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知床のような悲劇が次に起こりうる場所

先ず、今回の遊覧船事故で被害に遭われた方、その遺族やご関係者の方々には深い哀悼の意を表し、未だ行方が分からない方の一刻も早い発見を願います。

しかし、おそらく、この事故の本当の原因というのは分からないまま(暴かれないまま)になるだろうと思うので、次の悲劇を生まないためにも、以下の文章を記そうと思う。

まず第一に、この事故を引き起こした社長について、様々な報道がされているが、その中でも「地元の事業者は何度もその危険な行動(判断)を指摘していた」というのがある。ではその指摘がなぜ活かされなかった(その社長が無視していた)のかを想像したい。

他の報道では、この社長が他の宿泊施設なども複数手掛ける大きな規模の会社の社長であったことなどを報じている(内情は大変だったというが)。

ここに、二つの疑問が出てくる

① 観光船の同業他社は再三安全面の不備などを指摘していたというが、それは行政などに届いていたのか。

②また、行政はそれをどう対応したのか。

ということだ。


他の方々も指摘をしているが、今回の事故によって、こういった観光遊覧船の安全管理や船の整備などのチェックは相当厳しくなるだろう。

上記のTwitterのような声は日増しに高くなるだろう。ただ残念ながら、取り締まりが厳しくなればなるほど、実際としては廃業する業者が続出するだろう。もちろん、普段から安全面がおろそかな業者に生き延びてほしいとは毛頭思わない。ただ、ほとんどの事業者は日々しっかりとやっている(100%ではないかもしれないが、今回の知床の事件よりははるかにましである)のに、取り締まりと設備チェックや、おそらく船そのものの更新やチェックなどの金額負担が課せられる。コロナのダメージもあり、ただでさえぎりぎりで耐え忍んできた小さな事業者はもう船を諦めるしかないだろう。

さて、①の話に戻る。
地元の事業者の声は、本当に社長の耳に届いていたのか。おそらく、指摘していた他の人たちも「桂田社長は聞く耳を持たない」というのは分かっていたであろう。その理由は、そもそも東京から帰ってきた、地元の権力者の息子が羽振りよくやっていることを斜に構えながら見つつ、陰口を言うていたのだろう。

しかし、もし事故が起こってしまえば(本当に起きてしまったわけだが)、知床観光全体の大打撃になるだけでなく、その後も自分の事業(観光船)の締め付けが厳しくなることも想像できた人もいるはずだ。なのに、「陰口」だけで済ませていたのだろうか。

となると、②の話になる。

しかし、これは想像だが、地元の行政がその「危険性の指摘」を聞いていたとしても、そういった指導等を桂田社長にするということはまずできなかったであろう。

なにせ、地方では
地元の中小事業者の多く << 行政 << 地元市議など政治家 << (地元選出の国会議員はたいていこのへん) < 地元のボス役市議の政治家・企業社長 ≦ (国会で結構力を持つ国会議員)
という構図が多い。


この桂田社長も、もし行政からなんらか指導的なことを言われたとしても逆に怒鳴り返せるくらいの人だろう(「知床の観光業を俺が担っているというのに!」くらいは言うだろう)し、もしかしたら地元の行政の担当者も怖くて『首に鈴をつけに行くことができない』状態だったのかもしれない。

今回の事故では、
(1)行政がその『首に鈴をつけに行く』ことをしたくてもできない状態であったのか(しに行こうとして何らかの圧力があったのか)。
(2)もしくは、地元のほか観光船の業者も実は程度はひどくないにしろ不備があったりで、事故が起きてから桂田社長の事を言うているのか
(だから、他の観光船の事業社も、地元の行政などに『もっと安全チェックを厳しくしてほしい』というと自分に跳ね返るので、「あそこよりうちの会社はまし」などの陰口レベルで終わっていたかもしれない)

くらいまでしっかり検証するべきだと考える。

桂田社長はもちろんこれから大きな責めを負っていくが、根本的解決をしない限り、知床地域全体として安全面、地域全体での観光振興をするときに大きな負の資産となるだろう。

それだけでなく、全国各地の観覧船遊覧船定期航路の船業者に対しても大きな負担となるかもしれない(もちろん、文書管理だけの「安全指導」と称する行政チェックの多くは見直されることだと思うが、海の事業者同士の相互監視でどうにかなる時代ではない。地域によっては、島との航路はもう小さな事業者が一つだけしか残っていない、というところはたくさんある)。

※5/2追記
どうやら、くだんの会社は昨年夏に2回の当該行政課からの「指導」を受けていたというが、それでも直さなかったということは、むしろこの文章の想定を裏付けるものかもしれない。2回の指導に従わなかったということは、社長が行政を無視していたということだ。その「無視した」心理、行動の理由(普段から行政より自分の方が立場が上だと思っていたなど)を明確にしなければ、こういった事態は再発する。

ただ、次に知床のような悲劇が起こりうる場所は、小さな事業者が細々とやっているところというより、ある程度の知名度がある地方で観光業が盛んだが、地元で桂田社長のような『鈴をつけることができない』事業者が幅を利かせていて、他事業者も行政も市民も誰も言い出さないところだろう。
しかし、そういった「闇に包まれた」地域では、決して若い人も移住してこない、定着しない。またそこで新しい事業などを行おうという人も現れない。そのまま地域はじり貧となるだろう。

そういった闇の体質を切り捨てて、指摘すべきところは市民もちゃんと巻き込んでしっかりと声を上げてあるべき方向に投資したりできるか。地方創生の実践者として活躍されている木下氏はこう指摘する。

しかし、こういう危険な企業をどう取り除いていくか、もしくは改心していけるかというと、実効的な手段があまりないことも悩みの種ではある。カギとしては銀行や国の機関なのだろうが。。。

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