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2022年4月の記事一覧

【詩】unhappy

【詩】unhappy

しっかり不幸になるとこれ以上不幸にならないような気がして安心できる

淡い期待さえもが頭に過ぎり

ときめきで心が踊る

ゴミ捨て山を養分として出でた西瓜の実

同じ因果で生まれたこの特性は

私の一部として根付いている

教科書では教えてくれないことしか身体には残らない

ゴミ山から這い出た不幸を食い尽くす黒曜石

無尽蔵に交配し続けた突然変異の最果てとしての淡水魚

平たく言えば片端のポリアン

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【詩】泣き女

【詩】泣き女

泣くことが使命だとしたら

それしか望まれていないとしたら

それが人生で成し遂げる全てだとしたら

亡きに泣き

無きに泣き

いつか乾いてしまうことだろう

萎えて

縮んで

ほんの少しでも

陽の目を見ることができたなら

いつかあの人と湯浴みを共にする

ヘチマのたわしになれるかもしれない

斜めに陽の刺す薄暮の時

老いたあの人のシミだらけの背中を

撫ぜられさえすれば

幸せだったと

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【詩】怪盗の理由

【詩】怪盗の理由

愛だけが繋ぎ止める精神畸形

歪んだ知恵の輪の2人

死体の山から咲き誇るのは

真紅のカーネション

愛さえあれば

何処へでも

愛さえあれば

許される

愛だけが

生きる意味

愛を言い訳にしないで

メメント・モリ

死体をマリオネットにした

英雄奇譚にはもううんざり

君は愛と情熱を取り違えている

【詩】だし巻き卵に騙された

【詩】だし巻き卵に騙された

だし巻き卵に騙された

アカペラ歌手が歌ってた

涙の塩味効き過ぎて

しょっぱくて涙が出たと

赤色のガーベラは歌う

そばかすなんて気にしないわ

鼻ぺちゃだってお気に入りよ

可愛らしい小さなガーベラは

しょっぱい卵に騙されて

根っこから花びらの先まで斑点だらけ

かすれた声で歌ってる

そばかすなんて気にしないわ

潮風に晒されて

1ひら1ひら消失してゆく赤い花

毛の抜かれたブロイ

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【詩】アメリカザリガニ

【詩】アメリカザリガニ

口の中でつぶやく魔法の言葉は

誰の元にも届かない

こぼれでる破裂音が気泡に変わり

宙に上っていくのを見た瞬間

水底にいることを知る

見上げる空から注ぐ光の矢

美しすぎて惨めになる

悪態をつくと同時に浮かび上がる

虹色のシャボン玉の優しさに

もどかしくなり下を向く

深淵にさえ見放された私は

泥を掻き底へ底へと潜っていく

いつかどこかで合間見えた

あいつの鋏が

”こっちにお

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【詩】ガーフィールド

【詩】ガーフィールド

消火器の影から見ている目が気になった

無言の応酬

メンチの切り合い

収拾がつかなくなり

思い切って覗いてみた

そこには

行き場をなくしたガーフィールド

好戦的とは程遠い目つきに

拍子抜けして

頭にきて

一発ぶん殴ってやった

宙に浮かんだガーフィールドは

夕日に磔にされた

真っ黒なただのデブ猫

少しだけ可哀想になって

すり傷程度に満たされた

【詩】メッセージ

【詩】メッセージ

くるくると空回る

柔らかく跳ねる羽毛

出立のルーティン

いざ行かん

今行かん

何者にもなれないなれない

全ての人に捧ぐ

愛のメッセージ

ばかうけ型の宇宙船は

滑稽で切ない

隔たりのシンボライズ

鉄壁に弾かれた言葉の行方とは

音節、母音、子音、吐息に分解し

蜂の羽音と共に宙を踊る

微かにガラスの鈴の音が聴こえたのなら

きっとそれがメッセージ

【詩】柔肌

【詩】柔肌

1日はたわしで撫でられる柔肌によく似ていて

擦るたびこぼれ落ちていく

ひとなでひとなで

やさしく丁寧に残酷に

洗いざらいになっていく

日めくりカレンダーとは違い

終わりは見えず

少しずつ傷みの総量が増していく

削られた1日の最後には

赤ん坊色をした桃の匂い

静脈の濃い紫

やがて滲んだ赤となり

白が見えて少しほっとする

遠くから汽笛の音が聞こえる

リセットの合図

今度は

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【詩】バターナイフ

【詩】バターナイフ

海へ飛び込めバターナイフ

食器棚の片隅で

陽の目を見ない日々はもう終わり

イワシの群れと共に回り

銀色の嵐を起こせ

鮫の腹をかっ裂き

心踊る

踊らされる

操られる

血塗られた夢を見よ

それでもバターが恋しいのなら

牡蠣殻の上に降りてくればいい

甘やかな薫りに包まれて

心ゆくまでゆっくりおやすみ

【詩】かくれんぼ

【詩】かくれんぼ

顔すら思い出せないのに音だけが耳から離れない

絞め殺された黄昏の断末魔によく似たあの人の名

澄んだ茶色の瞳は

空間を切り裂く線香花火に囲われた

晩夏の太陽

いつも火薬の匂いがしてた

偽りの記憶が立ち上げる見ず知らずの男

手の甲にあるのはアルタイル

わし座のかたちそのもので

そこに流れる天の川に

leap of faith

したかった

できなかった

心残りだけが宙に舞い

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【詩】blue

【詩】blue

大事なものはいつもどこかへ

転がり去ってしまって

戸惑いと焦燥だけを残して消えていく

遠のく脚音はビブラート

最果ての音楽を聴きながら育った植物は

汚泥を礎として生まれ閉じる

薄いブルーをした果実は

スイカの匂いがするけれど

中身は透明なブルー

薄皮越しに溢れそうな程

悲しみが詰まっていた