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note小説 三十路のオレ、がん患者

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毎週月曜更新の小説。30代の会社解雇された「オレ」がガンになり、患者視点から描いていく
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2016年3月の記事一覧

note小説 三十路のオレ、がん患者   第9回 手術を終えて

note小説 三十路のオレ、がん患者   第9回 手術を終えて

意識が戻った。

多分、意識が戻る直前に夢みたいなものを見ていた。
目が覚めた瞬間、忘却の彼方に消えてしまったが。

目が開いた時、ドラマや映画と同じ光景だった。

嗚呼、そう言えば手術だったんだなと記憶が蘇って来た。

辺りを見回すと、叔父が視界に飛び込んで来た。

思わず「あれ?」と声が出る。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第8回 手術

note小説 三十路のオレ、がん患者   第8回 手術

手術の朝。

ドキドキして眠れないのかと思ったら隣のベッドの奴のイビキで眠れなかった。
大事な日の前夜がどこのどいつかもわからない奴のイビキで睡眠妨害をされるとは。

布一枚でしか仕切ってないと、こうなる。
当たり外れで言えば、完全に外れ。

何となくボワーンと目が覚めた。
会社員してた時と同じだ。

そのせいか緊張を全然してない。
もっとガチガチになると思っていた。

考えてみれば麻酔をされ意識

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第7回 手術前夜まで

note小説 三十路のオレ、がん患者   第7回 手術前夜まで

入院は生活に制限が加えられるのに暇で困る。

窓の桜も散り始め、根元に咲く菜の花が優しく見える。

世間では新年度で新学期だ。

オレは世間から隔絶されてメスを入れられると言うのに、世間では新入生や新入社員が入学して出会いを求める先輩や同期が物色している時期だろう。

実際にオレもしていた。
どうなったという事ではないが、物色自体を楽しんでいたのかもしれない。

その天罰なのかわからないが、入院病

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