「えーえんとくちから」

このタイトルだけでピンときた方とは
一緒に美味しいお酒を飲めそうな気がします

こちらは笹井宏之さんの歌集のタイトル

もちろんこれだけでは意味がわからなくて
全貌が見えて初めて意味がわかる

でも最初から答え合わせをするより
自分で意味を手繰り寄せて
悩んで、答えを捻り出して

それからの方がこの歌は美しいと思うので
少しお付き合いください

さて

「えーえんとくちから」

率直にどんなイメージが湧きますか？

私に浮かんだのは
泣いている幼い子

声を押し殺すことなんてできなくて
感情が溢れるまま、とめどなく涙は流れる

えんえんと、えーえんと
周囲を憚ることもなく大声で泣く

私のイメージはそんなところ
全てがひらがなであることも
このイメージを加速させます

御託はこれぐらいにして本題に
この歌の全貌はこのようなものです

「えーえんとくちからえーえんとくちから
　永遠解く力を下さい」

この歌はある日Twitterで突然流れてきたもの
もう何年も前のことです

しかしその時覚えた衝撃をいまだに覚えています
美しくて、涙が出そうになった
えーえんと、声を出して泣くところだった

私が想像したのは幼く、無力な涙

実際に涙は流れているのかもしれない
えんえんと大きな声を出しているのかもしれない

しかし求めているものが決定的に違う

「永遠解く力を下さい」

永遠とはなんだろう

もうあなたのそばにいない誰かへの未練か
理不尽を目の前に受け入れられない自分の弱さか

そして「下さい」であることも深い

もうあなたにはどうしようもできない
そんな感情が伝わってくる

永遠解く力を持とうとするけれど
足掻いても持つことはできなくて

涙でぐしゃぐしゃになった顔とプライドで
誰ともわからない誰かに
助けを乞うことしかできない

思い浮かべた未練の相手か
この世にもういない大切な家族友人か
普段なら信じてもいない
都合のいい相手扱いの神頼みか

縋るような、祈るような
組まれた両手が思い浮かぶ

「下さい」だけでこれだけ情景が浮かぶ
素晴らしい歌です

たった27文字の50音の寄せ集め
それだけでこれだけの感情が生み出せるなんて

言葉は素晴らしい
再々認識しました

昨日無印で見つけたので
しっかり購入しておきました

印税よ届け