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かすみを食べて生きる49:午前8時のヘビーな女子会

脳梗塞 発症1か月と16日目:リハビリ病院26日目
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(昼食のみ)と鼻からの経管栄養。食事以外の時間はスプーン半分の水分を一度に10口まで飲んでよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。階段は上り下りで少しめまいがする。

思いがけず、女子会が開催された。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と15日目:リハビリ病院1か月目㉕
 
発症1か月と17日目:リハビリ病院1か月目㉗>


午前8時のヘビーな女子会

昨日入院して、今朝早くに転倒し顔に切り傷を作るも、無事に生還した斜め向かいのベッドの吉川さん(仮)。
まだご挨拶できていなかったので、朝食後病室で声をかけた。
ちょうど隣のベッドの桜井さん(仮)、向かいの門田さん(仮)も病室に戻ったタイミングで、思いがけず全員ベッド周りのカーテンを開けて初顔合わせとなった。
「おいくつなの?」と聞かれたので年齢を答えると、吉川さん(仮)は「その倍以上だわ」と笑う。
「私も」と桜井さん(仮)。
吉川さん(仮)「戦争も覚えてますもん。おなかがすいてすいて大変でしたわ」
桜井さん(仮)「そうですね、私もまだ小さかったですけど、防空壕に入った時のことよく覚えてます。暗くてじめじめしていて、天井からぽとぽと落ちるしずくが体にかかって嫌だったわ」
女性ばかりの楽しいおしゃべり会になるのかと思っていたら、突如始まる戦争体験談。
まだ午前8時過ぎ。朝からなかなかヘビー。

門田さん(仮)「私は戦争はわからないです」
なるほど。80才を超えると戦争時に幼少期となり記憶があるのか。
私の親世代も高齢者の分類になるけど、戦後の生まれで戦争を知らない。
この世代の間にはどこか大きな溝があるように感じた。
私の祖父母は戦争を語りたがらなかったのでもう少し聞いてみたかったが、今日担当のセラピストさん達がリハビリ時間を伝えに来たので解散となった。
年の離れた私がいたから戦争の話をしてくれたのか、この世代の共通の話題であるのかはわからない。
でも80歳を超えるお姉さんたちから、話題としてナチュラルに戦争の話が出てくるのは新鮮だった。
心の中に今も話さずにいられない思いがあるのだろうことが、垣間見えた。

デイルームデビュー:お昼ごはん#5

ここまで4日間。食事は言語聴覚士下浦さん(仮)の付き添いのもと、病室でいただいていた。
そうなると言語聴覚のリハビリ時間が食事で取られてしまう。
そろそろ食事とリハビリの時間を分けていきましょうということで、今日から食事は他の患者さんが集って食べるデイルームで食べることになった。
デイルームには看護師さんが何人かいるので、もし誤嚥してむせて出し切れなかった場合も、すぐに吸引してもらえる。

デイルームにはいくつか大きなテーブルがあり、患者さんは分かれてテーブルを囲む。
私の席は壁際の一人用テーブル。壁に向かって座る。
左隣は身体を動かすことが難しく車いすで食事介助を受ける方。
右隣は食べるとゴボゴボとよくせき込む方。
前の壁には吸引機。恐らくここは吸引機対応可能ゾーン。
今日は私がデイルーム初なので、言語聴覚士の下浦さん(仮)、管理栄養士の竹中さん(仮)も来てくれた。
待っていると下浦さん(仮)が今日のお食事を持ってきてくれた。

おかゆアート:ほし

これまでの中で一番、元の料理の面影を残していると思われるミキサー食がきた。
今日の献立はこちら。

  • トマトソースのオムレツ、ほうれん草の煮物添え

  • 里芋の煮付け

  • おかゆ

やったー!洋食きたーー!!喜びを星で表現。
いただきます!
オムレツは見た目通り卵の味!喉通りもいい。
トマトソースも食べやすい!おいしい!洋食大好き!
ほうれん草は少しのどに残る感じがする。意外。繊維が多いのかなぁ。
そしてお久しぶりの里芋
お皿の上でも透明の粒が見えるけれど、のど通りもやはりザラつく。
のどにひっかかる。味は里芋の煮付けの味でおいしいけど、つらい。
付け合わせのにんじんは食べやすい。
根菜類も一律で食べやすいわけではないのか。
他の芋系はどうなんだろう。
おかゆは今日ももったり。がんばってもぐもぐ。
どのお皿も完食まではいけなかったけど、食べれたおかゆの量はこれまでより少し増えた。

管理栄養士の竹中さん(仮)が隣にいてくれたので、一口毎に感想をお伝えしたら、ミキサー食の感想をこんなに聞くことはないと言われた。
せっかく献立を考えて作ってもらったのだから、伝えたい、この気持ち。

ガリガリチャレンジみかん#12

まだ水分とミキサー食しか飲みこめない私が、氷菓子を口に入れて味わいそっと口から出して(貴族食べ)、ガリガリ君の当たりを狙うコーナー。
病院の売店にはソーダ味しかないけれど、今日は家族が差し入れをしてくれた。

ガリガリさん12本目九州ミカン

がりがりさんの横に並ぶくまモン。
画風の違いもお構いなしの強さを感じる。
いざ!

はずれ:その12

味が変われど、結果は変わらず。


ーー振り返って

いきなり戦争体験談が始まった時は驚きましたが、防空壕の天井から落ちる水滴の話は臨場感があって、幼い頃桜井さん(仮)が感じた不安や嫌悪感が肌感覚で伝わってきました。
何十年も前のその場面を切り取って話すのか。
桜井さん(仮)、おもしろい。
もっとお話ししてみたいなと思いました。
桜井さん(仮)とはその後少し話をする機会がありましたが、4人そろっての女子会はこれが最初で最後でした。

お食事、お昼は洋食が少なくて、週に1,2回程度でした。
洋食の日はうれしかったです。
ミキサー食。並べると見た目はどれも似た感じなのですが、食べると味も触感も喉どおりもそれぞれ違うので、久しぶりの食材が出てくると毎度食べれるかドキドキでした。
病院食はいろいろな食材を使ってくれるので、のどを慣らしながら少しずつ試すにはちょうどいい環境でした。
ミキサーにかける前の料理を見たい気持ちもありましたが、一生ミキサー食からぬけだせない可能性を考えた時、それはつらいことになるかもしれないとも思いました。
料理名と素材から完成形を頭の中で再現できる、普段は役に立たない自分の妄想力に感謝しました。

ガリガリさんのみかん、おいしかったです。当たらなかったけど。

そしてちょうど昨日が、入院期間の折り返しでした。
私の嚥下食コレクションはまだまだ続きます。


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