ショートストーリー『一か月も学校を休んだわけ』
一ヶ月も学校を休んでいると、久しぶりに登校したときの友達の反応は実に寂しいものがある。
「あれ? ああ、そう言えば同じクラスやったな」
「てっきり登校拒否してるんかと思ったわ」
「え? 休んでたの?」
などなど本人は素直な気持ちを言っているのだろうが、気遣いを持たない小学生の言葉は時に刀鍛冶の職人技を思わせるほど良く切れる。もう少し心配してくれてもいいのではないか。もしかしたら言っていた奴らは冗談のつもりだったのかもしれないが私は傷ついたよね。
まあ、今回はなぜ一ヶ月も学校を休んだのかを話したいと思う。簡単に言うと風邪で休んでいたわけだが健康な小学生が普通の風邪で一ヶ月も休むことはない。そこにはもちろん理由があり、人間の愚かさ(特に母)がある。
ある朝に起きると熱っぽく小学生だった私は、熱があったらラッキーだな、学校を休んでゲームでもしようと思い、ワクワクしながら体温計をわきに挟み小芝居で咳などをしていた。見事に体温は三十七度四分という微妙に休ませてもらえる数値を叩きだし、よし何のゲームをやろう、桃の缶詰を買ってきてもらおう、あいつらが勉強している間にユーチューブが見れるぞ、なんて思っていた。
軽い風邪ということで母が買い物に行っている間に桃缶とプリンを楽しみにしながら布団に包まりゲームを始めた。昼から飲む酒が大人の楽しみならば子供の楽しみは学校を休んでするゲームとなるだろう。
私はゲームに夢中になり帰ってきた母にちゃんと寝てなさいと怒られ、昼食にラーメンを作ってもらい、それを食べると母が買ってきた薬を飲んだ。
風邪薬には睡眠作用があるなんてことは大人になった今だと常識だが、子供のころは知らなかった。そのため、なんか眠たくなったな、寝ようと単純に物事を考えてぐっすりと寝ていた。
朝食を食べて薬を飲んで寝る。昼食を食べて薬を飲んで寝る。晩飯を食べて薬を飲んで寝る。こんな生活を驚くべきことだが二週間もしていたのである。今考えてもこの時期の私は人間としてまるで機能していなく、まるでモルモットのようだった。
初めこんなに眠くなるのはけっこうヤバイ風邪に掛かっているからだと思い素直に寝ていた。しかし、さすがに何かがおかしいとある朝、朦朧とした意識の中で思った。これは薬のせいで眠たいのではないかなと二週間も掛かって気がついたのだ。そして私は飲んでいた薬の効用を読んでみた。睡眠作用のある普通の風邪薬である。やっぱり睡眠作用があるのかなどと思ったものだ。
それはいい。 それはいいんです、別に。
風邪引いていましたし風邪薬を飲むのは別に普通です。
正し一日三錠飲む薬を毎食後三錠飲ますのはいかがかと思うんです。
薬の副作用を調べているんじゃないのですよ、お母さん。
息子を殺す気ですか?
と言うわけで自力で寝たきりの状態を脱した私は薬を飲まなければ眠くなることもなく全快した。
ここまで読んで、気がついた人がいるかも知れない。あれ? 一ヶ月休んでいたのに二週間分の話しかしていないぞと。大丈夫、続きはちゃんとある。
全快祝いとして、母が何でも好きな物をリクエストして良いよと言うので、私は大好物の生牡蠣が食べたいと言った。
その生牡蠣はあたり、それはまさに現世に舞い降りた地獄で二週間腹痛に悩まされ転げまわっていた。全快祝いが闘病生活の後半戦の始まりと言うのが何とも皮肉なもので、まあ、そんなわけで一ヶ月も学校を休んだのである。
『こんな話なのに実話です』
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