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「浮世絵の別嬪さん - 歌麿、北斎が描いた春画とともに」(大倉集古館)

 タイトルにはありませんが、今回は肉筆オンリーの展覧会。個人的に版画のほうはたくさん観る機会があるのですが、肉筆のみの展覧会というのは地味に初めてかもしれません。春画の展示は3フロアあるうちの、地下1階のみ。中学生以下(入場無料)は地下1階はご遠慮を、ということでしたが、春画無しでも十二分に楽しめる展覧会です。

 通常の浮世絵(多色多摺の錦絵)は版元が企画を立案し、それをもとに絵師が絵を書き、彫師がそれを彫り、摺師がプリントをして完成するもの。それはそれで素晴らしいのですが、真筆という点においては、印刷の過程においてフィルターが発生していることを考慮する必要があります。肉筆であれば当然そのフィルターが無く、より作者の意図に接近することが可能というわけです。

 絵師それぞれに個性があるのは知ってましたが、肉筆ですとそれがよりよくわかるような気がいたしました。
 順不同ですが、高い安定感を誇る歌川豊国、風景では圧倒的なおおらかさを見せるのに対し、人物画では漫画のようなコミカルさを見せる歌川広重。葛飾北斎は美人画においても堂々とした立ち振る舞いが際立ちますが、その師匠にあたる勝川春章は程よく力の抜けた、脱力した絵の塩梅が魅力的です。鳥文斎栄之の美人画がやや浮世離れした雰囲気を漂わせているのに対し、喜多川歌麿はもう少し地に足をつけた感じ。画面全体に薄墨を貼るなど、そもそもの描き方で個性を発揮する歌川国芳…。
 個人的には、菱川師宣の魅力を肉筆でこそ気づけたような気がしました。言葉で説明しづらいですが、擬音で言えばデンとしていない、テンとした感じが魅力的。あと、歌川派の祖である歌川豊春《納涼三美人図》も素晴らしく良かったなぁと。港の背景といい女性3人の足元にいる猫といい、今で言うと横浜山下公園に来ました的な、楽しげな生活というものが垣間見えます。

 割と知名度のある絵師が登場する2階フロアが面白く、何度も周回してしまうほどでした。浮世絵好きには特に楽しめる展覧会じゃないかなぁと。

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