無知の知
わたしは子供の頃から知らない事が多くて
そんな自分が悲しい時があった。
その日は珍しく、父親が塾のお迎えにきていて
おうちまでの15分ほど、車の中で2人きりで
普段はほとんど会話なんてしなかったのに
「かすみは知らない事が多いみたい」と話してしまった。
前を見ながら運転している父親は
「なるほど」と言って
「無知の知という言葉を知ってますか」と聞いてきた。
「知らない」と言っていいのかわからなくて
彼の右顔を黙って見ていた。
「知らない事があるのは悪い事じゃないんですよ。
ただ、知らない事を認めない事は恥ずかしい。
あなたは自分に知らない事が多い事と、
完璧じゃない事を知っているのだから立派ですね」
その時のわたしは、父親の言葉を
ただの慰めの言葉としてしか受け取れなかったし。
哲学者の様な深い理解は出来ていないと思うけれど。
ずっとずっと、忘れられない言葉になった。
「わたしは知らない事が、人よりも多い」
大人になった今でも変わらない。
その事実を認めて、一緒に生きている。
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