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エッセイ《かみなりと…》



昨晩、夜遅く、日付が変わろうとしている頃、

私の身体に、鋭い音が響いた。

雷。かみなり…



小さい子は、怯えていたかな。お母さんやお父さんに怖いと言って泣きついて、優しいお話を聞かせてもらって、「大丈夫だよ」と隣で呟いてもらっていたかな。


小さな頃は、私も怖かった。

一瞬の強く大きな光よりも、地面にまで響いて、私たちを丸ごと飲み込んでしまう大きな音が、怖かった。



私にはどうしようもできない自然の恐ろしさ、ただ過ぎ去った時の安心を待ちながら、母や兄弟とロウソクを囲んで待つ…





かみなりは、未来を見せることなく、過去の記憶を思い出させる光。



だと、私は思っている。

しかし不思議だ。思い出すのは温度だけ。

匂いも、目で見たものも、触れていたものも鮮明には思い出せない。

少し強張った身体と、背中と前の温度差だけが、鮮明だ。そこに、生物の感覚の凄さを感じる。



そんなことを考えながら、部屋の明かりを消して、でも少し怖いから、テレビは小さくつけて、

一瞬にして外を照らす大きなあの光を、私は待ちわびていた。


次はいつ光るのかしら。

もしかしたら、稲妻が走るかしら。

みたい、みたい、みたい!



何度も何度も、真っ暗な空が、青紫色に染まる。


あの「稲妻」というものは、いったいどのくらいの温度なのだろう。そんなに熱くはないかしら。

でも、一本の木をまるこげにしてしまう映像なんかを見たりしたから、きっと熱い。1000度くらいだろうか。



また、光る。青紫…!きれい!


そういえば、バックトゥザフューチャーという映画を知っている。

あれは確か、稲妻をエネルギーにして…



また光る。美しい、、たまらない、、声を、上げたい、、


タイムスリップ、時空を飛び越える話だったよな。一話は確か、過去に戻るお話。

ん、待てよ、、、



私の頭の中が、一瞬のひらめきで溢れた。


あの物語の作者と、私の感覚が一瞬、同じなような気がしたからだ。

「かみなりは、未来を見せることなく、過去の記憶を思い出させる光。」

まさか、、

私のいいような捉え方かもしれない、頭のおかしい空想なのかもしれない、私の記憶に留めておこうとも思った。


でももし、作者がタイムスリップの話を作ろう!と発奮し、設定をパート1から考え始めたのだとしたら、、、


「過去に戻る」という経験を、かみなりを通して作者もしていて、それを感じていたのではないか、、、

その可能性はなくはないだろう、

そう、思いたい、、!



作者もきっと、かみなりが好きだったのだな。

と、思うことにした。

そうしたら、なんだかさらに嬉しくなるのだ。



繰り返し強く光る空を見ながら、私はずっと微笑んでいた。ありがとうと、感謝すらしていた。

変なものだ。

人間を一瞬にして死に至らしめてしまうのに、この瞬間に立ち会えたことに感謝をしている。

美しさは、危険にも、足を踏み入れているのか…



まだ興奮が冷めないが、何時間でも眺めていられる今日の雷も、もうそろそろ、今日はやめにしなければならない。

心が動きすぎては、危ない、冷静になろう。

かみなりには、妙な中毒性すら感じる。


コップ一杯の水を飲んで、カーテン越しに不連続に灯る光を体で感じながら、眠りにつけるこの今、瞬間に、心地よい安らぎを覚え、ベッドに横になった。


次に会えるのはいつか、と胸をドキドキさせながら、明日から始まる冒険に、備えて…







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