研ぎの良し悪しの判断が難しい
現代刀職展を見てふと感じた事ですが、研ぎの良し悪しの判断がとても難しい。一流工の作は元が良いので、研ぎが多少下手でも上手く見えると聞いた事がある。
素人的な考えでは、研いで良さを120まで引き出せる古名刀の作と、100までしか引き出せない二流工の作が仮にあるのであれば、古名刀の作が有利なのは想像に容易い。
なので古名刀の作を皆出品すれば良いのに…と思うのであるが、古名刀を若手で研ぐのは機会に恵まれないという「壁」があるらしく。(確かにそれもそうか)
そういった名品を調達してくる力というのも研師の実力の内だ、と言う人もいる。確かにその通りだと思う。
だがそうは言っても若手の内は何かコネ的なものが無い限りなかなかそれも難しいのではないだろうかとも思う。
それとも今の時代であればネットで知名度を上げて募ることも出来るのかもしれない。
しかし一方でコンクールの受賞作を見ると必ずしも古名刀ばかりが特賞に輝いているわけではない。
例えば今年の現代刀職展で特賞のトップである文部科学大臣賞に輝いたのは各務弦太さんが研がれた肥前国河内守藤原正広であった。
景光や長義、長光、片山一文字、二次国俊、兼光など古名刀を抑えての堂々の特賞である。
その為コンクールでは刀そのもののポテンシャルを無視した研ぎだけで判断出来る何か重要なポイントというか見所があるのではないかと想像している。
よく聞くのは横手の処理だろうか。
良い研ぎはピンと線がたって形を引き締めている。
しかしコンクール受賞作を見ているとこの辺りの処理はどなたも綺麗だったりする。
他には刀身表面のゆがみ(凹凸)だったりするのだろうか。
例えば光を当てて光がぐにゃぐにゃ曲がるようであれば表面が凹凸になっている事を示し表面が均一になるような綺麗な研磨が施されているかは微妙な所である。
しかし錆が部分的に進行していてその部分だけを微妙に研ぐ事もあるかもしれない。そこに合わせて全部を均一に研いでしまえば刀をより多く削ってしまう事になる為である。
その為部分的に凹凸している所はそれで研師の工夫なのかもしれない。
さて以下は個人的に良いなと思った特賞では無い受賞作3点。
これらの研ぎも刀の良さがとても引き立っていて個人的に素晴らしいと感じました。
・優秀賞二席 新保基治さんの研ぎ
・努力賞四席 曽我文麿さんの研ぎ
・優秀賞九席 長岡靖昌さんの研ぎ
という事で素人目には正直優劣が全く分からない。
特賞受賞作は勿論のこと、どれも美しく見え、改めてとても難しい世界に感じる。
そういえば作刀部門でも順位が付くわけですが、研ぎによる影響というのも少なからずありそうですよね。
鍛冶押し状態での審査(研師に出す前の状態で審査)であれば純粋に刀鍛冶としての技量で判断出来そうなものの、研ぎ工程が入ると自然と研ぎの具合でも評価が変わってしまうので、刀鍛冶の方と研師の方、双方の腕が上手く合わさった時に特賞を受賞出来るのかもしれません。(刀鍛冶のイメージした物を研師が120で引き出せるかどうか)
刀は1人の力では完成しないので、刀職同士の信頼関係というのも一つコンクールでは重要になってきそうです。
いずれにしても研ぎに使用する刀の差なども含め、複合的な要素が多分にあり職方さんの純粋な技量を測るのはとても難しそうに感じました。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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