のマネージャーに「どの要件も必須だというならば、すべてを満たしていない候補者は書類選考で落とします」と明言するか、

ビズリーチやLinkedIn、リクナビやDODAなどの大手転職サイトの候補者データベースから、すべての募集要件に合致する候補者は〇人だけど、□□の条件を外せば○○人になる、と具体的な数値で示すと、たいていは条件が緩和され、現実的な要件基準に着地する。



しかし、採用を長く行っていると、
全く逆のシチューションに遭遇することがある。


オーバースペック」という問題だ。


採用における オーバースペック を別の言葉で雑に言い換えるならば、優秀すぎる という意味になる。


人によっては「優秀すぎるならいいじゃないか」と感じる方もいると思う。

確かにその通りだ。
中途採用は、給与金額を年収〇○○万円~〇〇〇万円といった具合に、募集段階であらかじめ提示して募集を行う。そのため、良くも悪くも、そこまで募集職種と応募してくる候補者の現職(前職)における処遇や職責に乖離はない。

しかし、時として大きな乖離がある職種に応募してくる候補者がいる。

例えば、
年収1,500万円の職種に、経験の浅い若手が応募してきたりすることがある。
もちろん、この場合、大抵は募集要件のほとんどを満たしていないので、書類選考で不合格となる。


ところが、稀に逆のパターンがある。

ベテランというか、かなりの上級職に在る方が、第二新卒くらいがターゲットになるような職種に応募してきたりすることがある。

私が実際に経験したケースだけれど、
想定年収が、現職の1/3くらいになってしまう職種に応募してきた候補者もいた。もちろん、募集要件は満たしている。

これは採用担当の悪い癖かもしれないけれど、
こんな"悪い条件"で自分を転職市場で売りに出そうとしている候補者には、何か大きなリスクがあるのではないか?と訝しんでしまう。

或いは、業務以外の目的をもって入社しようとしているのではないか?なんて、B級の推理小説のようなことすらも想像してしまう。

多くの場合は、企業ブランドに惹かれて応募してみたけれど、最終的には家族に反対され辞退します、という結論になる。(ちなみに、前年度の年収が1,000万円くらいの人が、年収300万円台くらいの仕事に転職すると、転職初年度の給与のほとんどが税金で引かれてしまうので、注意が必要。)


さて、
もう一つオーバースペック(能力が高すぎる)な候補者に対して、懸念してしまうことがある。
それは、リテンションリスク(離職リスク)だ。

要するに、
能力が高すぎるために、転職してきたとしても仕事をつまらないと感じて、すぐに辞めてしまうのではないか?と勘ぐってしまうのである。

或いは、
能力が高いのであれば・・・と、元来の応募職種ではなく、一つ上位の職種での採用が出来ないか?と検討する。
候補者は何らかの理由があって、応募職種を選んでいるにも関わらず、採用企業側の都合で職種の変更を打診するという状況である。

これは候補者にとっては、
好待遇(処遇、職責、業務内容)に映ることもあり、断られるケースは少ない。


いずれにしても、
オーバースペックの採用というのは、採用担当にとって悩ましい存在である。

というわけで、これから中途採用を進めるという場合は、
一番最初の募集要件の設定を吟味されてみてください。

ビズリーチやLinkedInであれば、検索条件にキーワードを入れればどれくらいの候補者が市場にいるのかすぐに分かるし、大手転職サイトの営業担当に依頼すれば、すぐに調べてくれる。

所在地や年収帯なんかで条件を絞れば、実質的な候補者がどれくらいいるのかの全体像が掴みやすい。

さらに、もう一歩突っ込むならば、
スカウトDMのコンバージョン率や、転職サイトであれば応募率なんかの数字をもとにすれば、自社が募集を行ったときに、どれくらいの候補者数を集められるかといった予測も立てられる。
(自社と同じくらいの社格の企業をベンチマークすると、さらに予測の精度は上がります)


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最近は、
ガツガツバリバリ働くという人もいるけれど、それ以上に、それなりに給与をもらえれば、ほどほどで働いてバランスある生活をしたいという人が増えているように思う。そういう意味では、オーバースペック候補者の採用というのも、一つのポイントになるのかもしれない。

オーバースペックというのは、
企業側の視点なので、乱暴に言うならば「本人がその処遇で良いと言っているなら、採用しちゃえばいい」のだけれど、人事としては、それが本人(候補者)のためになるのだろうか?と頭を抱えてしまう。 それに、企業体質にもよるけれど "ほどほど" を良しとしないカルチャーの企業もある。(私の前職は未だにイケイケな感じ)
#イケイケって。。。

週休3日制を導入する企業が増えてきていることもあり、労働にどれくらいの時間を投下するか、また企業側がどれだけ選択肢を増やせるかというところと絡めての検討になるな。
#こういう発想は人事っぽいのかも

 

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