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「川崎市制一〇〇周年記念 斎藤文夫コレクション 名品展」(川崎浮世絵ギャラリー)

 斎藤文夫氏は川崎市議会議員・参議院議員など、政治家として活動していた人物。現時点で6000点の浮世絵コレクションを持っており、ここ川崎浮世絵ギャラリーは氏のコレクションを借りる形で運営しております。今回は江戸中期の鈴木春信から明治の楊州周延まで、浮世絵(主に錦絵)の変遷を時代順に辿った内容。

 個々の作品を観るのももちろん良いんですが、個人的には浮世絵史みたいな流れで観るのが楽しかったです。
 最後に来る月岡芳年の凝りに凝った描き方を考えると、春信のそれはだいぶ素朴で簡素にすら見えますが、今の気分的にはむしろ春信の簡素さが快く映ったりもします(夏だから?)。喜多川歌麿の美人画はフォルムが細く極端に手足が長く、あたかも観音像のそれを連想させるもの。19世紀に入ってくると西洋絵画的・写実的な人体・風景の描き方というのが浮世絵にも出てくるのですが、春信・歌麿のような「それ以前」の作品も魅力的です。

 もちろん言うまでもなく、「それ以後」の作品も素晴らしいです。たとえば初代歌川豊国の《六郷渡舟図》は二つの舟に乗る9人の女性の様子を描いた作品。三つのレイヤー(階層)にまとめられ、ごちゃつくことなく上手に整理されております。立体表現を身につけた浮世絵は奥行きを持ち、「それ以前」には無かった重量感、そして情報量を身につけていくようになります。

 そこから幕末にかけては北斎、国貞(三代豊国)、広重、国芳… と、浮世絵展でもおなじみの定番ネームが続々と。
 個人的には広重によるミミズクの絵が非常に可愛らしかったです。広重の動物画というと窓の外を観る白猫が有名ですが、同じぐらいミミズクも持ち上げられて良い気がしました。北斎は雲の位置がやたら低く、それが風景画の幻想性を醸しているのかもなと思いました。国芳はRPGゲームとしても十分通用しそうな、勇壮たる世界観が魅力的。前期展示だけでも雀の顔をした人々が集う遊郭、為朝の自害を止める天狗達…と、仮にゲームだったら中々のハイライトを見せてくれます(ちなみに後期展示ではおなじみの、巨大スケルトンとの戦いもあるみたいで…)。

 そして明治時代に入り、小林清親はまだ言語化できてない部分もありますが、何を描かせてもカッコいいというか、堂々としたものを感じる画家。月岡芳年は素晴らしいのですが、数百年という浮世絵という技術が歴史的にピークを迎えた、一つの最終形みたいなものを改めて感じたりもしました。その一方で楊州周延の「あえて」な昔風の描き方は、明治時代特有のパステルカラーをより魅力的に映えさせます。

 膨大なコレクション数を背景に、自前のコレクションである程度体系立てた通史が見られるのはなかなか素晴らしいことだと思いました。その一方で500円という入場料設定、最短30-40分程度で見られるボリュームで、気楽にも観られる展覧会でもあります。開館時間が11時と、少し遅めなのでその点ご注意を(多少早く来ても、上の階にある図書館で時間は潰せます)。

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