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【つくること】 第2回超映画総合研究所”志田ゼミ” DAY1(2023.11.17)レポート

さぁさぁ、8月から開始した超映画総合研究所ですが、ついに2回目が開催されました!😁


11月17日(金) 18:30。第2期志田ゼミ会場がオープン。
今回からギャラリーのレイアウトを、参加者の方々全員が中央スペースへ着席するスタイルに。プレゼンターとギャラリーの距離を近くし、一緒になって映画コミュニティを形成できるようにと考慮した空間です。

第2期プレゼンターは4名。しかし残念ながら一名体調不良で欠席となりましたので実質的には3名となりました。さて、そんな超映画総合研究所 志田ゼミ。第2期はどんな作品がプレゼンされたのでしょうか…。

1 東京都 男性(43)
推薦作『ドライヴ』2011
監督/ニコラス・ウィンディング・レフン
主演/ライアン・ゴズリング

デンマークの異端の監督、ニコラス・ウィンディング・レフン作品。そして最近では『ラ・ラ・ランド』『バービー』と配役の幅を広げ続けているライアン・ゴズリング主演による新世代フィルム・ノワール『ドライヴ』。
推薦していただいたのは、海外映画のトレーラー(予告編)を日本公開前のオリジナル版で観ることを趣味に持つという方(今はネットで予告編をいち早く観れますからね)。そんな映画フリークな嗜好を持つプレゼンターが、この作品もオリジナル・トレーラーを観て早くから注目。
いざ観てみると、カーアクション、ラブストーリー、バイオレンス、様々な要素が入り乱れ、ジャンルに捉われないという意味では違和感満載、しかし、だからこそ新たなる刺激が溢れた作品であったと。
そのカッコよさ、80sを彷彿とさせるセンスのいいサウンドトラックなども魅力的で、断然お気に入りの一作になったということです。
普段は自動車の整備工でありながら、夜になると車を爆走させる“逃がし屋”という設定がとらかく面白い。ロスの街のあらゆるストリートを知り尽くした主人公が、強盗を起こした奴らを乗せて疾走する。
と思いきや、物語は第二第三の人物が現れ主人公を翻弄していく。一つのジャンルに留まらない面白さがある映画であるということ。
特にお気に入りのシーンは、自動車整備工のライアンがマフィアのボスに握手を求められると、(作業をしていて)手が汚れているからと遠慮する。
すると、オレもだよ、とマフィアがニヤリとする…。
片や本当に手がタールや油で汚れている男、片やこれまで散々悪事を働きその手を汚してきた男。
そんなクールなやりとりがたまらない作品であると、やはりクールに、しかし熱くプレゼンしていただきました。

after presentaion with志田さん
志田さんはかつて本作を試写で観て惚れ込み、日本公開のための権利取得に奔走したお一人なのだそうです(かつてそういう仕事をされていました)。
レフン監督は志田さんと同い年。キャンペーンで監督が来日した際には、彼が好きな日本のインディーズバンド"メルトバナナ"のレコードを用意しプレゼントして喜ばれたとのこと。
他にも日本のヤクザ映画、怪獣映画も大好きな方とのことです。
そんなわけで今回本作がラインアップされたことはとても志田さんとしても嬉しかったそうで、後半はプレゼンターと一緒になって、デンマーク映画時代の『プッシャー』シリーズ、『ブロンソン』などもお薦めであることを付け加えつつ、レフン監督の魅力を語っていました。

2 東京都 女性
推薦作『ヤクザと家族 The Family』2021
監督・脚本/藤井道人
製作総指揮/河村光庸
出演/綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉

映画『新聞記者』で日本中を震撼させた藤井道人監督による2021年の話題作が登場。推薦された女性プレゼンターは、てっきりヤクザ映画ファン、または社会派映画ファン、かと思いきや、実は大の綾野剛ファンなのでこの主演作を推薦!ということなのでした(こういう推薦理由も最高ですね。会場には綾野剛関連本がズラッと展示もされました)。

映画の物語は3つの時代(1999/2005/2019)に分けられて進行していくわけですが、その年代を生きていく主人公(19歳/24歳/39歳)を巧みに演じていく綾野剛をプレゼンターはまず絶賛。
現在39歳の綾野だが最初は19歳の役、それが見事に19歳だった!とのこと。
さらにヤクザの世界に入ってからの刺青姿をさらす裸体の美しさや、愛する年上女性に自分の弱さをさらけ出し助けを求めてしまうか弱き姿にも悶絶!と、とにかく推しの出演映画を観て楽しんでいるプレゼンターの熱い思いがほとばしるプレゼンでした。
しかし綾野剛という俳優はとてもカメレオン的で、各出演作で役柄がいろいろと変わっていくので、結果様々なジャンルの映画を“綾野剛というフィルターを通して観ることができる”と。
プレゼンターとしては「それが楽しい」ということなのですね。推しをフォローし続ければいろいろな映画が楽しめる。
そんな映画の楽しみ方とは新鮮です。しかしもしかしたら、それは“綾野剛作品だからこそ”なのかもしれませんが。

after presentaion with志田さん
この他にもプレゼンターからは綾野剛作品『最後まで行く』『花腐し』、そして最新作の『カラオケ行こ!』なども紹介されました。まさに多種多様。
これらの作品の綾野節を見比べるのも楽しいかもしれません。
志田さんからの補足は、『新聞記者』からの流れについて。
この作品で初めて藤井監督とプロデューサーの河村光庸氏がタッグを組み、Netflixドラマ版『新聞記者』を経て、今回の『ヤクザと家族 The Family』に辿り着いたと。
それぐらいこの二人による作品は社会性に満ちていて、しかしエンターテイメントにこだわる、日本映画界ではとても新鮮なタッグであったということです。
残念ながら河村プロデューサーは2022年に他界されたので、もうこの二人による作品は観れません。
なのでそういう側面から見ると、この『ヤクザと家族 The Family』という作品は二人の才能が結実した、最後の希少な傑作と捉えることができるわけとのことです。

3 東京都 男性(59)
推薦作「ミニー&モスコウィッツ」1971
監督/ジョン・カサヴェテス ※出演も
主演/シーモア・カッセル、ジーナ・ローランズ

アメリカ・インディペンデント映画の父と称されるジョン・カサヴェテス監督を愛してやまないプレゼンターが登場。
会場に集まった皆さんに志田さんから問いかけると、全員、そんな監督知らない…ということなのですが、そこに向けて、丁寧にしっかりとカサヴェテス映画の魅力を伝えていくプレゼンが行われました。
本作は幻の名作と評されている『ミニー&モスコウィッツ』で、プレゼンター自身もDVDで持っているにも関わらず、最近ミニシアターで特集上映された本作を初めてスクリーンで観て、改めて「良かった」と感じられたそうで、それで今回の推薦作に決められたそうです。
風変りな二人の恋愛ストーリーではあるけれど、この二人の気持ちがなかなか繋がらないもどかしさや、あるタイミングで一気に結婚話にまで発展する意外性など、とにかく人間ドラマの奥深いところがカサヴェテス映画の魅力であると力説。
本作はインディペンデント・マナーなカサヴェテス作品でありながらちゃんとしたメジャースタジオ、ユニバーサル映画であるということも説明。
なのに映画自体はとても自由で、カサヴェテスの母親や、主演であり妻のジーナ・ローランズ、そして彼女の母親まで出演させるという、そういうファミリーが一つになって(巻き込んで)映画を撮っているというスタンスがいい。
ハリウッド・スターのピーター・フォーク(刑事コロンボ)もカサヴェテス映画の常連なので、皆が皆映画を愛しながら協力し合って映画を作っているという気持ちが伝わってくると、そこがカサヴェテス映画に惹きつけられる理由ということでした。

after presentaion with志田さん
カサヴェテス映画はなかなか普通に観れないのですと言う志田さん。
DVDが出てもすぐに廃盤になってしまうし、マニアライクなコレクターのためのボックスセットぐらいしかフィジカルでは存在しない。
そこに『ミニー&モスコウィッツ』の単品セルDVDをプレゼンターが持参されたことにはかなり驚いたとのこと。
それがどんなに貴重なものかという説明と、もし本作が観れない場合は、それでも比較的人気がある他のカサヴェテス作品を観る、その感想を次回聞くということでもOKにしましょうよと、志田さんは提案されていました。
配信で観れる、またはレンタルDVDにはあるだろうと思われるカサヴェテス作品、と言えばやはり『グロリア』で、こちらも主演は妻であるジーナ・ローランズ。
女性版『レオン』と称して推薦したのと、もしレンタルや配信にあれば、第一回監督作の『アメリカの影』もお薦めですと志田さんから付け加えられました。


というわけで、本当はもうお1人プレゼンターがいらっしゃいましたが、体調不良につき無念の欠席。なので志田さんが4人目のプレゼンターとして急遽登壇いたしました。

4 東京都 志田一穂
推薦作「正しい日 間違えた日」2015
監督/ホン・サンス
出演/チョン・ジェヨン、キム・ミニ

韓国映画です。
アクション、ラブストーリー、犯罪ものと、韓国映画と言えばそういったハード&センシティヴな恋愛映画のイメージが強い印象ですが、このホン・サンスという監督の作品は、一貫して“男女の恋愛模様を会話形式で描く”という独特のスタイルで統一されています。
さらに、同様の設定で視点を変えた二つの物語を2 in 1形式で見せる、驚きの映画術もこの監督の特異な個性でもあるのです。
特に本作「正しい日 間違えた日」はラブストーリーとして二つの異なる物語が比較されるかのように描かれているので、タイトル通り、どちらが正しいのか、どちらが間違っているのか、観ている側がそれを問われているような不思議な感覚に襲われていきます。
本来の映画であれば起承転結があって物語の結末に大抵は腑に落ちていくことになりますが、本作、そしてホン・サンス作品のほとんどはそうはいきません。
これが、“韓国映画界のゴダール” “韓国映画界のエリック・ロメール”と称される理由であったりするのです。
そしてもう一つ着目すべきが、本作の主演の一人を演じているキム・ミニで、彼女のナチュラルな演技がさらに本作にリアリティーを与え、結果観客たちを混乱の渦に陥れていきます。
まさにどれが本物でどれがフェイクなのか、恐らく観たあともこのモヤモヤがずっと続き、それを払拭したいのでまたホン・サンスの別の作品に手を出してしまう。
志田さん自身も完全にその中毒に陥り、特集上映で作品を観まくってしまいったとのこと。
それぐらい刺激的なホン・サンス作品。
是非来場者の皆さんに体験していただき、どちらが正しいのか、どちらが間違いなのかを徹底討論したいと思い、今回の推薦作としたとのこと。

以上、今回は計4名、4作品のプレゼンを会場全体でシェア。
ギャラリーではいつもの如くメモをとられる方も多々いらっしゃって、やはり熱気のあるゼミ教室な一幕でした。

残りの時間は質問やご意見コーナーとし、こちらもまた盛り上がりました。「バイオレンス映画は男性が好きなジャンルとして存在しているのか?」といった主旨の質問に対して、男性陣からは、自分はそんなに好きではない、とか、要素として描かれるシーンは観てしまうがそれ目当ての映画は観ない、とか、でも北野武映画は観てしまう…、などさまざまな意見が飛び交いました。男性に限らずそれぞれの嗜好によって“バイオレンス映画”というものが存在するのでは、という意見も出てきて、プロレスにボクシングと言ったスポーツ映画との比較論にまで発展し、なかなかの映画考察談義となりました。韓国映画に対して、そんなに変わったドラマの映画があるとは知らなかった、などという意見もあり、次回からは作品のプレゼンごとにギャラリーの方々含めディスカッションコーナーを設けた方がよりコミュニケーションが活発化するのかなという予感がしましたので、さらに今後ブラッシュアップされていくのではないかと思います。

この志田ゼミは推薦作を観て、それについてまた意見交換していくDAY2をもって着地となります。DAY2は2週間後、12月1日。
・なぜその作品を観たいと思ったのか?
・どうやってその作品を探して観たのか?
・観た上でどう思ったのか、どう感じたのか?
・そして、その映画から次に思いつく映画とは何か?
そんな意見交換を行い、志田さんが総括していきます。そうして今回集まった作品たちを今一度最終的にシェアしたところで、全行程終了となります。

さて、この4作品は今回たまたま集まったものなのか、
あるいは何か意味をもって揃ったものなのか?

重要な気づきは、再び集合するDAY2にあります。
このギャラリーは引き続き申し込みOK!
お楽しみに!🥰