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生命の起源について

はじめに

生命の起源という壮大な謎について、私の考えている仮説を書きます。

※【お願い】この記事を引用や紹介いただける方へ、この記事の末尾に著者からの大切なお願いがあります。最後まで読んでいただけますと幸いです。

生命の起源の難問をざっくりいうと

地球の生態系には、様々な動物や植物が存在しています。
こうした動物や植物の多くは、多数の細胞で構成される多細胞生物です。
ダーウィンの進化論の考え方で時間を遡っていくと、地球上には、最初に1つの細胞だけで生きている単細胞生物が登場した、と考えられるようです。

では、最初の単細胞生物がどうやって誕生したのかというと、それが現在もわかっていないのです。

細胞は、おもに有機物と呼ばれる物質で構成されています。

この有機物の最小単位は、そんなに種類が多くはないのですが、異なる種類の基本的な有機物やその他の無機物をどんどんくっつけていくことができ、複雑な形と機能を持つことができるようになっていきます。最小単位の有機物も、長く大きくなった有機物の塊も、どちらも有機物と呼びます。

そして、有機物の塊がたくさん集まって、細胞内の組織を形作ります。そして、たくさんの有機物の塊と、いくつかの細胞内組織をまるっと細胞膜でくるんだものが、1つの細胞になります。

この有機物の塊一つをとってみても、とても複雑で、ちゃんとそれぞれ別々の意味のある機能を持っています。それが、きちんと意味のある機能を持つような組み合わせで組み上げられたものでなければ、細胞にとって役に立たないのです。そして、その有機物の塊を組み合わせた細胞内組織も、きちんと細胞が生きるために必要な機能を果たすように、組み立てられています。さらに、その細胞内組織の1つが欠けても細胞は生きることができません。そんな、生きるために必要な細胞内組織たちが、ちゃんと細胞膜の中にくるまれているわけです。

こんなスーパースペシャルウルトラ複雑な細胞が、いったいどうやって誕生したのか。それが謎なわけですね。実際、細胞がどういう作りになっているかを調べることはできていますが、じゃあ現代科学の力を結集して1個の細胞を作ってみよう、と考えても、作れないのだそうです。
複雑であることも難易度を高くしていますが、そもそも細胞の部品を頑張ってつくれたとしても、細胞を組み立てた時に、生きているでしょうか?反対に言えば、細胞を殺せば部品は手に入りますが、その後、どうやって組み立てたら生き返らせることができるのか、という難しさも、それはそれであるわけです。

ちょっとやそっとのことではそんな複雑で奇跡的なものが自然発生するとはとても考えられないのですが、でも実際には誕生したから私たちはこうして生きているわけですから、どうにかして自然はこの細胞を作り出したはずです。

では、どうやったらそんなことができるのか? ここから旅が始まります。

手がかりを考えてみた

何も持たずに探しても、見つかるはずはないので、この問題を考えるときには、そもそもどういうことが求められているのかを考えていかないとわかりません。
ちなみにソフトウェアシステムエンジニアリングの現場でも、システムを作ってほしいというお客さんも、自分が欲しいシステムがどんなものかぼんやりとしかわかっていないということがよく言われます。そんな時は、お客さんと一緒に、そもそもお客さんの業務の価値の源泉は何かとか、現状の業務や組織の構造やフローなどを整理するわけです。

さて、そもそも何が解決すべき点なのかを考えてみます。先ほど書いたように、着目すべき問題は2つ。

  • ものすごく複雑なものを、どうやって自然は組み立てたのか?

  • 組みあがった時に、生きて活動できる状態になっているのはなぜか?

この2つについて、以下の着想から、手がかりが見つけることができました。

複雑なものを自動的に作る方法は?

手がかりは、生態系です。
この記事の最初の方で、単細胞生物から現在の生態系まで進化・発展したことに触れました。この仕組み以外に、シンプルなものを放っておいたら、勝手に複雑で有機的に動作する、というものは知りません。なので、これが手がかりだと考えました。

また、人間社会や経済システムなども、誰に言われるでもなく、人々がいろんな活動や工夫をして進化・発展してきたものなので、生態系のようなものだと以前から考えていました。
なので、生物の生態系、人間社会の生態系的なもの、その上で機能している経済システムの生態系のようなもの、には共通点がありそうですし、しかも、最初の生物の生態系がなければ、後の生態系のようなものは登場しなかったわけですから、ここに運命の糸というか、そもそも全体としてひとつの大きな生態系の流れだと考えてもよさそう、とも考えていました。

ChatGPT4などのAIの話も考えると、おそらく、遠い未来のAIたちは、1つの大きなAIに統合されるのではなく、やっぱり、生物や人間社会と同じで、多様性を持って複雑に絡み合う生態系のようなものを形作っていくのだろうと想像を膨らませたりもしました。

そして、これらが一続きの大きな流れだとしたら、その出発点もまた、生態系的システムになっているのだろう。それが1つ目の問題に対する大きな手掛かりになります。

組みあがった時に活動している状態にするには?

通常、人間が作る複雑なもの、例えばロボットのようなものを考えた時、どうするでしょうか?部品を組み立てて、完成したらスイッチオンで、ロボットが動き出します。
でも、先ほど書いたように、細胞や生き物は、どうもそういうやり方ではダメなようです。つまり、生きたまま作り上げる、というような芸当が必要になりそうなのです。だとすると、完成した細胞も生きている必要がありますが、その部品となるものも、生命とまでは言えないまでも、何らかの生気のようなものを宿している必要があるのではないか、という観点でぼんやりと考え始めました、それが2つ目の問題に対する大きな手掛かりでした。

「システムモデル」を考えてみる

生態系的なシステムとは何かということを考えていきます。この時、生物の生態系にこだわりすぎず、人間社会の生態系なども思い浮かべます。

そもそも、システムとは何かという話からです。システムはいろんな場面でいろんな意味で使われる多義的な言葉ですが、ここでは、コンピュータで動く、ソフトウェアシステムに着目します。

ここでいうモデルというのは、システムの説明に使う図のようなものだと思ってください。簡単にいうと、システムモデルは、システムの構成要素の配置と、それらがどんなつながり方をしているかを表す図と、構成要素がどんな動きをするかを表す図の2つがあります。前者は、例えばサーバとスマホがインターネット経由でつながってますといったことを説明する図、後者は、スマホで検索ワードを入れたら、スマホから検索ワードがサーバに送られ、その後、サーバからスマホに検索結果が送られる、みたいなことを表す図です。

少し哲学めいたことを言うと、これは空間と時間を意識して分けて書いている、と言えます。
1つ目の図は、空間内で、サーバとスマホという2つのものが存在して、そこにインターネット経由での接続という関係がある、ということを表現できればいいので、基本的に時間の流れは意識せずに書けます。
2つ目の図は、今度は空間上の配置には意識せず、時間の流れに沿って、動きを表現するわけです。

生態系的なシステムも、空間と時間を持つシステムとして考える事ができますし、先ほどの2番目の問題の手がかりから、空間に登場するモノだけでなく、時間上で起きるコトにも着目しないと、生気のようなものを宿したまま細胞を組み立てることはできないのではないか。だとすれば、生態系的システムは、最初の最初のステップから、空間上のモノと時間上のコトが結びついていることを考えなければならないだろう。それが私の得た洞察でした。

有機物の世界

有機物の生態系的なシステムがあるとしたら、空間上のモノはなんでしょう。もちろん主役は有機物ですね。では時間上のコトとは何か? 有機物の化学反応です。一回の化学反応は一瞬の出来事かもしれません。幸い、有機物の化学反応は、連鎖的な反応を起こすこともあるので、反応連鎖というものを、時間上のコトと考えます。
ちょうど、こうしたことを少し前に「価値の森」という考え方で別の記事に整理したのですが、その中でループ構造に着目していました。有機物の化学反応にも、ループ構造はあり、一度反応がはじまるとしばらくくるくると同じ反応連鎖を繰り返す場合があるそうです。そうすると、より長い時間、反応が持続します。もしかすると、これがあるはずだと思っていた、生命の前に立ち現れる生気と呼べるものなのかも。そんな予感。

出発しましょう

私が考えているように、シンプルな有機物が時を経て複雑化し、やがて細胞が完成するのではないか、という考え方を化学進化説というそうですが、そこには「有機のスープ」という言葉が出てきます。
水たまりの中に、有機物が堆積することで、サラサラの水でなくとろりとしたスープのようなものができることがあったのではないか、そして、その「有機のスープ」の中で偶然に次ぐ偶然が重なって、やがて細胞に進化したのではないか、という考え方です。

このスープの中で、有機物が反応連鎖を繰り返し、最初のシンプルな有機物から、徐々に複雑な有機物ができあがり、最後には細胞になる、ということになるのではないか、と考えてみます。基本的な複数種類の有機物が、化学反応でくっつく。そうすると、いろんな組み合わせの、ちょっと大きな有機物ができてきます。そうすると、新しい有機物の登場によって、また新しいタイプの化学反応が起き、さらにいろんな組み合わせのさらに少し大きい有機物ができるでしょう。これが繰り返されれば、やがて細胞のような複雑な有機物群の組み合わせができるかもしれない。

でも、そんなことはないはずです。それだけの話で説明がつくなら、これまでの科学者たちが細胞を生み出したり、その手掛かりになるような、ある程度の大きさの有機物を作ることができたはずです。それができないということは、なにか、課題があるはずです。

有機のスープをかき混ぜよう

最初の最初は、いくつかの化学反応が発生しますが、すぐに、化学反応は止まって、有機のスープは安定してしまうのではないか、ということに思い至ります。なぜなら、有機のスープはほぼ均質なので、さまざまな種類の有機物が生まれる可能性はあっても、有機のスープ内で支配的な活動をする化学反応だけが主に発生し、他の可能性をつぶしてしまうためです。均質な環境だとイノベーションが起きない。

ではどうやって有機のスープの中に多様性を持ち込めばよいのか。そうです、他の有機のスープと交流すればよいのです。異文化交流、異業種交流、ダイバーシティ、ビジネスの世界と同じですね。そこにイノベーションが生まれるはず。

ひらめきましたね。有機のスープは一つではないのです。地球は水の惑星でありながら、陸地もあります。いろんなところに無数の水たまりがあるはずです。そして海で暖められた水は、雲になり雨になり川になり海に戻るという水の循環が常に発生しています。この地球環境の中で、多数の有機のスープは入り交じります。

生物の進化の歴史の話を少しします。大陸が移動しているのはよく知られていますが、そこで大陸がくっついたり離れたりすることで、生物の種の入り交じりが発生して、それが生物の進化に大きな意味を持ったという話を聞いたことがありました。きっと、同じように、有機のスープが入り交じることで、新しい有機物同士が出会い、1つのスープの中では起きなかった化学反応が起きることもあったはずです。

1つの有機のスープの中で、一瞬ですべての偶然が奇跡的なタイミングで発生したのだろう。そんな風にしか仮定できないとしたら、とても細胞なんて出来上がりっこないと思う人も多いでしょう。

でもどうでしょう。地球上のあらゆる場所の水たまりを使って無数の有機のスープが生まれ、偶然とはいえ、すこし大きくてすこし複雑な有機物ができることを繰り返し、時々、水の流れでスープが入り交じる。それを繰り返したら、一瞬の奇跡ではなく、偶然と偶然が積み重ねられていきます。運命のようなものを感じませんか? しかも地球の海と大地、すべてが必要だったなんて。

ここまでで、ほとんど下地は整いました。もう少しです。

3つのイノベーション

ここまで来ると、後は専門家の出番ですが、私なりにこの有機物の生態系的なシステムの中で起きた、3つの大きなイノベーションを見ていこうと思います。

①秀逸なリファクタリング

水の流れで、有機のスープが入り交じっていくと、やはり壁にぶつかります。化学反応がうまく連鎖するためには、スープの中に複数の有機物が一定の濃度とバランスで漂っている必要があります。それに、有機物が大きく複雑になると、壊れてしまいやすくなります。
そんな中で水の流れで他の有機のスープと入り交じったらどうなるでしょう。せっかく役に立つ化学反応の連鎖や、大きな有機物ができても、水の流れで濃度も変わり、ばらばらに壊れてしまったら元も子もありません。

ところで、リファクタリングという言葉をご存じでしょうか? ソフトウェアシステム開発の用語ですが、ここではイメージしやすいように、建物の建築で例えます。
建物を建てるときに、最初に何階建てにするかとか、何部屋にするか、エレベータはどこで、水道管はどこに通すか、そういったことを設計し、設計図が完成してから立て始めるのが一般的なやりかたです。
しかし、さまざまな事情があって、それをせずにいきなり建物を建てることもあるでしょう。そうすると、小さな建物なら良いですが、大きくて複雑な建物だと、既に部分的に作った後で、問題が見つかって、その問題を回避するために、穴をあけたり、建て増ししたりを繰り返す羽目になります。
そうして出来上がった建物は、複雑怪奇な迷宮のようになり、建物のメンテナンスも、ちょっとした改良も難しい状態になってきます。

ソフトウェアシステム開発でも同じようなことが起きます。しかし、ソフトウェアなら頑張れば作り直しが可能です。その頑張って作り直すときに、今のソフトウェアの機能を変えずに、区画を作って基本となる構成(アーキテクチャ)を整理する作業を、リファクタリング、と言います。こうすることで、将来、あたらしい機能を追加してより高機能なシステムを作りやすくするのです。

そうです、有機のスープたちにもリファクタリングをしてあげる時が来ました。区画を作るのです。有機のスープを区画に分けるために、膜で包んであげましょう。
数年前に、生命の誕生に関わる研究として、膜が生成されることについて新しい発見があったという記事を見かけた覚えがあります。どうやら、膜は作れそうです。

水たまりの中の有機のスープを膜で包むと、複数の有機物の濃度やバランスは保ったままにできます。また、その中に複雑で大きな有機物があっても、膜のおかげで壊れにくくなります。その状態で、雨が降れば、膜に包まれた有機のスープは、その濃度やバランスと小さな有機や大きな有機物を保ったまま、遠くの水たまりまで広がることができます。

こうして、水たまりの中には、多種多様な有機のスープが膜に包まれて共存できるようになりました。秀逸なリファクタリングが、画期的なイノベーションとなったのです。

②世紀の大発明

最近のソフトウェアシステムに関連した大発明は、と問われたら、人によって意見は分かれるとは思いますが、なんといってもビットコインです。
ソフトウェアやデータの世界は、同じものを正確にコピーすることができるのが便利なところですが、誰にもこのコピーをさせないようにする方法はありません。このため、世界通貨のようなものをソフトウェアとデータで作るのは不可能と考えられてきました。たとえ一般の人がコピーできないような仕掛けは実現できても、そのシステムを管理している人にはコピーできてしまいます。お金の世界は信用の世界です。システムの裏でコピーされてしまうかもしれない世界通貨を、誰が使いたいでしょうか?
しかしご存じの通り、ビットコインは作られました。すごい。その仕組みもちょっと勉強しましたが、脱帽です。私が一番尊敬している技術者です。会えるものならお話してみたいものです。

さて、有機のスープの世界にも世紀の大発明がありますね。遺伝子です。自分自身をコピーしてしまう有機物です。これができたことで、今までは全ての有機物は、その誕生にほかの有機物の手を借りる必要がありました。しかし、遺伝子なら自分自身をコピーできます。これにより、ネズミ算式に、時間と共に倍、倍とあっという間に増殖できるようになりました。

ビットコインはコピーが簡単なものをコピーできなくし、遺伝子はコピーできなかったものをコピーできるようにしたわけです。

さあ、これでパズルのピースはそろいました。

③創発、そして新たな時代の始まり

さっそく遺伝子を膜に包みましょう。はい、これで細胞が完成しました。
長い旅でした。そして、ここからは細胞による生命の生態系の時代が幕をあけました。ここから先は、みなさんもご存じの通りのストーリーですね。

さいごに

世の中には、最初はシンプルなモノとコトの集まりだったはずだったのに、時間と共に複雑で多様で豊かな大きなものに成長していく、まさに生態系のような仕組みが、他にもみられます。
ここで見た有機物や生物の他、社会、経済などもそうでしょう。
学問や芸術といった分野も、知識や作品が複雑で多様な豊かさをみせてくれていますので、もしかしたら同じような側面があるかもしれません。
いろいろな分野の専門家の方が、この生態系的なシステムという視点から見つめなおしてみたら、いろいろなところで新しい発見がみつかるかもしれません。
下の記事に、この視点で考える際に、思考方法(思考のフレームワーク)として使っていただけるよう、生態系的システムを一般化してまとめています。ご興味があれば、ぜひ、お試しください。

また、有機物から細胞の誕生までの流れを上の記事の思考のフレームワークを使ってまとめたものが、下の記事です。今回の記事には書いていないですが、自分なりにこれまでこの仮説が語られることがなかった理由なども、自分なりに考えたことなども記載していますので、ご興味があれば是非。

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