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だれかを応援すること、だれかから期待されることが、ちからになる

「日本に来て何もがんばれていないと思っていた」
「私の夢は自分で選んだんじゃなくて、選ばされている気がする」

両親またはどちらか一方が外国出身者である “外国ルーツの高校生”の中退率は、公立高校生全体と比較し5倍、非正規就職率は12倍にものぼるといわれています。NPOカタリバは、そんな外国ルーツの子どもたちを支援する「Rootsプロジェクト」を2019年より開始しました。

子ども若者の可能性を家庭や学校に丸投げするのではなく、社会とともに誰もが活躍できる仕組みの構築を目指し、2022年からキャリア支援『Rootsインターン』を開始。企業に赴いての1Day体験を軸に、約半年間のメンタリングと高校生自身が設定したキャリア実現への1歩「マイアクション」を考えるプログラムで構成されています。

本日は、半年間のプログラムを駆け抜けた高校生たちと、高校生たちが社会に手を伸ばしてつながった大人の方々との対話の様子をお伝えします📢


みんなが自分の可能性について話している場が、心地良いことを知った

自分でプランニング〜実装までを行ったUIデザインを発表したSNさん

中学2年生の時に親御さんといっしょに暮らすために来日したSNさん。もともとはしばらく家族と過ごしたあと、カナダへの留学を夢みてました。しかし高校2年生になり卒業がみえてきたタイミングで、自分と家族のために日本で暮らしていくことを決意。日本の会社について知りたいとRootsインターンに参加しました。

興味のあったIT企業にインターンに行き、マイアクションではUIデザインに挑戦しました。はじめて自分の作品を多くの人の前で発表するため自信なさげにしていましたが、発表をきいていた方が「すごい!」とまっすぐな一言を伝えてくれました。それに連なって、その場にいた全員がSさんの頑張りに対して大きな拍手をおくりました。

発表後、SNさんは照れながらも嬉しそうな表情をみせてくれました。

「今日は、みんなが”自分の可能性”について語っていた。いつも周りでは『できない』とか『むずかしい』という言葉が多い。そんな自分のいつもの場所も嫌いじゃない、現実を見ることは大切だから。

でも、”できる”って話すことも、そういうことを言う人がいっぱいいることにも驚いたし、心地良いなって思った。」

かけてもらった言葉が、日常を頑張る理由になる

約1年前にネパールから日本にきたSSさんは、人前で話すことに苦手意識があり、企業でのインターンシップでの発表の時間は、他の人に発表担当を任せたことが心残りになっていました。また来日1年にもかかわらず引っ越しで学校を転校することになり、周囲とのつながりをつくることにも、モチベーションを保つことが難しい状況でした。

普段SSさんは、日本に来てはじめたアルバイト先で日本語と英語で提供メニューの単語帳を作り、自ら工夫して頑張っています。そんな努力家のSSさんは自分の苦手意識を克服しようと、「自分の言葉で発表する」ことをマイアクションに決め今回の報告会への準備をすすめてきました。

発表前は「緊張する…」と不安そうで言葉数も少ない様子でしたが、はじまると終始笑顔を心がけ、きいてくれている方とも目を合わせながら、最後まで自分の力で発表を終えました。

事前に準備してきたことを、すべて出し切ります!

インターンシップ時から生徒を見守ってくれていた受け入れ企業の方たちは、SSさんの頑張りにキラキラした表情で目を向けてくれていました。

「SSさんが自分の言葉でしっかりと語っている姿に成長を感じて、感動した」「センスが素敵でアドバイスしてもらいたいくらい」という応援の言葉が飛び交いました。

怖いと思っていた人前で発表することを自分の力でやり遂げ、声をかけてもらった経験は、この日が終わった後も、SSさんの日常の支えになっています。報告会後、誰かにつないでもらうだけでなく今度は自分から周囲とつながりたいと、他の生徒が企画しているイベントへのお手伝いを自ら名乗り出てくれました。本来のSSさんのリーダーシップが発揮されはじめていることを感じます。

自分のことばに興味をもってくれる人がいるなんて思わなかった

日本で生まれ、母国と自分の国を行き来しているSGさん。もともと明るく自然体な印象のSGさんは、国を移動する中で悲しんだり怒ったり、言語を習得するのも大変だったとふりかえります。学校での生活が充実しつつも、将来についての具体的な選択肢がみえないという課題感から、Rootsインターンへの参加を決めました。

企業への訪問日には以下のことを社員の方々にインタビューしました。

  • 独特なキャリアを歩んだ人が、どんなきっかけで今の場所に至ったのか聞きたい

  • 中間的な立場でどうやってうまくやっているか知りたい(企業とお客様をつなげる仕事がどんなものかを知りたい)

  • 外国人は多い?この会社に入れるには実力が必要だと思っているが、どんな能力や行動が必要なのか?

  • 日本語のレベルは大事?そして、それよりも大事なことはありますか?

  • プライベートの時間を取れてますか?どうやってバランスとってますか?

報告会開始10分前まで内容を考えました…

インターンを終えた生徒は最終学年のため、進学準備と両立して発表準備をすすめることは大変で、途中何度か参加をあきらめそうになる場面も。ですが、受入れてくれた企業の方に再会したいと、ほぼそのためにがんばっていました。

発表後、SGさんは肩の荷がおりたこともあり(?)、自分から積極的に周囲とコミュニケーションをとる姿がありました。

「実は発表するまでは、自分のことばに興味がある人なんていないんじゃないかなと思ってたんです。でも、話してみると、そんなことないんだと感じました。そうすると今度は、私ももっと周りの人のことを知りたい、そんな感情があふれてきました。」

応援してみることで、得る気づき

生徒の発表が終わると、会場にいる参加者全員で、グループをつくり以下の問いについて話し合いました。

お題は「高校生・大人のお互いについてもっと知りたいこと」

あるグループでは、インターン受け入れ企業の方の「大人たちもインターンを通して学んだんだよ」という言葉に、生徒が驚き、嬉しそうにしていました。生徒たちが、自身が大人に与えていることに日々の生活で気づくことは少なく、彼らと接することで大人も学び、エネルギーをもらっている、そのことを言葉にして彼・彼女らに伝えられた場でもありました。

お互いと学び合う。1つの問いについて、膝を突き合わせ、「伝えたい!」「知りたい!」とお互いがワクワクしながら対話する時間となっていました。

インターン当日も感じたことですが、生徒さんとの関わりの中で私たちの方がたくさんのものを受け取っているように感じております。(インターンが実施された)9月末よりも堂々とした発表、そして自らの興味関心を形にしていたり、しようとしていたり、その前向きに進む姿と情熱に感動しました。また、他企業の方々や高校の先生方もいらしていることで、若者のために何かしたいと考える大人がいることにも勇気をもらいました。

企業の方のコメント

高校生の子たちの「学び」に対する姿勢が本当に実直で誠実でした。外国にルーツを持つ子どもたちが安心して就労・就学できる環境を整える必要があることを強く実感しました。

大学生からのコメント

高校生だけではなく、大人にとっても、これからを頑張ろうとしている高校生たちを「応援」してみることは、日々ビジネスの現場に居る大人の方にとっては少し非日常な時間だったかもしれません。いつもの日常へ帰るとき、ほんの少しでもエネルギーとなっていたら幸いです。

飛び入り参加の方も含めて、みなさん、本当にありがとうございました!

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多感な思春期に、これまで積み重ねてきた学びの力や友人関係がリセットされてしまう不安。

たった1時間の対話
高校生の目は、みるみる変わります。

「日本に来て何もがんばれていないと思っていたけど、そんなことなかった!」
「私の夢は選ばされている気がしていたけど、ちゃんと自分の夢だった!」

いろんなハードルを前に、諦めそうになりながら日々自分と向き合っている生徒たちにとって、この日もらった大人からの ”応援のことば” や「みんなから学ぶことがたくさんあったよ」という ”感謝のことば” が、今後の意欲につながった1日でした。

NPOカタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援事業)では、引き続き、社会とともに誰もが活躍できる仕組みの構築を目指していきます。noteでも発信を続けていきますので、気になってくださった方は今後も見守っていただけると嬉しいです🌞

●マンガで知る、Rootsプロジェクトの活動

問い合わせ先:
認定特定非営利活動法人カタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援)roots@katariba.net