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別れ道

 できるだけ静かで怖くない道を歩きたい。観光地の大通りはいつも人でいっぱいだ。その活気を求めて足を運んでいる節はあれど、やはり人に酔ってしまう田舎者なので、細くて人気の少ない路地があるとつい寄り道してしまう。

 表通りをまっすぐ突き進めない人間なのだ。このまま歩けば確実に目的地にたどり着けるとわかっていても、ほかの道を探さずにはいられない。
 こっちに行けば面白いお店があるかもしれない、この奥の方にすてきな場所があるかもしれない、なーんてフラフラ路地に入るくせに方向音痴だから知らない街で迷うのだ。
 あーあ、やっぱり表通りを真っ直ぐ行けばよかった、と思うこともあれば、本当にすてきな出会いがあることもある。
 たいていは前者なのに、懲りずに脇道を行きたくなるのは、表通りとは違った発見があるかも…!と考えながら、アンテナをピーンと張って歩くのが楽しいからかもしれない。

 もちろん、表通りを歩けばそれなりに楽しいのだけど、なんだか寂しいというか、表面だけ撫でているような、もったいないような、そんな気持ちになってしまうのだ。


 このまま行けば順当に平穏な暮らしが続いていくだろうなという流れができていても、やっぱり私はほかの道のことをいつも考えている。
  旅と違って、未来には、予想図はあっても地図はない。どの道を選んでも、目的地にたどり着けるかはわからないし、そもそも目的地が存在するかもわからない。
 どこに向かって歩けばいいのかわからず、不安になる夜もあるけど、地図がないということは迷いようがないということでもある。

 自分の決めたことだけが足あととして残るだけだ。そう考えたら、好きなことして誰にも機嫌を損なわれず気ままにのんびりな気持ちで生きていく方が、絶対にお得だ。

 まずは私以外の誰かに私の機嫌を損なわれないような、強くしなやかな銅のようなメンタルがほしい。


美味しいごはんが食べたいです