播磨陰陽師の独り言・第三百十話「夏越の祓」
今月六月の月末は〈夏越の祓〉の日です。この日は元々京都のお祭りでしたが、最近では日本全国で、ちらほら行われているようです。以前に住んでいた大阪でも行われていました。しかし、この日に食べる〈水無月〉と言う和菓子は、近所で売っていませんでした。
和菓子屋さんに尋ねると、
「あぁ、京都のお菓子やろ」
と言われました。
水無月と言うのは、三角形の和菓子です。氷を表しているそうです。上の部分がゼリーのようになっていて、小豆が乗っています。
その昔、まだ冷蔵庫もない時代、氷室から大きな氷を運び出して、この日に宮中に献上しました。最初は大きな氷でしたが、この時期に運び出すので、溶けてだんだんと小さくなりました。天皇の口に入る頃には、ほんの一欠片になっていたそうです。
氷は、当然、庶民の口には入りません。だから氷を模した和菓子を食べるようになった訳です。この水無月は三角形が定番です。しかし、もう少し形や色に変化が欲しいものですね。
厄除けを兼ねた和菓子なので、小豆も乗っています。厄除けには小豆と言うのが定番なので、これも仕方がないことです。
小豆は、昔は厄除けのために食べるものでした。厄病神祓いにも使われます。
さて、夏越の祓そのものは、半年の切れ目に罪穢れを祓う儀式です。茅の輪をくぐり厄除けを行います。主に大祓祝詞を唱えます。
大祓祝詞と言うのは、長い祝詞です。普通に聞く祓詞の何倍もの長さがあります。
——高天原に神鎮座ります……。
で、はじまる祝詞です。
この祝詞を、夕方、京都から唱えはじめます。少し時間を置いて、波紋のように近くの神社で唱えると、祝詞がだんだんと世の中に広がって行きます。そうやって日本全国を祓ったのです。この祓いは、今は行われているかどうか知りません。しかし、昔は普通のことでした。こうやって、半年間に溜まった罪や穢れを祓ったのです。
昔は、
「最近、調子悪いなぁ」
と思ったら、道行く人にお金をあげて、
「ちょっと祓ってくれへんか?」
と言ったそうです。
言われた人は、誰でもその場で祓詞を唱えたそうです。ほとんどの人が嗜みとして祝詞を暗記していました。
まぁ、皆さんも、暗記とまでは言いませんが、すぐに読めるように準備をしておいてください。やがて、役立つ時が来ますから。
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