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すべては幸せのために


私は、5月にSeat Tableという屋号を付けて起業しました。


「みんなで囲む笑顔の食卓」をキャッチコピーに、障害があってもなくても関係なくみんなで食卓を囲める社会にしたい。みんなで食卓が囲める社会はきっと誰もが幸せになれる。
こんな思いから起業を決意したわけですが、それは言語聴覚士としての経験と神経難病を持ちながら生きてきた自分自身の様々な体験、どちらもがあっての行動だと思っています。
どちらの視点も持ち合わせているからこそ、笑顔で食卓を囲む為には実に色々な切り口から整えていく必要があるなあと思うわけです。
そして、それは最期の時まで守られるものだと思うのです。


言語聴覚士として学んできたこと


言語聴覚士は「話す、食べる、聞く」の専門家です。私はこれまで、コミュニケーションや摂食嚥下に困難を抱える方に多く関わってきました。その中で、こういったその人自身が抱える障害が少しでも良くなるように努めることは私たちの役目だと思ってきました。
一方で、その障害を持ちながらでもその人らしく豊かに暮らせる方法を一緒に探していくこともまた、大事な役目だと思ってきました。

食卓の場において、形態や見た目、味など食事そのものについて考えることは一番重要なことかもしれません。ミキサー食のような噛まずに丸呑みできるものがいいのか、いや、それより舌で潰せるくらいの形のあるものでも食べられるか、その人の食べる力に見合った食事の形態であるかどうかは大切なこと。なおかつ、見た目に美味しそうか、食べて本当に美味しいと感じなければ笑顔は出ない。笑顔の食卓には、食事の調整は欠かせないでしょう。

でも、それだけは不十分です。いくら見た目に美しく味が美味しいものだとしても、お箸がうまく使えなくてこぼしてばかりだったらどうでしょうか。食べることがイヤになりませんか?その人にとって使いやすい、食べやすさを感じる最適な食具を使うことも、笑顔の食卓には必要なことだと考えます。

また、環境調整は大きなカギだと思っています。例えば、イスとテーブル。食事はある程度時間をかけて行う行為です。その時間の中で、その人にとって座り心地の良いイスであるかどうか、食べやすい高さのテーブルであるかどうかはリラックスした姿勢を保ち笑顔の食卓を囲むための大事な要素だと思います。

そして、忘れてならないのがコミュニケーションの問題です。コミュニケーションなくして笑顔の食卓はあり得ないのですから。とりわけ「耳」の問題は大きいと思います。会話が聞こえないとコミュニケーションが楽しくなく、誰かと食事をしようという気持ちは起こらないものです。

これらは、言語聴覚士としての私の知識です。笑顔の食卓のためには、食事、食具、環境、コミュニケーションなど考慮しなければならないことはたくさんあると思います。

難病当事者としての思い

元々私は食べることが好きです。外食も好きであちこち行きたいと思う方なのですが、これまで行きたいと思ったお店全てに行けたわけではありません。行きたいと思ったお店に限って入り口に階段があるため諦めてしまったり、断られたこともありました。

外食ってやっぱり普通に楽しいと思うんです。毎日行かなくてもいいけど、たまに行くと元気の素になるし思い出にもなる。何より楽しい気持ちは、生きるエネルギーにもなると思うんです。

階段があるとか店内が狭いとか、物理的に改善が難しいことはお店側にもたくさんあるはずです。嚥下困難のある方の食事のメニューは作れないとか、こういった問題はもちろん大きくあるとは思います。

特別な配慮が必要な客層は少数かもしれませんが、現実にこういう客もいるということを知ってもらえるきっかけ作りができたらいいなあと思うのです。
それぞれのお店でできることは異なります。階段があるからといってスロープを絶対に取り付けて欲しいわけではありません。嚥下困難な方のお食事のメニューを作れるようにして欲しいわけではありません。
「どうぞどうぞ、車イスでもお手伝いしますよ。」少しのウエルカムの気持ちをいただけると行きやすくなると思いますし、嚥下困難な方のメニューも、これはできないけどこれくらいなら、と色々なやり方があることを知っていただけると、外食の選択肢は増えると思います。

色々な困難を抱えた方でも外に出て笑顔の食卓が囲める暮らしを、外食産業の方々と一緒に作っていけたら、こんな素敵なことはないなあと夢を描いています。

最期の時も

私は言語聴覚士という専門性と、難病当事者という2つの視点を持ってSeat Tableを立ち上げました。
みんなで囲む笑顔の食卓。それは、最期の時まで守ることができるものだと思います。最期の時も笑顔で。きっとそこからも、幸せは続いていくのだと思います。命はつながっていくのだと思います。

すべては幸せのために。










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