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カタクリに想う


先日、子供の頃によく遊んでいた裏山へ久しぶりに行ってみました。

ここにはたくさんのカタクリが咲いていたはず、そう思って探してみたのですが、どこにも見当たりません。
知らない間にみんな乱獲されてしまったのかと思うと、とても寂しく悲しい気持ちになりました。

でも、冷静になって考えてみたら、ある事に気が付きました。
カタクリと同じようにあちこちに芽吹いていたはずのウバユリも、エンレイソウもどこにもないのです。

ウバユリはユリの仲間ですが、地味な花色と形をしているので盗掘されるようには思えません。
そういえば、林の中が以前よりも暗くなっているような…そんな気がしました。

調べてみると、本来カタクリは落葉樹林下に生える植物でした。

冬に葉を落としていた落葉樹が初夏に葉を茂らせるまでのほんの短い期間に、カタクリは一足早く葉を開いて懸命に光合成を行い、毎年コツコツと蓄えた栄養を使って花を咲かせていたのです。

そんな綱渡りのように命を繋いで生きている植物はスプリング・エフェメラルと呼ばれ、カタクリの他にもニリンソウやフクジュソウなど可憐な花を咲かせるものが多いです。

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実は、子供の頃にカタクリが咲いていたこの場所は杉林でした。
おそらく、杉の木が若いうちは地表に充分な光が差し込んでいたので、カタクリにとって最適な場所だったのでしょう。

それが、杉の木が大きくなるにつれて林の中は暗くなり、ギリギリのところで命を繋いでいたスプリング・エフェメラル達には厳しい環境に変わってしまった…。
そう解釈しました。

ここの杉の木は樹齢50~60年くらいで、木材として利用するには十分な太さでした。
もし木材の価格が下落していなかったなら、今頃は伐採されて再び明るい林になっていたのでしょうが、林業が衰退してしまった現在は、価値を見出されずに放置されたままです。


僕達 人の 営みや価値観が変わったことで、人知れず消えていく命がある。
そんな事に気付かされた1日でした。


帰り際、林の入り口に一輪だけ咲いているカタクリを見つける事ができました。😢

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