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山読書 「青春を山に賭けて」 植村直己

"なんとなく地球の上をウロウロしているうちに、モン・ブラン、キリマンジャロ、アコンカグアと三大陸の最高峰に登ってしまった"

これは、冒険家 植村直己さんの著書「青春を山に賭けて」の一節。
私が書くとしたら、
「なんとなく札幌をウロウロしているうちに、近所の山に登ってしまった」になるのかな。

植村さんが上げた三つの山のうち、一番低いモン・ブランでも4,807m。私の登山は高くても1,000mちょっとの日帰り登山。技術、経験、それに熱意、どれも比べようもないけれど、植村さんの一言一言に「そうそう、私はこういうことに向き合うために山に登っているのだ」と気づく。

植村さんは1941年生まれの冒険家。この本は、彼が世界で初めて五大陸最高峰登頂を達成後、29歳のときに書かれた本。1984年、植村さんはマッキンリー冬期単独登頂後に消息を絶った。享年43歳。今も生きていたら78歳。

植村さんは、大学山岳部で山の魅力にとりつかれ、大学卒業後、世界の様々な山に登っていく。日本人初のエベレスト登頂が一番有名だけれど、ただ「この山に登った!」という事実だけではなく、そこに至るプロセスに彼らしさを知る。植村さんは、植村さんでい続けるためにひとりで山に登っていたのだと思う。

フランスのスキー場で働いているとき、大学山岳部からゴジュンバ・カン (7,646m、ヒマラヤ) 遠征の打診を受ける。そして、途中から参加することになる。見事アタック隊として 登頂に成功するが、彼は手放しでは喜べない。なぜなら、計画や準備自体は、東京にいるメンバーが苦労して進めてくれたことだったから。それに、百五十人のポーターを連れて、大名行列のような遠征も彼には合わなかった。
ひとりで準備し、ひとりで登ることが彼にとっての登山だった。
その後、彼は世界の山々での単独登山を積み重ねていく。

私は、ケニヤ山の話が一番好きだ。

出発前日の、クラブで知り合った女の子との一夜の恋。
出発前の興奮から普段は飲まないお酒を煽り、現地の女の子とも仲良くなる。一夜を過ごすが、翌朝、結婚を迫られ、逃げるように山に向かう。そのくせ山行中も、ときおりその子のことを思い出したりしている。冒険家らしくもあるけど、男子高生みたいな恋愛をしている。

現地ガイドの男の子とケニヤ山に行くまでの冒険。
ケニヤ山までの密林地帯には象や豹など獰猛な動物がいて、たった二人での通行は危険だと脅される。しかし、恐怖に怯えながらもガイドのジョン君との二人の旅は楽しそう。体調を崩したジョン君を植村さんが看病したり、ジョン君の部族の歌を一緒に歌ったり。死の恐怖の中でも彼らの生があることを強く感じる。

そして、鮮やかに変化する景色。
獰猛な動物の潜むサバンナ。山頂での氷河の白い世界。下山後の緑と湖の穏やかな風景。

ただ登るだけじゃない登山。たくさんの思い出が詰まった登山。

”どんな小さな登山でも、自分で計画し、準備し、ひとりで行動する。これこそ本当に満足のいく登山ではないかと思ったのだ”

私は山をとても好きだけど、そもそも登った山も少ないし、知っている山も少ないし、花の名前も全然覚えられない。山に対して「もっと頑張らななくちゃ!」と思うときもある。けれど、褒められたり、認められたりするために山を登っているわけじゃない。自分が楽しいと思える登山をずっと続けていられたらいいな、と思う。

写真は私が大好きな山、札幌岳から見える羊蹄山です。


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