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拝啓・僕を気にかけてくれたあなたへ

拝啓

今年も早いもので、慌ただしい年の瀬を迎えようとしています。

いかがお過ごしでしょうか。

私にはあなたと出会った夏の日が、つい昨日のように思えてなりません。

その節は大変お世話になりました。
あなたと出会えた感謝を手紙に綴らせていただきます。


あなたと初めてまともに会話をしたのは某スクール卒業の日。
スクールの参加者たちで、1か月間の労いと新たな門出を祝った日。

それは卒業パーティーが終わった後の海辺。
浜風が吹き乱れ、夏にしては少し肌寒い夜のこと。焚火にあたっているときでした。


開口一番、あなたが僕に問いかけたこと、覚えていますか?



「くりす君は何を探しているの?」



そのときの僕は逃げきれなかった諦めの気持ちと、ほんの少しの期待感を持ってこう答えました。


「……え?探している?どういうことですか?笑」


少し浮き気味だった僕を気にかけてくれる人。
明るい人柄の中に、不思議なオーラを纏った人。

あなたにはそんな印象を抱いていました。


そんなあなたはスクール中ずっと

「くりす君とは考え方が似ている気がするから話したい」

と言ってくれてました。

スクール生同士の印象を話すワークのとき。
発表後のフィードバックのときなど。


しかし、社交辞令的でない会話は最終日まで実現することはありませんでした。

なぜなら、対話をしたくない僕はとにかく隙を見せないよう、常に警戒心を持っていたから。

正確には、「さらけ出す方法が分からなかった」ことも含めて、「自分をさらけ出すことが怖かった」のだと思います。

自分のことは自分が一番わかっているという自負があり、
「会話をしてしまうときっと薄っぺらい自分に気づかれてしまう」
という恐れがありました。


僕は不自然にならないよう、あなたをずっと避けていました。


だからこそ、最終日に冒頭の問いかけを受けたときも、


「……え?探してる?どういうことですか?笑」


あのときの僕は笑ってごまかして。

あなたに自分の嫌いな自分を見透かされることを恐れ、とっさに壁を作りました。

ありきたりな言葉を言い放った直後は、ほっといてほしいような、だけど見放してほしくないような不思議な感情でした。


「…いや、なんか。確かに質問が悪かったね」


そう言ってにっこり笑ったあなたの表情は、暗がりでよく見えなかったけれど、確かな温かみが伝わってきて。

「ああ、大丈夫だ」と安心しました。


なぜそう思ったのかは分からないけど。
全て本音で話せたかと聞かれると怪しいけれど。
なんなら、何を話したかさえもうろ覚えだけど。

「この期間はどうだった?」「これからどうなりたいの?」

これまでのこと、スクール期間のこと、これからのこと。

苦しみも悩みも、あなたはただ淡々と聞いてくださったことだけは覚えています。


「”本音を語る”ってとても難しく、とても怖いことだけど、すごく大切で温かいことなのだ」

このときの安心感は今でも心に刻まれています。

あのとき、もしもあなたが根気強く接してくれていなければ、本音を語ることを恐れたままだったかもしれません。


その節は大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。



「何を探しているの?」


早いもので、あの問いから3カ月が経ちました。

まさかアドレスホッパーとして、日本各地を転々とするとは思わなかったでしょう。自分でも思ってもみませんでした。


当時、何かを探しているつもりはなかったのですが、今ならあなたの目に映った探し物の正体が分かります。

あのときの僕は無意識のうちに「自分がいても良い場所」と「自分が自分らしくいられる場所」を探していたのだと思います。


あれから自分なりに将来と向き合い、行動をおこしてきたつもりです。

だけど色んな地域に行く中で、色んなコミュニティーにお邪魔する中で、どこに行ってもイマイチしっくりこなくて気づきました。

自分が自分らしくいられる場所なんて大抵なくて、

”自分の居場所は自分で創らなきゃいけない”
”傷つくことを恐れず、自分をさらけ出す覚悟が必要なのだ” と。



だからきっと、これからの生活でも、
「何か」を探しているように映るでしょう。

だけど自分の中で答えは明瞭で、

「どうすれば、自分が自分らしくいられるのか」

を模索し続けるのだと思います。


これからも悩みや心配事は絶えないだろうけど。
確実に前へ進んでいきます。

ゆっくりかもしれないけれど、確かに成長していきます。



「どんな人生を歩むのか見守りたい」

正直なところ、あなたが言ってくれた言葉は本音だったのか、今でも信じきれてはいません。

全員を気にかけていたことも知っているし、「傲慢だ」と言われれば間違いないですね笑


だけど、あなたの言葉に救われたのは紛れもない事実です。


いつか、

「そんなこともあったね」なんて。

あの日のことを、この文章さえも。
あなたと笑って話せる日が来ることを願って。

その日を目指して進み続けます。


ps.
それでもやっぱり、僕とあなたが似てるとは思いません。
あなたは自分が思っているよりも強く優しく、まっすぐな人物です。

敬具


協賛「想いを伝えるギフトカレー『Letter』」



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