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刀装具の良い物、悪い物の判断について

刀装具に興味を持ってからというもののルーペで細部の世界ばかりを探索しているような気もするが、これはルーペを使う事で例えば鏨による細かな彫が見えたりする事で製作者の息が伝わってくるようであるから楽しいだけであって、基本的に「良さそうな物」や「悪そうな物」を大別する際は何もルーぺを用いる必要はない、というのがここ最近でほぼ核心に変わった事。

ここで言う良さそうな物とは時代感のあるものでしっかり作り込まれた物を指し、悪そうな物とは例えば型を作った現代物であったり、時代感のある物でも出来の悪いものを指す。
とはいえ自分自身が興味の持っていないジャンルについてはやはり分からず仕舞い、というのは変わらないので分からない物も多い。
私で言えば鉄鐔は依然良く分からない。夏雄などの金工系も分からない。
この場合はルーペを用いたからといって何か分かるものでもない。

しかし成木鐔という狭い一分野においては成木氏の鉄味が少し分かってきたような気がする。
これは成木鐔が好きで15枚程集めた為に何となく感覚的に分かるのかもしれない。ただ作域も広いので全て正確に判断出来るわけではないが100枚位集めたらほぼ正確に判断出来るような気もする。

同様な事が目貫などでも言える。
やはり手の込んだしっかりした作を刀剣店で買い求めて手元に置き日々眺めていると目が手の込んだ作に慣れてくる。
すると同様に作り込まれた作品を見た時はルーペを使わなくても似たような感覚を抱くし、反対にそうでもない物を見た時には直感的にイマイチだなと感じる事がある。
型品を見た時に表と裏の造り込みがヌメっとしていたり、構図のバランスが悪いとか、力がないとか、素材の色味が変などと直感的に感じるのがその例かもしれない。

古美濃
埋忠七左衛門橘重義
伊藤正次

ただ分かるのはここまでであって、良い物の中で更に足を一歩踏み込んだような、例えば後藤家の代判定をしたりが出来るようになるわけではない。
これは後藤家の作を沢山集めて初めて見えてくる世界であってもっと深い世界になる。


前置きが長くなったが、刀装具は千差万別で色々なものがあるので、良い物と悪い物の見極め方というのは「ここを見るべし!」と特定の事を断言するのは難しいものの、しっかりした刀装具を実際に買い集めている人であればある程度直感で分かるのではないだろうか。

刀は「研ぎ」や「繕い」という化粧があるし、本来の刀の出来や状態が分かりづらくなっている事があるが刀装具は補修跡など見られる事はあるが非常に部分的なものであるので全体の出来は捉えやすい。そういう意味では刀よりも刀装具の方が直感的に分かりやすいように思う。

そして刀装具に興味を持つ前は一切分からなかった「拵の良し悪し」についても同様に少し分かるようになってきた気がする。
拵も結局のところ刀装具の集まりであるので、良い物であれば要所要所が光り、拵全体で見てもやはり良さが光っている。
遠目から見てバランスが良いし、近くで見れば目貫は作り込まれている。
良い鮫革が使われ綺麗に柄糸が巻かれ、バランス良い鐔が付いていて鐔そのものも良い。
つまり見た瞬間に色々な輝きを放っている。

一方でイマイチなものは見た瞬間にイマイチと思うような光を色々なところから出しているというのも面白い。
目貫も鐔も縁頭も鞘塗も全てがイマイチ。
値段の中では相応の仕上がりをしているかもしれないが、その上のものと比較すると玩具のようにすら思える。
鞘の塗一つを取っても漆ではなくウレタン塗装と思えるような深みの無いものも結構見かける。(安い刀身には結構付いている印象)

安っぽい鞘に凄く良い目貫が付いている事はないし、目貫が駄目なら鐔も駄目。
なので個人的に思うのは例えば目貫や鐔などどれか1つでも良い物と悪い物の判断が付くようになれば良い拵も分かるようになると思うのです。

因みにタイトルにもしたこの拵。

実は剣の拵なんです。

しかしイマイチ…。
特に鞘の塗はウレタン感がある。

目貫は時代はありそうなものの出来としてはこれまた特に…という感じ。

刀身は良い分、いつか良い拵を作ってあげたい1振です。



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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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