マガジンのカバー画像

逆噴射小説大賞2019

6
逆噴射小説大賞に投稿した5作品です。
運営しているクリエイター

記事一覧

逆噴射小説大賞に備えてたこと、考えてたこと

逆噴射小説大賞に備えてたこと、考えてたこと

逆噴射小説大賞2019の一次&二次選考の結果が発表された。

結果は『灼氷の狂気よ、我が正気を啜れ』と『平成八年生肉之年』、『Who Killed My Poppin'?』の三作品が通過した。まだ、最終結果は出ていないから油断はできない......でも嬉しい。去年の逆噴射は一作品のみの通過だったが、今年は2作品も多く通過できた。
思うに運が良かったのと、事前に心掛けてたのが結果に少しだけ寄与したの

もっとみる
Who Killed My Poppin'?

Who Killed My Poppin'?

 5th Elementsは80年代ダンスシーンを席巻したダンスクルーだ。
 当時としては珍しかった女性ポッピン、Boogaloo D(E,Therston)をはじめ、Funky zara、G-nome、Silver、Undoの5人はアメリカ全土にファンク旋風を巻き起こした。(中略)しかし1989年4月25日、チェコでのダンスキャンプへ向かう5人を乗せた旅客機が、所属不明の飛行物体により撃墜されて

もっとみる
最も高名で最も曖昧な熱帯魚

最も高名で最も曖昧な熱帯魚

 やった。遂にやっちまった。俺のバックパックは、組のカネではちきれんばかりだった。捕まったら良くて十分の九殺し。手足を詰められて野晒し。ゴアな目に遭うのは嫌だが、”魚屋”に辿り着かなければ、どのみち同じ結末だ。
 五度路地を曲がると、喧騒が遠ざかる。俺は一瞬、道を間違えたかと危惧したが、獅子舞に跨る女の落書きを見て安堵した。その先の店こそ探していた”魚屋”だからだ。
 名前は”Sellfish”。

もっとみる
平成八年生肉之年

平成八年生肉之年

 ここは老舗デパート、マルコシモール。日曜の人がごったがえす屋上遊園地で、長野県警の威信をかけた大捕物が行われていた!!

「松尾クンッ!あすこだッ!」

 平岡警部が、指さすと浴衣の男が雑踏をすり抜けていった。

「待てェッ!」

 松尾刑事が駆ける。しかし署内一の健脚も、人混みには太刀打ちできず。たちまち後姿が遠のき、このまま逃してしまうのか、と思ったその時だった。

「ええぃ!どいたぁ!」

もっとみる
灼氷の狂気よ、我が正気を啜れ

灼氷の狂気よ、我が正気を啜れ

〈フェイ……、起きてるか。〉

 フェイ、と呼ばれた俺は運転席を起こす。外では極彩色のネオンが瞬き、毒々しいドレスのコンパニオンが男に腕を絡めている。時計は8時手前。30分の睡眠なら、今日はまだ眠れた方だ。

「起きてるとも。」

 俺は欠伸を噛み殺し、無線を返す。首を回すと体の怠さは強くなった。じとり、毛穴から汗が吹き出し、厭な暑さが広がる。ミネラルウォーターを含むと、零れた水がハンドルにか

もっとみる
凶匣解体人クロヒメ

凶匣解体人クロヒメ

 ちーん。エレベーターの扉が開くと、黒姫は手早く10階を押した。今週8つ目、都内タワーマンションでの仕事だった。
 「全く忌まわしい。」彼女は独りごちた。警察はギャラをケチるし、人使いが荒い。昨日大阪で1件終わらせたと思ったら、その足でのぞみに乗れだと?スカートのシワを取るヒマさえありゃしない。
 世間では”匣〈ハコ〉”絡みの事件が急増していた。放っていたら次から次に人が死んでいき、数少ない解体人

もっとみる