見出し画像

カオスなSNSマーケティング情報を取捨選別する際の「信頼できる筋」と「収集のスタンス」

みなさん、こんにちは。柏のひとという名前でいつもTwitterに生息しています。

最近SNSでこんなツイートをしたら、Twitterで非常にたくさんの方から反響がありました。

FacebookやTwitterを始めとしたSNS(CEOのジャック・ドーシー曰くTwitterはSNSじゃないらしいですが…)、noteやMediumを始めとしたブログプラットフォームにて個々人が情報発信しやすくなったことにより、数多くの「SNS活用術」が世に溢れるようになりました。

しかし、それと同時にデータに基づかない結論や、論理的に飛躍が目立つノウハウも少なくないように見えたため、自分への戒めとして上のツイートをしました。

その結果、SNSを専門に扱う企業勤めの方、Webメディア等で発信をする方から多くの反響をいただきました。

というわけで、自分なりに「SNSマーケティングってなんだっけ?」と考える丁度いい機会だと思ったので、これを機にnoteにまとめてみようかなと思います。


SNSマーケの大前提は「マーケティングにおける一手法」

当たり前のことですが、SNS活用は目的にはなり得ず、「マーケティングにおける一手法」という大前提への理解が大切です。

「そりゃそうだろ」と思うかもしれませんが、ときたまSNSマーケティングの活用方法を説く際に、これがスッポリ抜けている人は少なくありません。

また、そもそもの話になってしまうのですが、「マーケティング」という言葉の定義がブレたまま「SNSマーケティングは大事」と唱えてしまう人も多く存在します。


当たり前だけどチェックすべき「マーケティング」の定義と目的

そこで「マーケティングとは?」という話になるのですが、この言葉自体が多くの解釈を生んでいるが故に、全体像が非常にわかりにくいのが現状です。

一応、日米のマーケティング協会が示している定義としては以下となります。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。(出典:日本マーケティング協会の概要,1990)
Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.(出典:Definition of Marketing,2013)

上記の通りと言ってしまえばそれまでですが、包括的な意味でマーケティングを捉えていることにより、抽象度が極めて高い内容です。

ただ、どちらも定義策定時から年月が経過している点は見逃せません。日本マーケティング協会の定義は今から約30年前に発表され、アメリカマーケティング協会の定義も、比較的新しいとは言えど2013年にリリースされた情報となります。

しかし、どちらにも共通するのは、「顧客との相互理解」を進めるための手段であること。アメリカの場合はその相手がCustomers、Clients、Partners、そしてSocietyまでと広く定義しているものの、共通している点は価値提供の手段におけるコミュニケーションとしての役割を担っている部分と言えるでしょう。

そのため、マーケティング施策を考える際には「コミュニケーション」への理解が必要不可欠な要素となります。


バージョンアップを続けるコトラーの理論

また、古くなりつつあるマーケティングの概念を補足する上で、コトラーが提唱する考え方への理解こそが、今の「SNSマーケティング」へと繋がっていきます

コトラーマーケティングでは、現在「マーケティング4.0」までバージョンがアップデートしていますが、ソーシャルメディアへの言及が初めてあったのは「マーケティング3.0」を発表した時でした。

マーケティング3.0:人間中心の考え方(価値主導)
コトラーが「ニューウェーブの技術」と定義したソーシャル・メディアの台頭により、 マーケティング3.0は生まれました。
企業は従来から、「差別化」を意識した マーケティングを行ってきたため、21世紀初頭にはその状態の過渡期を迎えつつありました。
この概念では、従来「消費者(Consumer)」と呼ばれていた人々が「生産消費者(Prosumer)」へと変わることを可能としました。なお、コトラーはソーシャル・メディアを二つの大きなカテゴリーに分類し、それぞれの特徴を記しています。
(出典:【今さら聞けない!?】コトラーが提唱するマーケティング3.0と、 その先のマーケティング4.0における戦略とは?|ferret [フェレット] 

つまり、20世紀のマーケティングでは「受け身」であった消費者が、現代ではスマートフォンを持つようになったり、ソーシャルメディアを利用するようになったりした結果、生産活動を行う存在へと昇華したことに言及しています。

いわば、かつてのマーケティングは企業目線でのみ取り組めば良かったものの、21世紀では顧客と共に作り上げる概念、「共創」が必要となったのです。


日本で「共創」を掲げ続けてきた人たちとは?

日本の名だたるマーケターの中で「共創」の第一人者をご紹介することは、いわゆる「好み」が現れてしまう部分ですが、僕自身だから書くnoteとしては以下2名を推したいと思います。

1人目はグロービス大学院教授で、マーケティングの授業で教鞭を執る松林博文さん。マーケティング3.0総合研究所を自ら立ち上げ、その所長として自らが執筆した本は、数多くのマーケターが持つ参考図書となっています。

プライベートでは自然をこよなく愛することから、年中海岸沿いに滞在していたり、パーティーが好きでUlrraなどのフェスにも積極的に参加していたりする、いわゆる「パリピ」な側面もある方です。

しかし、マーケティングに対しては非常に真摯なスタンスを貫いており、自身と顧客の壁を取り払うことを最重要視し、マーケターが主体性を持つ存在であることを強く求めています。

松林氏:関係性があるというか、そのものですよ。傷ついた経験がないと浅くなる。死んじゃうと生き返ってこれないけど、恋愛は失恋しても生き返ってこれる。失恋が多い人の方が マーケティングに向いている。失恋したことがない人の マーケティングはダメだと思う。一番大事なことは失恋しているかどうかだと思いますね。(出典:最強クリエイターが教える常識にとらわれない考え方 (スマイキー株式会社 府川氏/グロービス大学院 松林氏/ HEART CATCH 西村氏/チームラボ 椎谷氏)|ferret [フェレット]
松林氏:自分の役割にカテゴリに囚われた瞬間、人の魅力って10分の1ぐらいになっちゃうと思う。自分の感性とやりたいことを突き詰めれば、レッテルなんて周りが勝手に貼ってくれるんですよ。すると名刺も会社もいらなくなる。そういうところに囚われてる現代はものすごく時代遅れ。僕がここに来ているのは、そういうものを全部剥がしたいから。自分が自分であるために人と触れ合う人間でありたい。(出典:同上)

「共創」を掲げるのであれば、マーケター自身が圧倒的当事者であることが極めて重要であること。そうした部分で松林さんの影響を受ける一流マーケターは日本に数多く溢れています。


そして、ここで2人目のマーケターにバトンタッチを。ご紹介するのは、株式会社トライバルメディアハウスで代表取締役を務める池田紀行さん

「戦後70年続いたマーケティングパラダイムが変わったこと」に強い問題意識を抱え、企業一丸で熱狂ブランド戦略を掲げています。

池田さんのコラムでは、「売り手の発想」のみによるマーケティング戦略への痛烈な批判があり、顧客が熱狂するための仕組みづくりを説いています。

また、自身のブログには「Tribal Marketing ikedanoriyuki .jp | ソーシャルメディアのその先へ」というタイトルを付けているように、ナショナルクライアントや政府機関をクライアントに持ちながらも、SNSだけでは完結しないマーケティングに数多く言及しています。


「信頼できる筋」の見極め方

今回自分がファンであるマーケター2名ご紹介しましたが、お二方に共通する点として、コトラーを始めとしたマーケティング研究者の原典を忠実に踏襲していることが挙げられます。

「自分らしさ」や「主体性」を重要視する両者ですが、その理論は決して飛躍したものではなく、アカデミックな研究を丁寧に棚卸し、自身のポリシーに則って再解釈を行い、マーケティング戦略に組み込んでいる点がミソです。

そのため、私が考える「信頼できる筋」はマーケティングの第一人者の概念を元に理論を組み立てている方々となります。

トレンドや事例を学ぶのも勿論大切なことではありますが、こうした体系的な理論を知ることで、自らの施策にも再現性を持たせることが可能となります。


「収集のスタンス」として大切なのは“再現性”

ただ、こうした抽象度の高い理論を学んだ後に大事なのは、「自分が普段取り組んでいることに再現できるか?」という部分になります。

だからこそ、上記の理論の学んだ後には自らのマーケティング施策の仮説に組み込み、PDCAを自分で回すことが重要になります。

ferret創刊編集の飯髙さんもこちらの件に言及していますが、SNSに関する知識は、「人から学ぶこと」以上に「自分で主体的に学ぶこと」の方が極めて重要となります。

また、同様の内容はSnapmart株式会社のえとみほさんも、以下のように社員にはSNSを普段から使いこなすことを求め、そこで学んだ内容をクライアントに還元して欲しい旨をツイートしています。

SNSマーケティングは気軽に試せるが故に、誰しもが成功体験を得やすい方法ではあります。

しかし、自らの施策と他所で成功した施策を比較検討し、共通する部分を適切に見出す作業を怠ってはなりません。

マーケター自らが主体的に施策を行うことに妥協せず、こうした地道な積み重ねを繰り返す。こうした取り組みが、今後マーケティングに携わる人には求められてくるはずです。

将来的には、「マーケター」という企業目線の言葉は置き換えられ、マーケティングを担う立場の人は「ファシリテーター」や「コミュニケーションプランナー」に近い存在となるのかもしれません。

けれども、顧客との関係性を築く立場にいる方であれば、一流の研究者が発表した原典を適切に棚卸し、自身の取り組み方、スタンスをアップデートし続けることを意識する必要があります。

カオスなSNSマーケティング情報を取捨選別する際、こうした「信頼できる筋」と「収集のスタンス」が顧客構築のヒントとなれば、自分としては嬉しい限りです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?