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健康で不感症な僕らのための異常心理学

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記事一覧

対なるもの

対なるもの

河原のチガヤと自転車

補習ノートとガリガリ君

溶けた氷と背骨のくぼみ

サバの頭と転んだ箸

威勢のよいセミと夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と自転車

サボったプールとガリガリ君

脂汗と背骨のくぼみ

甲子園ラジオと箸の一方

忘れた嫌悪と夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と一万円

サボったプールと腕の痣

脂汗と喘ぐ息

甲子園ラジオと日常

忘れた嫌悪とカラス

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それに気づかぬ亡者である君に

恋は幻想であることは自明である。

すべてのものが恋を経験し。その後に2つの解釈を得る。即ち、「幻想などいらない」「幻想でも構わない」だ。

話はさらに愛へと飛ぶ。論点を先に言えば、ここで述べるのは恋と愛の違いである。それは、恋は幻想そのものであり、愛は幻想の“産物”であるという点だ。
君は幻想を抱かされる。誰に?“誰かに”だ。親、兄弟、友人、クラスメイト、教師、同僚、価値のない創作物たちに。一人

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どうでもいいこと

 朝起きれなかったこと

どうでもいいこと

 日帰り旅行で疲れたこと

どうでもいいこと

 連休の終わりがみえたこと

どうでもいいこと

 こんなことを詩と呼ぶこと

どうでもいいことが体に沁みてゆく。それがどうにも嫌で、苛立って、
それでもいいや、と腑に落ちる。

バク転した後のように、世界が360°変わって見える。

何もしてないけど、確かに進んだ一日。

どうでもいいこと

どうでもい

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名残香 前編

「まど、閉めるね。」
季節は春、若者は周期的に浮かれる。最後に僕らが浮かれたのは、大学に入った2年前のこと。彼女も同じなはず。
付き合ってもないのに、昔別れたっきりのはずなのに、彼女はどうしてか僕の下宿に来ていた。わざわざ親に嘘をついて、親戚の家には「友達の家に泊まる」と言って、ゴールデンウィークでもないのに東京を出てきた。なにも思ってないふりをして、なにも期待してないふりをして、僕は文句を提案も

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淵をなぞる

私たちは言葉を使う。言葉で歓喜を発露し、言葉で嘆きを吐露する。
言葉は唯一の神への道筋である。
だが、言葉こそ私たちに打ち付けられた楔である。
言葉は深い断絶を残して世界を切り取る。
その断絶は言葉の中には二度として帰ってこない。
私は言葉でないと君に何も伝えられない。でも、言葉のどこにも私はいない。
追い求めるものいつもいつも淵へと転がってゆき、いつまで経っても拾い上げることができない。
永遠に

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生命の起源。無機を志向する我々。

 太古、万事は為すがままであった。
現在より想定するに、そこには物質がただ各々に不変の性質を持ち、その因果によりめぐるのみであった。
もっとも、当時は観測者などいなかったので想像する他ない。
物質は生成変化するが、その最小にまで分解し説明するすべを今の我々は持ち合わせている。

 かくしてあるがままだったこの世において、膜を持つものが“生まれた”。
膜はその性格より内と外という区別を生むが、膜を持

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