マガジンのカバー画像

149
運営しているクリエイター

#口語自由詩

【詩】かくれんぼ

【詩】かくれんぼ

顔すら思い出せないのに音だけが耳から離れない

絞め殺された黄昏の断末魔によく似たあの人の名

澄んだ茶色の瞳は

空間を切り裂く線香花火に囲われた

晩夏の太陽

いつも火薬の匂いがしてた

偽りの記憶が立ち上げる見ず知らずの男

手の甲にあるのはアルタイル

わし座のかたちそのもので

そこに流れる天の川に

leap of faith

したかった

できなかった

心残りだけが宙に舞い

もっとみる
【詩】fly

【詩】fly

小蝿を疎ましく思わなくなったのは

咽び鳴く蝉の声で目覚めたあの日から

泳ぎ揺蕩う小蝿の群れは

今は亡きあの人のかたちをしてた

腕に塗りたての日焼け止め

絡まり込む小蝿が愛おしい

私はあの人を取り込むハエ取り紙

表皮だから

表面であり

表層だけれど

それでも嬉しかった

いつの間にか小蝿はほそびに変わり

私の本質の一部になってしまった

【詩】故郷

【詩】故郷

曖昧なニュースに

町並みは遠ざかる

走馬灯巡る再会の日は一瞬で

不確かな足場は忽ち崩れ去り

復活の合図は偽りだったことを知る

目を瞑ると見えるあの景色

雨の日は晴れの日より躊躇いなく土筆をつめる

そんな凡庸さが孵化する前に

やらなければならないことがある

【詩】snow

【詩】snow

“美幸ちゃん“だったか

“美雪ちゃん“だったか

字は忘れてしまった

空の彼方から

雲雀の透き通る鳴き声が聴こえる

顔をあげると彼女がいた

いつも誰かが隣にいて

いつもみんなに愛されていた

こぼれ落ちる木洩れ陽のトンネルですら

彼女を祝福しているように見えた

美しい笑い声が印象的な女の子

神を信じ

神に踏み躙られ

それ故に

より一層神を信じていた

私たちは同じ寮に住んで

もっとみる