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『帝国という名の記憶』読書感想。

“イマゴマシン”という他人の記憶を埋め込み自らを強化するシステムを持つルスエル・ステーション出身の大使マヒートは、このマシンをきっかけに次期皇帝の王権戦争に巻き込まれてしまう。
彼女は大使の文化案内役のスリー・シーグラス、友人のトゥエルブ・アゼイリアと共に次々と降りかかる災難をかい潜り、平和への道を模索する。
大問題を対処する片隅で繰り広げられる、詩吟によるコミュニケーションや仄かな恋、テイクカラアン人に対するルスエル育ちであることの劣等感など、細かいところまで芸が効いている。
さらにイマゴマシンにより人格が侵蝕されることの危うさや折り合いの付け方など、現代人の感覚だと拒否感を感じてしまうこのシステムへのベストな共生の可能性を示してくれているようで面白かった。
人格が変わらないことが良いと一概には言えず、経験で人間に深みが出るように、人格を足すことによって補強できることもあるのではという提示には考えさせられる。
もし足すことになっても足される側が余程しっかりしていないと飲み込まれてしまうだろうし、皆が皆取り入れられるシステムではないだろうな…

後、“登場人物の名前で上下巻分の行数稼いでるのでは?“と疑ってしまうほど、登場人物の名前が長い!
そこだけマイナス。

それ以外は問題なく面白かった。

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