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強き美しき母に #9 お姉ちゃんみたい

よもぎでございます。連載第9話です。前のお話はマガジンから。

しばらく投稿できていませんでした。あと2話でおしまいなのでサラッと行きます!

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お母さんが仕事をしばらく休んでいることもあり、この長い帰省期間中はずっとお母さんとおしゃべりしていた気がする。

お父さんは勤務時間が不規則で、早朝から午後の早い時間までの日もあれば、昼に出て夜中に帰ってくることもある。

家で会う時間はごく僅かだった。

今日は朝出て、夕方に帰ってくるスケジュールのようだ。

「お昼、カフェにお茶しに行こう」

お母さんが急に言い出した。
まぁ別に急ぎの用事はないし、英語の教材を持ってきたけどやりたくはないので、もちろんお母さんと出かけることにした。

『買い物に行く』などの予定がないのに、ふらっと外に出てお茶をして帰ってくるなんて。

お母さんとそんな贅沢な時間を過ごしたことが、今まであっただろうか?

今までお母さんは週7で仕事をしていたし、私もずっと実家から遠くの県にいたので、そもそも二人で外出すること自体がかなりレアだった。

「最近よく行くコーヒー屋さんがあるのよ、ドリンクチケットまとめ買いしちゃった」

車でそのカフェに入ると、駐車場は一杯、店の外まで人が並んでいた。

ちょうどお昼過ぎでみんなコーヒーが飲みたい時間なんだろうか?

それにしても人気店のようだった。


               ・・・


お母さんのドリンクチケットで豆の違うコーヒーを2杯。

ケーキとフルーツサンドでお母さんが迷っていたので、両方頼んで半分ずつ食べようということになった。

お母さんは胃がないので、一気に食べすぎると体調不良が起こる。

ついこの前までは一口水を飲んだだけで吐き戻したり寝込んだりしていたが、最近は慣れてきてマシになったと言っていた。

それにしてもケーキとフルーツサンド半分ずつなんて絶対に無理だろうと思いつつ、余ったら私が食べればいいやと思って注文した。

ケーキとコーヒーが到着したタイミングで、お母さんと一緒に写真を撮った。

よくあるカフェのよくあるメニューだけど、この時間は私にとっては特別。

コーヒーを交換して味比べをしたり、ケーキを半分こしたり。

お母さんが「食べている」ことがとにかく嬉しくて、ケーキを食べるお母さんをじっと見ていた。

痩せてしまったけれど、毎日違うウィッグやスカーフでおしゃれを楽しんで、お気に入りのカフェを見つけて通っている。むしろ前より若々しい。

帰りの車の中で、お母さんと出かけた今日の写真をインスタグラムに投稿した。


                 ***


次の日の朝。アラームを止めてスマホを見る。

起きたらまず、LINEやらメールやら通知をいっぺんに確認していく。

インスタグラムの昨日の投稿には、たくさんの反応があった。

その中で、友人から「お姉ちゃんみたい!」とコメントがついているのが目に止まった。

そう、私のお母さんは若々しくてとっても綺麗なの。

大きな二重の目、すっきりした眉、すっと高い鼻に薄い唇。

私のお母さんは、世界一美しい。

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