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播磨陰陽師の独り言・第三百五十六話「様々な礼儀」

 以前に、死んだ人に鞭を打ってはならないと言う言葉を書きました。それに関連して、また、ひとつの言葉を書きます。
 それは、
——人の陰口をたたいてはならない。
 と言うものです。
 陰口を叩く人は、いつか、見えないところでトラブルを起こします。そんな人は、やがて見えるところでもトラブルを起こすようになります。そんな潜在的危険を含んでいるのです。また、人に対して礼儀を欠く行為だと言うことからも禁じられています。基本的には、礼儀を欠く行為は禁止されています。
 昔から、
——衣食足りて礼節を知るべし。
 と言われているように、人とけものとの違いは礼節にあります。そして、わが国の民と他国の民の大きな違いは、
——礼節は人に限らない。
 と言う点だと思います。物に対してや、小さな生き物、あるいは霊的な存在にすら礼儀を持って接するのが、古くからのわが国の民なのです。
 礼儀を欠くと言えば、
——寝ている人の頭をまたいではならない。
 と言う言葉もあります。
 寝ている人の頭をまたぐと、突然、起きて怪我をするかも知れません。また、眠る人に対して、やはり礼儀を欠く行為でもあり、禁じられているのです。

 わが国では知識に対する礼儀と言う意味で、書物に対する禁止事項もあります。
 これは、
——書物を踏んではならない。
 あるいは、足蹴あしげにしてはならないと言う言葉です。本は踏んではいけません。これは昔からの常識でした。

そして、
——裸で厠へ入ってはならない。
 と言う言葉があります。
 これも厠神に対する礼儀のひとつです。厠には厠神がいます。いわゆる〈トイレの神様〉です。
 これと同じ系統の言葉に、
——履物のまま家に入ってはならない。
 があります。
 これもやはり礼儀のひとつで家神に対するものです。昔は履き物を脱いで、さらに足まで洗って家に入りました。今で言うと外からウィルスを持ち込まないよう配慮しているものとも思いますが、日本人的には、やはり家神に対する礼儀だと思いたいです。

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