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風の思い出

入院した時はまだ街の人も冬用コートで外出していたけど、天気予報を見ると今日の新宿の気温は20℃を超えていた。

病院の中の気温はいつも一定で、今はコロナ禍だから入院病棟からの外出も制限されている。

唯一電話ができるロビーで顔なじみの入院患者が会話している。

「明日退院するんです。また、3か月後にお世話になります。」

想像だけでは追いつけない大変さが彼女にはきっとあるんだろうけど、車いすで移動しながら明るく友達と話す姿が印象に残った。

「生きてい"く"大変さ」と「生きてい"る"大変さ」は似ているようで違う。

病気でも幸せそうに過ごしている人もいれば、健康で富や名声があっても自殺してしまう人がいる。

生きていくことは大変かもしれない。人それぞれだけど。
生きていることは大変だ。何が起こるかわからない人生では、誰にとっても。

人間は皆、大変な存在だ。
だからこそ思いがけない力を生み出せるのかもしれない。

窓の夕日から今はまだ感じることのできない春の風に思いを馳せながら、そんなことを考えた。

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