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失敗する学生起業家の特徴とは

つい先日、とある起業家が大失敗するのをこの目で見てしまった。私が支援しているとあるNPO法人とともに仕事をしようとしている矢先に、自らの責任で失敗をしてしまい、おそらく結構な致命傷(会社としては存続できないのではないかという意味で)になるかと思う。

学生のうちから起業を試みて、大学卒業あるいは卒業前から起業してその会社で成長のために邁進する若者はどんどん増えている。それ自体は素晴らしいことだし、これからの日本の経済でどんどん活躍してほしい。

ただ、活躍するためにはいくつかのハードルがあることを知らない。そのために、多くの若い起業家が壁にぶち当たり、そのまま消滅するということも何度も見てきた。

以前このような記事も書いたが、この場合は「成長したのち、おかしくなる」ことが中心として書いたが、今回は「成長すらできずフェードアウトする」起業の特徴である。


① 商流というものを知らない

どんな会社であれ、サービスを提供して対価をもらうということが基本である。そして、サービスを提供する「お客様」をどう獲得するかが大切で、例えば、銀行や商工会などの経済団体から紹介してもらえることもあるし、友人知人から紹介されることもあるし、大きな企業から紹介してもらえることもある。

ただし、この「紹介」というのはいろいろなパターンがある。大手企業からお客様を紹介されてお話をして成約になりそうだ、、、、というときに、その大手企業から「紹介料」を要求されたり、大手企業のアンダーとしての仕事だよ?ということが発生する。

一般的に商流とは、「商的流通」の略で、生産者(サービス元)による生産から消費活動までの一連の流れで、商品の所有権を移転していく売買活動の流れをさす。

なので、例えば100万円の商品をお客様が見つかって喜んでいたけど、その仲介者に10%~30%とかを払う必要が出てくる。そのあたりを明確にしないまま、いい案件が紹介されたと飛び込んでいって、仲介手数料などの条件を突きつけられて泡を吹く事業者もいる。そのあたりを大手企業など、紹介者としっかり話をしてから取り組む必要性があることを知らないまま起業する人も多い。また、大手企業に限らず、若い起業家がいてそのサービスが優れたものだとわかると、紹介するよ!と称して自分が高い手数料を取り(もしくは、その起業家に対して○○円なら先方その商品買うといっているよ!)などというて、口座貸しという名目で高い利益を獲る手法もある。

最近だと前者はだいぶ減ってきているような気がする(ただし業界によっては根強い)が、後者のような人はビジネス交流会やらビジネスマッチング会をやたら主催する団体や社長に多いので気を付ける方がいい。巷にあふれるビジネス交流会すべてが悪だとは言わないが、悪い人が非常に多いのは昔からなのだ。せめて、どんな人は悪い人だということを見抜く目を養ってから起業するのも決して悪くない。

後者のような会社・経営者は、やたら人脈を吹聴したり、学生や大学や公的機関(官僚とか政治家も含む)とのネットワークがあることを自慢する。こういう輩には本当に注意した方がいい。学生はまだしも、公的機関とのネットワークは最後の最後で示したり使うものだ。使いすぎるとむしろその公的機関からNGを突きつけられる。私の知り合いで食品関係でちょっと有名な会社も、いろいろ取引先とやらかしすぎた上に「行政からの委託」みたいな言葉を振りかざしすぎて、地元の行政や金融機関などから一切相手にされなくなっている。地域密着型の企業と言いつつ地銀から相手にされないことはどういう状況か推して知るべしである。


② 分をわきまえない

今回のケースはこれだったのだが、「学生時代華やかな活動をしていた」人に多い気がする。

すなわち、学生時代注目されたので社会人になっても自分の会社は注目され、これからどんどん成長すると思い込み、あとで破滅を招くパターンである。

具体的にいうと、以下の通りだ。

学生時代とある大学(Kとする)の中でプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングや企業協賛で(表面的には)成功し、そのまま起業した会社(Aとする)があった。大きな会社(Bとする)からその活動を注目され、とある大きなプロジェクト(3日間の展示イベント)に参加してほしいといわれた。ただ、そのためには装飾物や場所のお金もヒューマンパワーも必要で、当然Aにその力はないので、AとBで、つながりのあるCという大きな会社(会長が冒頭に述べたNPOの理事長を兼ねる)にお願いをした。

結果、そのプロジェクトにCおよびNPO法人が参画し、その一部の業務をAが行っていくということで口頭で合意をしたのだが、その後あたかもこのA社が「C社のプロジェクトの全体統括」であるかのようなふるまいをBに対してするようになり、Bから本来Cに直接連絡するべき様々なメールがAのところに行き、しかも一部はそこで止まっていることが発覚した。そのためC社は激おこぷんぷん丸となり、A社はこのプロジェクトから除外されることとなった。

まあ、これだけ書くと、C社が大人げない、B社も悪いのではないかという話も出てきそうだが、このA社がCに対して出した企画書はお話にならない低レベルで、C社がお金を出すのにC社のメリットになるような話が一つもないことが最大の問題であった。ちなみにA社がなぜBに呼ばれたかというと、単純な話でそのプロジェクトの注目度を集めたいからである。学生などとのネットワークもほしいということだろう。しかし、そのA社が学生それぞれと何か契約をしている話でもない。なんなら、C社の最高責任者もそのK大学出身で、大学に対する影響力はC社の方が圧倒的にあり、学生をタダ働きさせないくらいの余裕もある(A社は先輩後輩ということでそのプロジェクトに学生をタダで参加させるつもりであった)。あえて言えば、Bという会社がAを誘った以上、そしてA社にはプロジェクト遂行能力が余りない以上、C社をしっかりと立てて、そのうえでA社の力を引き出すというマネジメントをするべきだったと思う。


③ プライシングの問題

こういうAみたいな会社は、起業してもすぐにお客様がいるわけでもないのに、分不相応なプロジェクトに乗り出してしまい、結果全く収入にならなくて失敗する。また、自分がどの事業でどれだけ企業に対して価値を提供でき、その対価としていくらお金がもらえるかをわかっていない。

何かのモノというサービスであれば原価もあるので値段は明確にしやすいが、それでも多くの会社が相場とかけ離れた値段設定をしてしまい売れずに困っている。また、無形のサービスや「コンサルティング」については全く相場観が分かっていないことがほとんどだ。1つのプロジェクトで数百万円のお金が動くコンサルティングもあるが、それはそもそもそれだけの価値(分析など)があるからである。コンサル安く請け負って、そのままであなた5年後会社とか存続できると思う、、、?というようなものもあるが(たまに追い込まれた中年のコンサル企業が価格破壊するが、それとは違う意味でたちが悪い)。

今回に関しては、「とある活動をしている学生たちのネットワークを紹介する」というだけの価値であり、それなら別にA社でなくても学生たちに直接話をしたらいいだけである(その学生たちも一応インカレサークルという組織を持っている)。学生のとりまとめをしてB社の希望に沿うプロジェクトができるとして、3日間の展示イベントでどれだけの費用をC社に請求できるか。またその学生がいることによってC社にどれだけの効果があるかもしくはB社からお金をもらえるだけのレベルのものが提供できるかということがまるでできていない状況であった(仕方ないのでいまA社の拙い企画に代わって、C社が主体かつ学生の団体がコラボレーションということでその展示会でどのようなメリットが出て、winwinになるような企画を私が考えている最中である。展示会の図面とか久しぶりに引いている)。

C社が最終的にA社を除外したのも、A社が請求した金額もあまりにも不透明であまりにも高すぎる上に、何らメリットがC社に発生しないということで不信感が高まっている矢先に、前述の振る舞いが発覚したところが原因だ。


起業というのは自分一人であたらしい商売を切り開いていくことであるが、何もかも自分がルールメイキングをできるわけではない。既存の商流、取引先との力関係、順序、相場観、、、そういうものを理解し、その中で成長していくものである。

大きな会社である程度働くと、そういった商流について理解し(時には、バックマージンとか戻入金とか、あまりよろしくない商習慣も知ってしまう)、力関係を理解し、先に商談していたのに後から出てきてかっさらう会社に怒りを感じ、大体のサービスと相場を学ぶことができる。ただ、長く勤めすぎるとよろしくない商習慣に自身も慣れてしまったり、力のある会社にいることで安住してしまったりもしてしまう。

学生のうちに新しいサービスをどんどん考えることは良い。しかし、それがどのようにすればビジネスとして、企業として成り立つのかを学ぶために就職してみるということも選択肢の一つである。願わくば、学生時代に寄ってっ来る怪しいコンサルタントまがいの人にだけは騙されてほしくないのだが、どこまでそれを大学が介在・介入するかは難しい問題である。

追記


https://twitter.com/kissmetk/status/1433284409801674755?s=21


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