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日本の第一次産業を守るためには

それは、国産の野菜や魚やお肉を、今以上の値段で買えばいいのです。


なぜ農業に後継者がいないか、できにくいかといえば、儲からないからだ。儲かって、楽しい産業であれば自然と後継者というか、「やりたい」という人は後を絶たないはずである。

もちろん、農業とはいえ企業であるから、儲かるための自身の努力は必要である。しかし、それ以上に消費者側、マーケット側からの価格要望が安ければ、続けていくことはできない。

農業において利益は、

生産量 × 生産単価 ー 生産経費(肥料+農薬+苗+土地借賃+機械代燃料費などなど)ー 人件費 ー 物流経費 ー 事務経費 = 利益

と求められる(かなりざっくりだが)。

これを、流通先であるスーパーや消費者から見た場合、特に見えなくなる、見てくれなくなるのが利益の部分と人件費である。

利益を生まない産業は持続していけない。人件費が払えない産業も持続していけない。不当に利益を稼いでいる産業もあるかもしれないが、ほとんどの第一次産業は利益も人件費も抑えられてしまっている。下記リンク先の図の3-4-8などを見ればよくわかる。

一方で、世帯の食事に使う金額は横ばいである。エンゲル係数は近年上がっているが、それは消費支出自体が減っていることで相対的に上がっているのだ。

なお、2人以上世帯当たりの年間コメ消費金額は、平成30年の家計調査通信によると、23395円(平成27年から29年までの平均)で、減少傾向に歯止めがかかっていない。野菜の世帯当たり消費金額は、同じく家計調査によると、こちらは上昇傾向であるが、18万円/年間となっている。なお同様に生鮮魚介類は4万3千円(2017年)/年間、果物は3万5千円(2020年)程度である

すなわち、農業と、漁業(生鮮品)だけに限ってみると2名以上の世帯の平均消費金額(コメ+鮮魚+野菜果実+果物)は、おおよそ28万円~29万円ということになる。この中には輸入品(特に果物と鮮魚のエビカニなど)もあるので考慮すべきだが、およそ年間で10万円ほどでも、国産食品に単価向上としてお金を費やしてくれれば農業漁業の問題解決は大きく前進する。

もちろん、そんな金額などとても払えないという思いを持つ人は多いだろう。わずかな金額でも、反発する消費者は多い。

しかし、牛肉などの値上げや駐車場の値上げは数百円や数千円単位なのに、なぜことさら野菜の値上げを気にするのか、生産者からしてみたら不思議でならない。

家賃が1000円上がれば年間12000円支出が増える。

キュウリが2割高くなると、30代の世帯平均年間きゅうり消費金額は2500円程度なので、500円支出が増える。しかし、キュウリが一年間ずっと高騰していたことなどあっただろうか???天候や生産ピークの波によって、安くなることは必ずある。

もし、携帯電話通話料が2名世帯で月当たり1500円×2名分安くなれば、36000円支出が減る。

10万円を必ずしも達成してほしいなどというわけではない。ただ、農業の多くの悩みは収入が確保できない、安定しないことである。

スーパーは安売りをしたがる。それは競争過多であるところも大きいが、消費者のニーズ(高い値段は嫌だ)という大義名分があるところが大きい。

農業の収益を上げるために、6次産業化などの手法もあるが、決してそれがすべての解決策になるわけでもない。規格外野菜などを流通させることでもない。そもそも正規品ですら安いのである。

こういう八百屋さん魚屋さんが増えること、そしてそういう売り場を支持する人が増えることが、何よりも第一次産業のために必要なのである。

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