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てっさいのショートストーリー

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てっさいのショートショートなどをまとめています。 オチのある話が多めです。
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#ショートストーリー

酒や夜空や君のパジャマ姿

颯太は一升瓶を片手に裸足で雪の積もった道を歩いている。焼酎をラッパ飲みしては「死にたい。…

てっさい
3年前
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ショートストーリー『私が引きこもる本当の理由』

引き篭もりになってもうそろそろ一年が経つだろうか。両親の庇護の下で暮らしている私はニート…

てっさい
3年前
8

ショートストーリー『窓のジンクス』

加藤小太郎(こたろう)という友がいる。私は彼にそれほどの好感を持っていないのだが彼にとって…

てっさい
3年前
8

ショートストーリー『禁断の山』

 切り立った銀色の山には決して近づいてはならない。  そう言い聞かされて育ってきたが、男…

てっさい
3年前
3

ショートストーリー『少し進んだ景色を見るあなたへ』

水晶が散りばめられたような寒い朝だった。私はマフラーを巻きなおして、白い息を吐いた。向か…

てっさい
3年前
1

ショートストーリー『ブリーフマフラー』

僕には冬になるたびに思い出すことがある。あれは五年前のことで初雪が薄っすら降っては消えて…

てっさい
3年前
3

ショートストーリー『何と親父は戦っていたのか』

親父が何の仕事をしているのか僕はまるで知らなかった。親父はいつも酒臭くて、たまに正気に戻ると僕に延々と小言を言う。そんな印象しか僕にはなかった。 お母さんがいればなと僕はいつも思っていた。親父は世間一般で言うと駄目親父だろう。親父は自分では面倒を見切れないと思ったのか、僕が四歳の頃から、親父の弟夫婦が僕の家に住んで僕の面倒を見ていた。母は僕が三歳のときに亡くなっているので、僕と父の二人暮らしは一年間だけだった。 親父は仕事をしていなかったのかもしれない。僕が学校から帰ると

ショートストーリー『死にたい君と何もない僕』

 友は一升瓶を片手に、素足で雪の積もった道を歩いている。 「死にたい。俺は死にたいんだ」…

てっさい
3年前
7

ショートストーリー『片手ちがい』

どうして、指が五本だと決め付けるんだい。確かに、今の主流は五本かもしれない。多くの人は五…

てっさい
3年前
8

ショートストーリー『一か月も学校を休んだわけ』

一ヶ月も学校を休んでいると、久しぶりに登校したときの友達の反応は実に寂しいものがある。 …

てっさい
3年前
3

ショートストーリー『チーズが苦手な理由』

舌バカで何でもうめえうめえと食べる俺だが食べられないものももちろんあって、その食材には苦…

てっさい
3年前

ショートストーリー『雨と果たし状』

雨がもたらしてくれるのは生命の源だけではなく時にはロマンチックであったり恋であったりする…

てっさい
3年前
2

ショートストーリー『サービス業のつらいところ』

「先輩、自分ではもう対処できません」  新人の山本は、浜田の姿を見るなりそう言ってきた。 …

てっさい
3年前
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ショートストーリー『イチゴの見る景色』

イチゴは窓の外を見ていた。アスファルトに薄汚れたビルが建ち並んでいる。 チャイムの音がしたので、ゆっくりと立ち上がり玄関に足を運んだ。ドアを開けるとドクターがいた。イチゴは今日が年に一度の診察日だったことに気が付く。 「今のご時世、窓から外を見ても面白くないでしょう」 ドクターはそう言いながらカバンから診察道具を取り出していた。 「私の若い頃はたまに鳥などが飛んでいる姿が見えたが今はさっぱりだ。ビルが変わらずそこにある。でも私は窓から外を見るのが好きなんだ」   イチ