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カサンドラ症候群の由来~悲劇の預言者王女の神話

近年「カサンドラ症候群」という言葉を
お聞きになったことがある方、
増えてきたかもしれません。

今回は、その症候群の名前の元となった
ギリシャ・ローマ神話のご紹介です。
アポロンの恋人でありながら
悲しい結末となった王女
カサンドラ(カッサンドラ)のお話です。
よかったらおつきあいください。

カサンドラ症候群とは

遡れば、パリスの審判の時でしたか、
そこから続くカサンドラのお話もしたかったのですが
それから随分おそくなりました。

その回はこちら

さてその前に、
近年言われているカサンドラ症候群とはどんなものかを
かいつまんでお話しておきます。
主に、「家族やパートナーに発達障害や
メンタルや情緒的問題がある人」と一緒にいる人が、
彼らとコミュニケーションがうまくいかなかったり、
それが辛いのだけれど周囲に理解されないこと等が原因で、
身体や精神面に不調が現れる状態
を指します。
これは病気などではなく、あくまでも状態のことです。

そもそもパリスの審判のお話から

では神話ではそんなカサンドラに何がおきたのか、
パリスの審判のお話にさかのぼります。

天秤座の守護星金星、守護神ビーナス
アフロディーテについての回でお話しました
ヘラ、アテナ、アフロディーテの誰が一判美しいか
決めるのにこまったゼウスたちが
一番美しい女神に金のリンゴを渡す役目を
トロイの国の息子であるのに牧童をしていたパリスに命じた、
ここからなのですが、
詳しくはこちらをご覧ください。

トロイの国の王子と王女

さてこのパリスですが
先にも申したようにトロイの国の王子様です。
でも牧童として暮らしていました。

というのも、パリスが生まれる前に
父である王の前に預言者が現れました。
そして「生まれてくる子は、やがて父の国を破滅させる」
と告げたため、王は生まれたその子を山の中に捨てさせました。

けれど、ひっそり生き延びていて、
素晴らしい青年になっていたのです。
そこに女神が現れたということなんです。
神々は事情を知っていたということになりますね。

さてこのパリスの審判の後のことです。
彼は変わらずその後もひっそりと
ウシやヤギを飼って暮らしていました。
「アフロディーテが約束した
世界一美しい人にはやくと会いたいな」
と思いながら。

そんな時、実の父であるトロイの王が
競技会(格闘技)をひらきました。
そして、パリスが大切に育てていた綺麗な牛を
勝手に賞品にするとして、取り上げてしまったそうです。
パリスはとても残念に思いましたので
「じゃあいいよ、自分で取り返すから」と
競技会に参加しました。
勿論、王もパリスも関係性は知らぬままです。

そして彼は立派に勝ち抜きましていよいよ決勝戦になりました。
その相手は、実の兄にあたる王子ヘクトルでした。
ここでもお互いそんなことは全く知りません。

トロイの王には幾人か子どもがいます。
そしてその中の、末の方に妹がいました。
それがカサンドラです。やっと出てきました。
彼女もこの顛末を観ておりました。

結果はパリスの勝利でした。
けれど王族が負けるなど、そんな面汚しは許されないと
他の王子がパリスを殺そうととびかかろうとしたそうです。

そこに出てきたのがカサンドラ、
「やめてください。この人はただの羊飼いじゃないくて兄弟です。」
と叫びます。

それからです、
王様は、国を亡ぼすと予言されたからパリスを捨てた
にもかかわらず
立派な青年になって、しかも優勝するほど強かったので
すっかり過去を忘れて受け入れてしまいます。
ここからパリスは牧童からトロイの王子として
新しい生活をはじめます。

お話は音声でもお聞きいただけます。こちらから是非

アフロディーテとの約束果たされる…が

さてそんなある時です。
パリスはある仕事を任されます。

それはかつてギリシャにさらわれた
王の姉を返してもらう交渉に向かうことでした。
パリスの父であるトロイ王は
この姉を敬愛していたそうです。
さらわれたころはまだ弱小だったトロイですが
そろそろ力もついてきたので、
取り戻すと心をきめました。

そこでパリスに、
叔母である彼女を連れて帰ってこいと命じました

目指すのはスパルタの地でした。
到着後、スパルタ王と交渉しようとしたパリスです。

しかし丁度スパルタ王は
外国に行ってお留守だったそうです。
お留守番していた王妃でした。
そしてこちらが
絶世の美女と名高いヘレネという女性です。

旦那さん長期出張だし…と
退屈だったかどうかわかりませんが
パリスが乗ってきた船が豪華で
そして噂では王子がすっごいイケメンらしいと聞いて
会ってみたいなと思ったようです。

パリスが上陸し、島にある神殿に参拝したりしてたところに
ヘレネがやってきました。
そして、お参りおえたパリスが振り向くとそこにヘレネがいました。

パリスは思いました
「アフロディーテが約束した美しい女性とはこの人だ」と。

諸説ありですが
これをみたアフロディーテは、
すぐさま互いにエロスの矢をうたせたので
ヘレネも恋におちたというエピソードもあります。

そして叔母を奪還にいったはずのパリスですが
こともあろうにスパルタを攻撃して
ヘレネをトロイに連れ帰ってしまいました。

絶世の美女ヘレネという姫

さてこのヘレネですが、
スパルタ王の妻となっていましたが、
それ以前からも、とても有名な美女でした。
そこでギリシャ中の王様がプロポーズしたそうです。
ヘレネの父は、選べないので
ヘレネが好きな人と結婚しなさいと告げたそうです。
そして選ばれなかった求婚者たちには
「あなたたちが望むヘレネが選ぶのだから、
他の断られた人は、その後もみんなで、ヘレネが選んだ夫を助けよ」
という約束をさせたそうです。

つまり、当然、それ以外の男性がヘレネに手を出せば
全員が一致団結して、その男と戦うというお約束です。
ですから、あちこちの国王が
トロイのパリスめがけて責めてくることになります。

ちなみにこのヘレネは
ゼウスが白鳥にばけてレダに近づいてできた娘です。
ですから、それはそれはきっと、
魅力的だったことでしょうね。

トロイの木馬とカサンドラ

とういうことで
トロイに戻ったパリスの所に
ギリシャ連合軍が責めてきます。

実は、これはゼウスがわざと起こした戦争とも言われています。
10年も長い間の戦いになりました。

ある日トロイに上陸していたギリシャ軍は
「我々はもう引き上げます。負けました。これはお供えです」と
大きな木馬を残して船にひきあげました。
有名なトロイの木馬です。

トロイ側はそれを、
「木馬はお供えだから城内に入れないと
神様がお怒りになる、ばちが当たる」と考えました。

でも、そこで反対をしたのは
王女のカサンドラでした。

やっと登場しました。
「だめです、それをいれたらトロイは滅亡します」
彼女は必死で訴えますが、誰も言うことを聞いてくれません。

勿論、それ以前からも
「この戦争をしてはいけない、トロイが炎に包まれる」と
カサンドラは何度も止めようとします。
けれどやはり誰も耳をかさない。
それどころか「心を病んでいるからだ」と片付けられてしまいます。

結局トロイは、
カサンドラの言う通りに滅びることになりますが、
ではなぜ、王女カサンドラの言うことに
誰も耳を傾けなかったのか。

実はカサンドラは、元々
とても有名な予言者であり、
かなりの正確な予言をしていたそうです。
ではなぜ、そんな力を持っていたか、
それは、アポロンがその力をくれたからでした。

アポロンの恋人だったカサンドラ

太陽神のアポロン
恋多き神でありながら
すぐ女性から逃げられたり
美男子なのに敬遠されるアポロンです。

カサンドラも、とても美しい王女だったので
アポロンは一目見て気に入り、口説きます。
オリンポスの神、太陽神に「こっちにおいで」といわれて
「嫌です」とはなかなか言えないものでしょう。

でもカサンドラは気が進みませんでした。
ですからとても渋っていました。
そうしたらアポロンが言いました。
「では、凄い予言の力をあげよう」

そうなれば、トロイの国の行く末もわかります。
以前、王様はパリスが国をほろぼすと予言されて
彼を捨てた過去もありますから、
もしかしたら、これは欲しい力だったのかもしれません。

そういうことで、予言の力をもらったカサンドラは、
アポロンの恋人となりました。
しかししばらくして、カサンドラは未来を見ます。
「わたしはアポロンから捨てられる」

そこでカサンドラはアポロンに言います
「あなたは私を捨てるのですね」と。
けれどアポロンは「そんなことはない」と答えます。

「けれどあなたが授けた力でそれが見えるのです」と、カサンドラ。
そこで切れたアポロンでした。
「予言の力なんて与えなければよかった」と
思ったのかもしれません。

ただここには神々のお約束があり、
一度授けたものを取り消しにすることはできないそうです。
そこで、腹立ちまぎれに
「お前の予言など、誰も信じないようにしてやる!」と
新しい力を発動しました。

こうして破局した2人ですが
その後も、カサンドラはとても正しい予言をします。
でもアポロンの力により、周りの人は何も信じなくなります。

カサンドラには、その自分の姿も未来として見えていたのでしょうか、
だとしたら、より辛かったでしょうね。

この状態があったから、一番初めにあげました
この症候群の名前になったカサンドラです。
繰り返しますが、カサンドラ症候群は病名ではなく
陥りやすい状態ということだそうです。

周囲から信じてもらえない。
コミュニケーションがうまくいかない、
「こうしないと困るはずです」と
先をわかって何かをなにかをしようとしても
あいてにしてもらえないばかりか拒絶される。
「私はどうしたらいい?」となってしまうという状態です。
ですから、メンタルも含めて
問題を抱えている人と一緒にいる人にもまた、ケアが必要です。
ひとりで頑張ろうとしないことが大切です。

ということで、カサンドラのお話でした。
ちなみにこのトロイア戦争には
ギリシャ側の英雄として
アキレス腱の元になったアキレスもてきますよ。
神話はあちこち繋がっていますね。
これもまたいつか書いてみたいと思います。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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