軽井沢香澄
あくる日僕は灰になって 昨日来た方角に飛んでゆく 知る人は雨の薫りに僕を思い出し 暗雲の向こうに目をやるだろう あくる日僕は風となって 万来の光線を全身に浴びる 無限に近い光は時の彼岸に僕を追いやり 一切の差異が消滅するだろう あくる日僕はバッファーになって 世界の理を補佐する 裂け目に流れては縫い合わせ 人の世につかの間の安寧を与えるだろう あくる日僕は断続になって 繰り返し痙攣する君の頬を食い破る 真実は誤謬となって 知覚の幻影に蔑められるだろう あくる日僕は 君
二重入植。星間世紀の中頃には既に"先住民"という問題が表面化していた。つまるところ、人類に宇宙は広すぎたといえる。高速に近い航行技術は、核技術の次に不安定かもしれない。新人類の文明濃度にはムラが生まれ、改める試みは常に失敗した。星間開拓におけるルールは2つ。平和主義と先住民主権だ。"新たに入植した惑星に先住民が居住していた場合、先住民による惑星利用を認め、他惑星の国家による直接統治を禁止する"。何度も見かけるこのフレーズは、三重入植惑星であるここ"ユタ"では、守られているかは
つむじ風 塵と蛾舞う〻 朝ぼらけ 蕎麦食うか うどんにしよか 角打つか
頭にモヤがかかっている。ここ数日、数ヶ月。いつまで経っても晴れない。最近気づいたが、動かなければ問題がないのではないか?ゆっくりとキャンプを楽しんでいればよかった。
自然と言葉が歩いてゆく。 たまにそういう文章に出会える。小説でもエッセイでも、「あ、これ勝手に書かれちゃってるな」っていうところ。レシピとかを読んでいてもそう感じることがある。 流石に説明書では見たことないけど。 説明書の言葉が勝手に歩き始めたら果たしてどうなってしまうのだろう。どこに向かって歩いていって、どこまで歩いて行けるのだろう。あの子たちを自由にしたら、一体どんな遊び方をするのだろう。 そんなことを考えながら、河原の景色にタバコの煙を吹きかけた。規則的なスニーカ
文を書く、どれほど不毛なことか。 これは最早、営みとすら言えないではないのか。 のっぺりとした液晶を叩き点滅する文字は、生まれながらに死んでいる。 水疱まみれの死んだ水子が浮かび上がってくる。 それでもなぜ書く?死にぞこないの私が、何を生み出す? 読んでほしい誰かが居るからだ。淋しいナ。 振り返れば私の身体も水泡になりかかっている。 どこかで疼く声がする。「生きろ!お前が生きろ!」 生きるために書く。私が私であるために書く。生き損ないにならないように、必死で書
“混沌”と名の付くそれは好奇心に似た偶然によって我々の次元に存在を仮置きする。それは真理の一端でもあるし、我々が「恐怖」と呼ぶ暗闇から喚起する感情であったり、「狂気」と呼ぶ言語の構造的限界を超えた否応なしの表現でもある。 “混沌”は私たちの目からひた隠しにされている。この世に、空間に、次元に座しているあらゆる知覚者の視界より隔離されている。それは顔に空いた穴であり、眼球のスープであり、法則の例外のその外を引用しなければ私たちには知覚できない。しかしながら、単純な近似性と近
永遠に愛されるもの 君が手に入れるはずのもの それは目地の黒ずみであって 君の小説ではない
つまらない日常ばかりが記憶に残る 選ばなかった道の先ばかり考えている 「ないもの」の積み重ねで私の人生は成り立っている 見たことのない宝石の美しさを私は知っている
電子書籍は泳がない魚だ 彼らはガラスの中でゆらゆらブレている 揺らぎは彼らにとって最も重要な運動だ ゆがみ、なおり、再びゆがむ そうして情報はエントロピーを命に変えてゆく
私は日記が嫌いだ。 日々に特別な事などなく、書くために何かをするなど、おぞましいと思っていた。 でも、今では皆がやっている。私もやっている。 それでも私は日記が嫌いだ。 それでも書く。日記にすら頼るほど、私の精神は痩せ細ってしまった。
明日のことばかり思い出していませんか?
続)現在の状況もそうだ。地盤があり、そして変化が起こった。感染症による監視と処罰は開かれた門から入った客だ 。さて、私達はどうする。罹患していようといまいと、ポスト・ウィルスという新たな精神様式への変異は止められない。ミーム的には、私達はみな感染済だ。(3/3)
続)Vaperwaveはミームであった。ミームとは精神に伝播するウィルスのようなものだ。移る人こそ限られたが電波を通じて確実に伝わり、私達の精神を「新たな様式」へと促した。勿論、地盤あっての変化であるが。私達は歓迎した。同様のことが今起こってる。(2/3)
Vaperwaveの後にコロナによるStayhome(手繋ぎ軟禁)が流行るというのは、ただの偶然なのだろうか。私は大きな流れが通底しているように見える。(1/3)
何もないこの町で何かを書くには、一体どうしたら良いのだろう。 何か書かなければ自分までも色を失ってしまいそうで不安になる。 誰かいないか。 誰か。