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撮影の難しい刀、簡単な刀

iphoneで刀を撮り続けて幾星霜。というのは冗談ですが。
この4年間のフォルダには美術館で撮影したものや家で撮影したものなど、刀関係の写真だけで3万位あるので(大体SNSに1枚アップする為に5~10枚位撮るのでそういうのも含めてはしまっていますが)、そこそこ沢山刀の写真を撮っている部類には入ると思っています。

そんな中で経験上比較的簡単に美しく撮れる刀とかなり撮影が難しい刀がある事に気が付いたので書いてみます。
因みに私はiphone(執筆時点ではiphone11)でしか撮影していないので、一眼などではどうかは分かりません。
またここに書いた内容が個人的な感覚である事は言うまでも無いのでそこは御理解ください。
では早速易しいと思う順番に紹介します。

①撮影難易度:易

沸出来のものであったり地刃がはっきりしたものほど綺麗に撮りやすい。
例えば以下は新々刀期を代表する清磨の刀。
刃が冴えていて地景もはっきりと見え、刃中の金筋、砂流しなどといった働きもはっきりしているので撮影しやすい。

源清磨

刃文に沿った研ぎ、つまり差し込み研ぎがされている刀も刃文の形が綺麗に出るので撮影しやすい。

兼定

現代刀も刃が明るい場合地鉄も詰んでいる事が多いので比較的撮影はしやすい。肌を強調した現代刀は更に撮影がしやすい。
但し地鉄が白いと撮影に苦労する傾向がある。(難易度:中にて紹介)

あとは地鉄が精美なものは綺麗に写しやすい。
恐らく刃が強調されるからだろう。すべからく名刀が綺麗に撮影しやすいのはこういった事が理由にあると思われる。


②撮影難易度:中

匂出来の刀や地鉄が白っぽい刀は、肉眼で見るよりも刃と地鉄の境が曖昧になり意外に撮影が難しくなる印象。
つまり刃文を冴えたように写すのが難しく以下のような写真になりがち。
まず匂出来の作2つがこちら。
匂出来の作は見ていると心が落ち着き直接見るのはとても良いのであるが、写真を撮るとなると魅力を上手く伝えるのが難しい。

城慶子正明
備前長船盛景


次に地鉄が白っぽい作例2つ。刃と地の色味が近いからか、あまり刃が強調された写真にならず、以下のようなボヤっとした写真になりがち。
肉眼では刃が冴えて見えても写真に映すとこうなってしまうので悩み所。
恐らく撮影時に明るさを落として撮る事が必須になるでしょう。
真っ暗な部屋で撮影しても苦労するかと。

その他、沸出来であっても映りなどが現れている場合はそれを捉えて映した方が良い。映りのある刀は慣れるまでは少し難しいかもしれないが慣れれば撮影自体はそこまで難しくはない。

長船則光の棒映り


③撮影難易度:難

匂口の沈んだ刀(刃文が明るく見えない刀)と匂口の深すぎる作(匂口の幅が広すぎる作)。ずばりこれに限る。

例えば以下の浜部寿格の作。
匂口が深く物凄い細かい金筋などがしきりに入る面白い作であるが、スマホで写そうとするとそれらの細かさを上手く捉える事が至難の業。

浜部寿格

新刀期の刀工で言えば、助広の濤瀾刃(とおらんば)は匂口がとても深く撮影が難しい。
肉眼で見たのと同じように写真を撮る事が不可能という位に難しい。
もう少し具体的に書くとすれば、助広の濤瀾刃は刃と地の境目が判然とするようでしないグラデーションのような刃文をしているが、その雰囲気がスマホでは映しきれず以下のような写真になってしまう。
匂口の深さは分かるものの、実物は遥かに美しく写真と実物のギャップ差が埋まらない刀工の1人かもしれない。

そして匂口が沈んだり、刃と地の境が判然としない刀は撮影が難しい。
スマホで匂口を写すのがかなり困難。
以下は綾小路の太刀であるが、どんなに頑張っても現状私のスキルでは以下が限界。

大抵は以下のように刃境がパッとしない写真になってしまう。
これが古雅さであり気に入っている点でもあるのであるが、写真では上手く良さを表現出来ずに悩むことが多い。


④終わりに

という事でざっくりまとめると、撮影しやすいのはとにかく沸出来で刃の冴えた刀に思う。
地鉄の精美な刀や地景が強調された刀も綺麗に撮影しやすい。
一方で撮影が難しいのは匂出来で刃が沈んで見える刀であったり、刃と地の境が判然としない刀。
一見刃が明るくなく地味に見える刀は撮影が難しいと思っても良いかもしれない。

どれが良くてどれが悪いとかではなく、それぞれの刀に良さがありその良さを理解して撮影出来るのがベストですが、分かっていてもそれがなかなか難しい。
以下の小池さんのようにTwitterで刀の鑑定や紹介などで写真を上げられておられる方がいますが、その刀の特徴が良く現れたところを上手く撮影されていて毎回感動すると共に勉強させて頂いています。
刀の写真は撮影スキルだけでは無くて、刀の事をどれだけ知っているかという知識部分も相当に重要という事が以下のツイートを見ると分かります。


ということで今回の話はここまでなのですが、その刀の特徴を良く知った後に、特徴に合わせて写真を加工する(例えば地景を強調させるのか、映りを強調させるのかなどなど)事で刀の写真が見違えるのは間違いないと思います。この辺りの話は以下にも詳しく書いていますので興味ある方はご覧ください。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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